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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章8 最強の助っ人


 軍事会議からの三日間、俺はドライアドの情報網とメリダの諜報部隊をフルに活用して、情報収集に奔走していた。



 そして三日後、ドライアドの情報通りエルフ軍は動いた。

 メリダたちは逐一エルフ軍の様子を報告してくれる。

 俺は早急にラス将軍に連絡を入れ、出発の準備をする。


 ララとルルが心配そうに俺のところに来る。


 『ねぇ、ディケム。 私は連れて行ってくれないんだよね?』とララが訊ねてくる。


「ララが居ないと、この町を守れない。 ルルを守れるのはララだよ」


「………。 ゴメンねディケム、ディケムにばかり負担をかけて。 本当は後の事はまかせてって、送り出さないと行けないのに………。 王都の事が心配で自由に動けないよね?」


「ララ。 俺たちまだ学生だぜ、そんなに強いはずないじゃないか」


「でも……、ディケムはいつも強いよ」


「俺はね、イフリートと契約した時に、前世の記憶に少し触れたんだ。 事実そこから剣術の奥儀まで引き出した。 精神年齢はラスさん達より高いんだよ! ハハ」


 俺は笑いながら、ララとルルの頭をワシャワシャする。

 気の強いルルがやはり怒らない。 ……ア、アレ?


「か、必ず帰って来てきなさいよ!」ルルが叫ぶ。


「ああ、凄い成果を上げて帰ってくるから、期待しててくれよ! ディック、ギーズ、ダルシュ! 二人を頼んだぞ!」



 『よし!』俺は気合を入れて邸宅を後にする。



 俺は東門まで走っていく―――!


「さぁ、最強の助っ人! タイミングよく来てくれよ――!」


 俺は東門の門番に外に出してもらい、そしてユニコーンの形をしたクリスタルゴーレムに乗り、愛刀:鬼丸国綱(おにまるくにつな)を持ちエルフ軍を待ち構える。


 エルフ軍は、東門の前に俺が居るのを見て、五〇〇m手前で止まる。

 エルフ兵士はメリダの情報通り総勢五〇〇〇程に補充されている。


 するとエルフ軍の中から名乗りを上げる声が聞こえる。


 『俺はダークエルフ軍将軍、ブロンダだ! きさまら人族を滅ぼす者だ!』と前回の戦いでみた猛将が名乗りを上げた。


 俺は一騎打ちなどしたくない……… だってただの魔法使いだし………。

 あんな猛将と戦うとか、怖すぎる。

 俺が名乗りたく無さそうにオドオドしていると………


 『さっさと名乗らぬか―――!』とブロンダ将軍に怒られた……… ヒドイ


 東門の上で、ラローズ先生が、アホの子を見るような目で俺を見ている気がする………。

 いや、気のせいだと思います。


 そんな事をしていると…… ララとポートも東門に到着したみたいだ。


 ⦅よし! これで防備は大丈夫だ! そろそろ始めるか⦆



「あ~…… 俺は人族のソーテルヌ辺境伯 ディケムだ。 見ての通り魔法使い……だっ!」


「コラ! シャキッと名乗らぬか――! ん? なぜ魔法使いが一騎で門の前に居る?!」


「お前らを止めるためだ! ブロンダ将軍! なぜダークエルフは人族を攻めてくる?」


「これは笑止、弱肉強食はこの世界の摂理! 弱いものは滅べ!」


「それは、エルフ族の総意ではあるまい? ハイエルフ様は納得されているのか?」


 エルフ軍に動揺が走る。


「お、お前何を言っているのだ? 総意に決まっておろう!」

 ブロンダ将軍は、ざわめくエルフ軍を叱咤する!


「お前らの契約するシルフも、納得しているのか? 女王シルフィードは反対しているのではないのか?」


 エルフ軍が動かなくなる、これも正解だな!

 うちのドライアド優秀だな! エルフ軍の動揺を誘い、時間稼ぎも出来た!


 俺は、エルフ軍の南方から軍勢の土煙が向かってくるのを黙視する!

 ⦅よし! ジャストタイミングだ! もう時間稼ぎは良いだろう⦆




「ブロンダ将軍! お前らの理不尽に付き合っている暇はない――!」


 そう叫び、俺は一気にイフリートを百体だし攻撃を仕掛ける。

 前回と同様にエルフ軍五〇〇〇が火の海と化す――!


 しかし、イフリートが百体居ようと、相手はやはり精霊シルフと契約している五〇〇〇のエルフ兵!  

 数の暴力には敵わない。

 イフリート一柱にシルフ五十柱は荷が勝ちすぎる。



 だか、そこに最高のタイミングで助っ人が駆け付ける―――!


「われは魔神族の将軍、ラトゥールだ―――! 我らが盟友ディケム様の呼びかけに、同盟の責務を果たしに来た!」


 ラトゥール将軍三〇〇〇の魔神軍が、エルフ軍の側面に突き刺さる――!!!


 籠城戦に入った人族軍に、これほど早く援軍が来るとは思っていなかったエルフ軍は大混乱に陥る。

 しかも援軍は最強種族の魔神族だ、一騎一騎の強さが、人族、エルフ族とは桁が違う!


 エルフ族も、精霊シルフを巧みに使い、慎重に戦い方を考えれば、まだ対抗手段はあるが……、魔神族軍とは正面衝突を絶対に避けなければならない種族だ。

 それが、正面どころか不意打ちで側面を突かれたのだ――!

 エルフ軍には最悪の事態だった。


 混乱に陥ったエルフ軍は、側面を魔神族軍の騎馬隊に貫かれ、呆気なく前後に分断される。

 エルフ軍を貫通した魔神軍は直ぐに反転、さらにエルフ軍を分断していく………。


 その光景は…… 同盟関係の人族軍でも恐怖を覚える圧倒的な強さだった。



 俺も呆気に取られその光景を見ていると、一騎だけ俺の元へ駆けてくる。

 ラトゥール将軍だ!


「ラフィット様! いえディケム様お待たせいたしました!」


「いえ、本当にわずか三日で到着してくれるとは、感謝致します」


「ディケム様とのお約束、このラトゥールが破る訳がございません!」



「ではラトゥール将軍! 私はこれから予定通り、エルフ軍に打撃を与えた後ここを離脱します。 俺が居ない間、王都を頼みます!」


「かしこまりました! ディケム様の願い、このラトゥールの命に代えても果たしてみせます!」


 俺の願いを快く引き受けてくれたラトゥール将軍が、一つの指輪を差し出してくる。


 『ディケム様、これをお受け取り下さい!』そう言って指輪を手渡される………。


 ⦅こ、これは………!⦆


「これをカステル王より、ディケム様に渡すように申し付かっております。 その指輪には、魔神族国宝:妖炎獄甲冑が入って居ます。 カステル王より、先の戦いでのメガメテオ攻略への褒美だそうです」


「メガメテオ攻略の………?」


「はい! エルフ軍のメガメテオ魔法部隊の殲滅は、種族間のパワーバランスを崩す偉業です。 全種族が恐れ手を出せなかった魔法ですから」


 俺は素直に礼を言って、その魔神族国宝、妖炎獄甲冑の指輪を受け取った。

 そして貰った指輪を指にはめる。

 俺はこの指輪…… いや妖炎獄甲冑を前世の記憶で知っている。


 愛刀:鬼丸国綱(おにまるくにつな)とは違い、前世で俺が使っていた鎧ではない……。

 魔神国にはいくつか古来より伝わる伝説の武具がある、だがどれも武人が武具を選ぶのではない、武具が主人を選ぶのだ。

 この妖炎獄甲冑はたしか、誰も主人を選ぶことが無かった曰く付きの鎧……


 『フフ……』と自然と笑みがこぼれる。

 前世の記憶の中のボー・カステル王が『使えるものなら使ってみろ!』と笑いながら挑発する姿が目に浮かぶ……


 だが、俺は何故かこの鎧を使えると確信していた。

 俺はためらう事無く指輪にマナを流し込む!  ―――すると!


 指輪から一気に真っ黒な霧のようなマナが噴き出す!

 その暗黒のマナに俺は包まれる。

 そして黒い霧が晴れていくと――― 俺は闇を纏ったような暗黒の【妖炎獄甲冑】を纏っていた。


 それは着慣れた愛用の鎧を(まと)うかのように………

 妖炎獄甲冑が俺に呼応するのがわかる!



 俺が妖炎獄甲冑を纏う姿を見て、ラトゥール将軍が少し笑ったように見えた。


 さらに俺は、フェニックスに『来い』と命じる。

 戦場上空にフェニックスが突然顕現(けんげん)する!

 突然のフェニックスの顕現に皆驚き、ラトゥール将軍が俺を守るように前に出る。

 おれはラトゥール将軍を大丈夫だと制す。


 俺の呼び声に呼応して、フェニックスは一直線に俺に向かい飛んでくる!

 そしてそのまま俺の纏う妖炎獄甲冑に宿った!


 妖炎獄甲冑は燃え盛る不死鳥の炎を纏う、視覚効果は抜群だろう。

 近くのエルフは驚いて逃げていく。

 ラトゥールも目を見張り、俺を見ている。


 『妖炎獄甲冑とフェニックス、抜群の相性だと思わないか?』俺はすこし笑いながらラトゥールに問いかける。


 『はい!』とラトゥールは嬉しそうに返事をする。


 『それでは行ってくる!』俺はラトゥールに言うと………

 『お気をつけて!』とラトゥールは答える。


 それはとても自然で、何度となく繰り返した、二人の言葉のやり取り、合言葉の様だった。



 俺は魔神軍を巻き込まないで戦場を蹂躙するルートを探す。

 絶えず動き回り戦う軍勢の中に、一カ所だけ数秒間、魔神軍が重ならないタイミングを見つけ出す!


 『ここだ――!』俺は鬼丸国綱(おにまるくにつな)を掲げイフリートを纏わせる、そしてその一点を目がけ奥儀を繰り出す!


 

天・元・行・(てん・げん・ぎょう・)躰・神・変・(たい・しん・ぺん・)神・通・力(じん・つう・りき)………」


 ⋘————奥儀! 金翅鳥王剣(きんしちょうおうけん)!————⋙



 無数の気魄珠(きはくだま)とイフリートの炎の斬撃が飛ぶ!

 さらに俺もフェニックスと一体となり炎の斬撃となって戦場を走り抜ける――!


 ゴオッ──!!!!  ズガガガガガガ—————!!


 戦場に一筋の巨大な炎の斬撃が走り抜け、エルフ軍を一直線に引き裂き蹂躙した!

 その斬撃のさなか、俺はエルフ軍ブロンダ将軍が消滅するのを見た。



 俺が駆け抜けるた跡が炎の道になり、エルフ軍は二つに割れる、そこに魔神軍がクサビを打つ様に雪崩れ込む。

 さすが魔神軍、戦場の流れを読むのが早い。

 ブロンダ将軍の消滅に伴い指揮官を失ったエルフ軍は、魔神軍に追撃されチリジリに霧散した。


 これで二週間は稼げるだろう。

 ラトゥール将軍も、王都防衛に力添えしてくれる。


 さて…… 俺はこのどさくさに紛れて、アイフェル山脈に出発だ!


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