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105 フィナンシェとはなんですか?

「ふふ。エル様、僕は役に立つでしょう?」


 よくわからないけれど、ロコルナ=ティルリがニコニコしている。


「うん。ありがとう」


 とりあえずお礼を言っておいた。


「どうだい、ロコル。僕は役に立つってさ」


「あ、そう」


 ロコル=カッツェの冷たい対応にはめげず、ロコルナ=ティルリはニコニコしている。なにがそんなに嬉しいんだろう。よくわからないけれど、まあ、いっか。


「じゃあ、畑を耕すね〜」


「どうぞ〜」


 ギベルシェンらしいゆる〜い返事を聞いて、わたしは魔法を発動させた。畑に残っていた植物が暴れて畑を耕し、やがて枯れて畑の栄養となった。


 よし、これでいいよね。


 あとはバーナビ指揮の元、ギベルシェン達が種を植えてからわたしが魔力を流して育てるだけ。


「皆、またあとでね〜」


「「「「「は〜い」」」」」


 いそいそと畑に潜って行くギベルシェン達を見ながら、わたしは裏口から屋敷へ戻った。


 まっすぐ厨房へ向かうと、さすがに時間が早すぎたのか、まだ誰もいない。


 わたしだけの台所はなくなってしまったけれど、厨房はやっぱり楽しい。ワクワクする。


「さてと。昨日、考えていたとおり、フィナンシェを作るかな」


「フィナンシェですか?それはなんですか?」


「え?」


 背後から声が聞こえて振り返ると、そこにはメイド服に身を包んだユルドが立っていた。白いシャツに、紺色のスカート、そして白いエプロンを身に着けた姿は、まさにメイドだ。


「それ………どうしたの?」


「ふふふ。裁縫室を急ぎで仕上げさせて、こう、パパッと仕立てました」


「うぇっ?」


 ユルドのことだから、自分の服だけじゃなくて他のゴーレムの分も服を仕立てていると思う。そう考えると、一晩で15名分もの服を仕立てられるなんて、ユルドの裁縫の腕は相当のものだよね。すごいよ。


「それで、フィナンシェとはなんですか?」


「あ、えっとね、焦がしバターと卵白を使ったお菓子だよ。………あ、そっか。卵黄が余るんだ。プリンも作ろうかな?」


「プリンですか。それも聞いたことがありません」


「そう?」


「ええ。ですが、エル様はとても楽しそうですね」


「うん!」


「お手伝いしてもよろしいですか?」


「いいよ。じゃあ、型がないから、わたしは型の代わりになる鍋を探すね」


「そういえば。この厨房には型と呼べる物はありませんね。エル様は、どんな形をご希望ですか?」


 聞かれたので、わたしは木札と筆記用具を取り出し、木札にフィナンシェ型の絵を描いた。ついでに、ホール型、パウンド型を描いていく。最後に、バットを描いた。


「金属でこんな形の型があれば嬉しいな。いまはどれもないから、ケーキを焼くときは鍋を使っていたんだよ」


「わかりました。ご用意いたしますので、少々お待ちいただけますか?あ、この木札はお借りしますね」


「え?」


 ユルドはわたしが絵を描いた木札を抱え、わたしの返事も待たずに厨房から出て行ってしまった。


 しかたないので、作業テーブルに材料を並べていく。


 フィナンシェに必要なのは、バターと卵白、砂糖、ハチミツ、薄力粉、アーモンドパウダー、それとベーキングパウダーだ。ベーキングパウダーはないけど、しかたない。


 次に、プリンの材料だけれど。カラメルを作らなければ、卵黄だけのプリンに必要なのは、卵黄、砂糖、ミルクだけ。とってもシンプルだ。


 って、ミルクはなかったかも!?


 うん、そうだ。前に買ってきたミルクは、全部シチューに使ってしまったから、もうほとんど残っていない。せいぜい、紅茶に入れてミルクティーを楽しむくらいしかない。


 じゃあ、う〜ん、アーモンドクッキーを作る?アーモンドクッキーも卵白を使うけれど、棒状にしたクッキー生地の周りに塗る分だけあればいいから、それほど必要ないんだよね。


 わたしがウンウン言っていると、ユルドが両手に金属の型?を持って戻って来た。後ろからバーナビーもついて来ている。


 バーナビーは作業しやすいようにか、茶色のシャツの袖を肘まで捲っていて、黒いズボンを履いていた。


「エル様。バーナビーが「絵だけでは正確な寸法がわからない」と言うので連れてきました。バーナビーに指示をされて、お気に召す型を作らせてくださいませ」


 そっか。確かに絵だけで、寸法は書き込んでなかったね。だって、型の寸法なんてわからないんだもの。


 それはそれとして。ユルドが抱えている物が気になる。


「それはなに?」


 聞くと、ユルドは抱えていた物を作業テーブルに置いて見せてくれた。


「これらは、バーナビーに作らせた型です」


 バーナビーが作ってくれた型は、つなぎ目もなく、どれもよくできていた。ただ、やっぱりサイズが思っていたのと違う。大きすぎたり、小さかったりしている。


「型に使った金属はどうしたの?これもリングス商会から仕入れたの?」


「いいえ。俺が持っていた金属を使いました。これでもアイテムボックス持ちなんで、色々と蓄えがあるんですよ」


 アイテムボックス!羨ましい!





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