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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章5 起死回生


 俺の背後で、メガメテオが崩壊する音が聞こえてくる。

 絶対の自信をもって放ったメガメテオが、結界を破ることが出来ず崩壊するのを目の当たりにし、目前のダークエルフ軍に動揺が走るのが手に取るように分かる。


 今、この戦場と化した王都の現状・俺だけが冷静に戦況を把握している。


 この奇襲に全く気づかなかった王都騎士団は、予想だにしなかった大魔法メガメテオに茫然自失。

 さらに戦いのスピードについて行けず、準備すらいまだに出来ていない惨状だ、今攻め込まれたら為す術なく壊滅するだろう。


 しかし、エルフ軍もメガメテオが破られるという、予想外の出来事に今、茫然自失。


 人族軍の起死回生のチャンスは今しかない!

 この戦場で、全てを理解しているのは俺だけだ、今なら戦場の全てを俺がコントロールできる!



 俺はため込んだマナを一気に解放する―――!! 

 エルフ軍の目前に一瞬にして百体のイフリートを横一列に顕現させる。


 エルフ軍の兵士たちは、自分たちが奇襲をかけ、壊滅状態の人族の人々を一方的に蹂躙する事しか考えていなかった、まさか自分たちが反撃されるとは一ミリも考えていなかったのだ。

 そこに突然顕現した百体の火の上位精霊イフリート、エルフたちがさらなるパニックに陥るのは必然だ。



 俺はこのチャンスを逃さない! 一気にイフリートをダークエルフの軍隊に突進させた!


「いっけッ――――――!!!」


 目の前のエルフ軍が、一気に爆音と炎の渦に巻き込まれていく―――!

 5,000の軍隊はさらなる大混乱に陥る、軍指揮官の叫びも爆音で届かない。

 炎と煙、爆音、一度混乱に陥った軍勢は、そう簡単には立ち直れない。


 さらにそこにララの操るクリスタルゴーレムが突撃していく。

 ⦅ララ! ナイスタイミングだ!⦆

 ゴーレムには炎も煙も爆音も関係ない、恐怖心も感情もない、ララの指示通りにただ機械的に戦うのみだ!

 この混乱の渦に巻き込まれた戦場では、最も最適な兵士だろう。



 俺は炎と煙に紛れ離脱のタイミングを計る、迂回して後方の魔法師軍団に向かうのだ。

 視界はほとんどきかないが、魔術師軍団の位置はしっかり頭に入っている。


 爆炎を抜け迂回して上空に出る。

 『いたッ!』東の高台に魔法師軍団が見えた!


 俺は気づかれないように、細心の注意を払い、慎重に魔法師軍団に近づく……。

 しかし、メガメテオを放った魔法師たちは魔力を使い切り、すでに死に体だった。

 メガメテオが防がれたことで、精神も折れているのかもしれない。

 みな、しゃがみこみ、上空の俺には一切気づいていない。


 俺は上空から一気に畳みかける!

 十体ほどのイフリートを顕現させ、一気にイフリートをぶつけ、魔法師軍団を壊滅させた。




 ダークエルフ軍の本陣は、メガメテオの失敗、俺が放ったイフリートの攻撃、さらにクリスタルゴーレムの追撃で混乱しきっていた。 未だに事態を収拾しきれていない。


 その混乱に乗じて、後方の魔法師軍団が爆撃を受け壊滅した………。


 メガメテオはエルフ族の切り札、その破壊力ゆえの他種族への抑止力。

 メガメテオによる超破壊後の精霊シルフによる追撃、どこの国にも脅威な戦略だっただろう。


 彼らエルフ軍にとって、魔法師軍団は最も守らなければならなかった戦力だった―――!

 その要の魔法師軍団を殲滅させられたのだ。



 後方で為す術なく殲滅されていく魔法師軍団を見たエルフ軍から、怒り狂った将軍らしきダークエルフとその精鋭部隊が反転して俺に向かってくる。


「これは俺一人では詰むな………」


 俺はまたイフリートを五体ほどだし、怒り狂ったその精鋭部隊に一斉に突撃させた。

 爆炎と煙で視界が隠れたところで、俺はその場から離脱した。


 後ろから『逃げるとは卑怯だぞ――!』と猛り狂った猛将の怒号が聞こえる。


 ⦅おい! 不意打ちでメガメテオとか落としておいて、卑怯とか言うか?!⦆



 俺は城門の上に戻ってきた。

「魔法師軍団の殲滅完了! これでメガメテオはしばらく撃てないでしょう」


 ダークエルフの軍団を見ると、いまだに混乱しているエルフ軍の中で、イフリートとクリスタルゴーレムが大暴れしていた!

 特に精霊結晶をコアにしたララ像は、もうドン引きするほど兵士をなぎ倒していた。


 エルフが使役する風の精霊シルフによる空からの攻撃も、王都の結界を破る事は出来ない。

 王都の結界は四柱の上位精霊による四属性が付与された結界だ、そこにはシルフの天敵ドライアドの木の属性も含まれる。

 一属性の攻撃ごときで破れるはずもない。

 もし破ったとしても……、ポートが操るシルフの天敵、木属性トレント兵が待ち構えている。



 しばらくすると、ダークエルフ軍は撤退していった。

 『1500………、いや残り2000ってところですかね』と俺が言う。


 『はい。 思ったより精霊シルフが強く、またエルフ軍に一人、とても強い将軍がいました』 とラローズさんが報告してくれる。


「俺もその将軍見ました。 周りに精鋭も居たので逃げてきましたよ」


 今回の戦いで、エルフ軍の殲滅を考えていた俺としては、少し不満な結果だった………だが戦果としては素晴らしかった。


 クリスタルゴーレムはいくつか壊れたが、すぐに直せる。

 人的被害はゼロに抑え、敵に3000程の打撃を与えた。

 これで良しとしなければ贅沢だろう。



 『ソーテルヌ閣下! 敵も引きましたので、王城に赴き戦況報告をいたしましょう!』ラローズさんが、先生ではなく軍人としての顔で俺に話す。


 『ですね………』不満げな俺は、戦場跡に背を向け、王都へ振り返る………。


 すると―――!

 民衆が城門の上に立つ俺たちに称賛の声援を送った!

 その声援は、王都全土から次々に湧き起こり、地鳴りのように鳴り響いた!

 そして王都全体が喜びの渦に包まれた。


 『今回はこれで満足しておいた方が良さそうですね!』俺のつぶやきに。


 『もちろんです! あなたが居なければ、このシャンポール王都の住民は全滅でした。 この声援はあなたが守った人々の感謝の言葉。 歴史に残る大勝利です、ソーテルヌ閣下!』と先生がほめてくれた。


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