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101 オーブンが増えた

 ディエゴは、山脈を見ながら泣いているように見えた。………でも、きっとそれは錯覚。だってディエゴはゴーレムだもの。ゴーレムは涙を流さない。


 ディエゴ達の主達は、どういう思いで黒の森へやって来たんだろう。繁栄した都を追い出されて、決して楽な旅路ではなかったと思う。やっと辿り着いたのは、魔物が跋扈ばっこする森の奥。たぶん、自給自足の生活だったはず。苦しくなかったかな?きちんと寿命を迎えられたのかな?それとも、病気かなにかで倒れたのかな………。


 この地へやって来たディエゴ達の主達は、どんな最後を迎えたんだろう。


 なんだか、悲しい気分になってきた。


「………あの山脈は、エスカーレ霊峰と言います。霊獣レイセス様が守護しておられて、選ばれた者にだけ道を拓くと伝えられています。エル様なら、神の御下へ行けるかもしれませんね」


 ディエゴがどういうつもりでそんな話をするのかわからなかった。


「さて。そろそろ陽が傾いてきましたね」


「あ、そうだ!ガンフィとラーシュにパン作りを教える約束をしているの。わたし、行くね」


「はい。お付き合いいただきまして、ありがとうございます」


 台所へ行くと、すでにガンフィとラーシュがいた。クロムもいる。ユルドとメイド2名はシンプルな足首までの白いワンピースを着ていた。袖は半袖だ。足元を見ると、木靴を履いていた。


 いくらシンプルとは言っても、この短時間で3着も仕立て手しまうなんてすごいね。


木靴だって簡単に作れる物ではないと思うのに。本当にすごいよ。


「木靴もユルドが作ったの?」


「いいえ。木靴を作ったのはアントンです」


「??………副騎士隊長のアントンが木靴を作ったの?」


「ふふ。騎士達は手先が器用なので、家具も作れますよ」


 騎士達?ということは、騎士隊長のヴィルヘルムも、ってこと?騎士が家具作りするの?


「ということは、この屋敷の家具を騎士達が皆で作ってくれるの?」


「はい。2〜3日お時間をいただくことになります。ご不便をおかけすることになって申し訳ありません」


「そんな短時間で、この規模の屋敷の家具が揃うの!?無理、しなくていいからね?」


 あわあわするわたしとは対照的に、ユルドは「大丈夫です」と微笑んだ。


「それに、早く環境が整えてエル様とクロム様のお衣装を仕立てたいのです。ふふふ。少々お待ちくださいませ」


「あ、うん、ありがとう」


 騎士達の家具作りから、話が一気に服作りに変わってしまった。


 わたしは着飾ることに興味がないし、服は魔力で出せば十分………と言おうとして、ユルドの目の鋭さにひるんだ。これは、思っていることを言える雰囲気じゃない。


 よし!いつまでも立ちすくんでいるわけにもいかないし、気持ちを入れ替えていこう。


 深呼吸をすると、わたしは台所を見回した。


 台所はすっかり広くなり、厨房と呼ぶのに相応しい状態になっている。わたしを含めて7人がいても余裕の広さだ。流しは3つあり、オーブンも3つ………ある?


 あれ、わたしの見間違い………じゃない!なんでオーブンが3つもあるの!?


「ねえユルド、あれ!」


 わたしがオーブンを指して言うと、ユルドは緩く微笑んだ。


「皆様、たくさん召し上がられますから、以前のオーブンとコンロでは数が足りないと思っていたのですよ。ですから、増やしました」


「でも、さっき来たときはなかったよ!?」


「私達は錬金術が使えますから。複製を作るくらい簡単なことです」


「え、錬金術?簡単………なの?」


 錬金術って、そういうものだっけ?


「そんなことより。さあさあ、パンを作りましょうか」


 わたしはユルドの勢いに流されて、皆の前で丸パンを作ることになった。


 ガンフィやラーシュは普段、騎士の訓練で野営をするので簡単な料理ならできると言っていた。でも、パン作りは初めての経験らしく(そうだよね。王太子と騎士団長だもの。周りの人間がパン作りなんてさせないよ)、目をキラキラさせながらパン生地を捏ねていた。


 生地を捏ねるのって、粘土遊びみたいで楽しいよね。


 ユルド達メイドは観察するだけで、手を出してくることはなかった。


 見ているだけでわかるのかな?それとも、すでに知っている知識とすり合わせを行っているとか?


 パン生地をまとめて1次発酵、小分けにして成形してから2次発酵させ、いよいよ焼くことになったとき、ユルドが「焼きの作業はお任せください」と言ってくれた。


 ユルドなら焼き加減で失敗しないだろうと思ったので、安心して任せることにした。


 それに、そろそろ夕食の支度をする時間だからね。いつまでも厨房にいたら、ユルド達の邪魔になっちゃう。


 わたしはクロム達を連れて、談話室へ向かった。


 広い談話室にはまだ家具が揃っていなくて、部屋の中央に絨毯が1枚敷いてあるのと、その絨毯の真ん中に丸い座卓がひとつあるだけ。窓にはカーテンもないし、棚もない。とても殺風景だ。


 まあ、お客さんが来るわけじゃないし、いまはこれでいいかな。



おかげさまで、なんと昨日のアクセス数は1095でした。アクセス数の最高記録です。


ありがとうございます!

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