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100 彼方の世界樹

 ルオーが用意してくれた服はワンピースが多く、ドレスも1着あった。上下で分かれた服は2着だけ。サイズは少しづつ違っていて、もしかしたら、誰かのために仕立てられた服のお下がりなのかもしれないと思った。たとえば、裕福な商家の女の子の物だったとか。


 リボンは赤、青、緑、黄色の4色が巻いてあって、アクセサリーのようなものはない。靴もなかった。


 すべての服を着たわたしは、すっかり疲れていた。


 これまでは魔力で服と靴を出していたから、脱ぎ着も簡単だったんだよね。


 それなのに、もう………クタクタだよ。


「ふふふ。お疲れ様です。バーナビーに言って素敵な布を仕入れたら、すぐにお似合いの服を仕立てて差し上げますからね」


「………うん。ありがとう」


「この衣類は、エル様のお部屋に運んでおきますね」


「………そういえば、タンスやクローゼットはないよ?」


「え?それは由々しき事態です。すぐにバーナビーに用意させましょう」


「待って。簡単な作りでよければ、わたしが作れるよ」


「ああ、エル様は植物魔法を使われるのでしたね。それならば、家の手直しをお願いできますか?」


 なんで家を直すんだろう?いまのままでも必要な物は揃っているし、十分だと思うんだけど。


「お宅の中を見せていただきましたが、応接室や書斎のように足りない部屋や設備もございますし、なにより建物の規模が小さ過ぎます」


「え………?」


 それから、ユルドに家づくりについて懇懇と諭されることになった。


 始めはわたしとクロムどけだったから、あの家で十分だったけれど。ギベルシェン達が増え、ゴーレム達が増え………家に出入りする人数が増えた。魔物だから、魔力で作った汚れない服を着ているからと、身の回りの物を増やす必要性も感じなかった。


 だけどいまはこの村でそれなりの立場を手に入れて、必要なことも変わってきているのは確か。


 考えや住まいを修正する時期にきているんだと思う。


 この機会に、一気に村中の家を建て直してしまおうかな?そうすれば、村人の不満も少しは抑えられるよね。


「エル様。村の家を建て直すことをお考えでしたら、バーナビーが村長に話をしに行っていますから、話がついてからがよろしいかと」


「え、そうなの?」


「はい。ですから、先にご自身のお宅を屋敷へと生まれ変わらせてくださいませ」


「はーい」


 家に帰ると、クロムとディエゴ、メイドさん2名の他、ガンフィとラーシュもいた。屋敷でわたしが着替えをしていたから、気を遣ってこちらで待ってくれていたんだね。


 皆に家を改造することを話すと、ディエゴが「希望があります」と言ってきた。クロムもわたしも特に家に関する希望はなかったので、家の改造はディエゴの希望に沿って行うことになった。


 まず、全員に家から出てもらった。なにが起こるかわからないからね。それから家の周りに木の枝を挿していき、家の材料とする。それからディエゴが「もういいですよ」と言うまで家を成長させた。元2階建ての家だったものが、4階建ての立派な屋敷になっていた。


 中に入ってすぐは、2階までの吹き抜けホールになっている。ホール中央に上階へ続く階段があり、その左右には扉が並んでいる。


 まずは、ディエゴの指示通りホールの天井にシャンデリアを作った。そして1階にある部屋を見て回りながら、台所、応接室、貴賓室、武器庫、等々の部屋で足りない物を作っていく。


 主寝室は2階にあり、村全体を見渡せるようにベランダを作った。


 そして主寝室と副寝室の間に共用のクローゼットを作り、どちらの部屋からも行き来できるようにした。


 それなのに、衣装部屋というものが別にあるという………そんなに、服いらないんだけどな。


 衣装部屋の隣には作業部屋もあり、いずれはそこでメイド達が服を作ることになるらしい。


 すべての部屋を回り終えたとき、わたしはすっかり疲れていた。


 それでも、最後の部屋、屋根裏部屋から見る景色に感動して、疲れが癒されていくような気がした。


 屋根裏部屋の窓からは、黒の森の奥までよく見えた。本当に、どこまでも緑が続いていた。その森のはるか彼方に、天まで届くような山々が連なっていて、そのさらに向こうに荘厳な大樹が見えた。光り輝く大樹だった。


「ねえ、ディエゴ。あの木はなんていう木か知ってる?」


「!!」


「どうかした?」


「ははっ。さすがエル様と言うほかありません」


「?」


「エル様が見ておられるのは、世界樹です。この世にただひとつだけの、世界を支える樹でございます。世界樹は、それを見る目を持つ者でなければ見ることさえ適わない、と言われております。私に世界樹は見えません」


「そうなの?」


「はい。主様方も、見ることは適いませんでした」


「そうなんだ」


「ええ。世界樹の下には、エッフェケルン・ベリオス様がおわすと言われております。私共は、主様方を神の御下へお連れしたかった。神の御下で眠りについてほしかったのです」





またまた、ブックマークしていただき、ありがとうございます!


急に増えててびっくりしました!

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