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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章2 ダルシュの鑑定の儀


 入学式、始業式の日から数日後、明日は弟のダルシュの鑑定の義だ。


 『なぁ、ダルシュは何の能力が良い?』と俺がダルシュに聞く。


「出来れば、兄さんの助けになる能力が良いな~」


「ダルシュ。 兄さんの為とか、そんなつまらない事言うなよ~。 お前はお前のやりたいことをやるべきだ!」


「そのやりたい事が、兄さんと冒険したい! なんだけど……」


 ⦅うっ…… なんてカワイイ弟なのだろう!⦆


「そうか…… なら、ダルシュがもし冒険出来る能力だったら、いつか一緒にダンジョンとか行こうな! でも生産系でも泣くなよ~」


「その時は、兄さんに最高の剣を作るよ!」


「期待している」


 そんな、男の子によくある冒険者になる夢を語って、興奮で二人とも眠れなくなり、寝不足な翌日を迎えた。


 『おはよう~、ルル』おれが朝の挨拶すると、ルルが焼きたてのパンを用意してくれる。


 この頃、うちの家族と幼なじみ達、さらにルルも一緒に、皆で朝食と夕食を一緒に食べるようにしている。


 食事はルルが全部作ってくれる、それで家賃と相殺することにした。

 ルルも、昼の兵士たちの食事の準備も一緒に出来るから、都合が良いらしい。


「なによ二人とも、寝不足なの?」


「う、うん。 今日ダルシュの鑑定の義式だから……、二人で冒険者になる夢語ってたら眠れなくなった」


「バカなの! 男ってホントバカなのね! せいぜい生産職で落ち込むが良いわ!」


「その時は兄さんに最高の武器を作るんだ!」


「…………。 な、なんてポジティブバカなの…… 悩んだ私がバカみたいじゃない!」


 そこにララが起きてきて『ダルシュはディケムが大好きだからね~』と茶化す。


「姉さんは、そんなこと言ってるからディケムと進展できないのよ! チンタラしてると、私がディケムの胃袋掴んじゃうわよ!」


 ララがアワアワしている……

 本人を前に言う事でもないだろう…… 俺もアワアワしてしまう。


「いやホント! ルルの料理はおいしいよ、朝から焼きたてのパンが食べられるとか幸せだよな!」


 みんな頷く、使用人の食事もおいしいのだが、ルルの料理は格別だった。

 特にパンが素晴らしい、さすがパン屋の娘だ。



「そうだみんな、今晩俺の部屋に集まってくれないかな?」


 『どうしたの?』とララが不思議そうに聞く、あまり俺が人を自分の部屋に呼ばないからだろう。


「神獣の卵がかえりそうなんだよ!」


「え! とうとう孵るか! 長かったな~親鳥生活!」


 『わ…… 私も見に行っていいの?』ルルが控えめに聞いてくる


「もちろんさ、ダルシュも見たかったら来いよ! 父さん母さんは…… 興味無さそうだね ハハ」


 『若者の楽しみに親が入ると、場が冷めるからな』……なかなか理解のある親だ。


「危険は無いんだろうな?」

「そこは気を付けるよ」

「なら良い、ウンディーネ様もいる事だし、滅多なことにはならないだろう」


「じゃ~今晩、ダルシュのお祝いの後、俺の部屋に集合で!」




 朝食を済ませ、俺たちは学校に行き、ラローズ先生に、今日ダルシュが【鑑定の儀】を受ける事と、夜に神獣の卵を孵化させることを話した。


「あら、なら今晩私とラスも参加させてよ! 神獣の卵は研究材料に見てみたいから」


「なら、ダルシュの鑑定祝いも有るから、夕ご飯一緒にどうですか?」


「あら良いわね、ならラスと伺うわ」


 先生からダルシュの鑑定結果が分かったら直ぐに教えてくれるよう頼まれた。

 なにかプレゼントでも用意してくれるのかもしれない。



 学校の授業が終わり、ダルシュの結果が気になり急いで家に帰る。

 家のドアを開け、すぐにダルシュの所に向かう。


「ダルシュ! どうだった?」


 ダルシュが笑顔で迎えてくれる。


「おかえり兄さん、『剣士』の才能みたい」


「おぉ~! これで冒険一緒に出来るじゃないか!」


 『冒険』のワードで寝不足になったことを思い出し、二人がふきだした。


 俺はラローズ先生にダルシュの才能を知らせるために、木霊(こだま)を呼び出した。

 そしてドライアドの情報ラインを使い木霊(こだま)を先生の所へ送る。

 しばらくすると、木霊(こだま)が戻ってきて、先生からの『了解』の返事をもらう。

 王都に張り巡らせたドライアドの植物情報網を応用すれば、木霊(こだま)でこんなことも出来る、凄い便利だ。




 そして夕飯時、ラスさんとラローズさんが家に来る。

 あらためて、皆で食事をしながら、ダルシュの剣士の才能を祝った。


 皆が各々にダルシュにプレゼントを渡す。

 ラスさんからは、(つか)に飾りが入ったちょっと良い剣をプレゼントされていた。


 そして俺は、ペンダント型にしたクリスタルで作った小瓶だ、中には液体が入っている。


「兄さんこれは?」

 『フフ~ン』と俺はもったいぶる

「ディケム、ウザいんだけど! 勿体ぶらないで早く言いなさいよ!」

 ⦅………。 ルルがヒドイ⦆


「うん……。 それはまだ研究中なんだが、中身はエリクサーだ!」


 『っえ!?』皆が目を見張る!


「ちょッ! ディ、ディケム君エリクサーって!?」


「今のところ文献でしか読んだこと無かったので、『これがそう』とはまだ言えないのですが……、その中の液体を飲めば、致命傷だったとしても傷が治り、体力と魔力をフルに回復してくれます」


「それはもう…… エリクサーでは?」


「エリクサーは、イグドラシルの恵み…… 落ち葉を使って作るのですが、ウチの神木はまだイグドラシルまでは昇格していません。 だから正式な手順では無く、抽出と濃縮を繰り返して、非効率的に作った試作品です。 費用対効果が悪すぎるので、ただの実験品なのですが……、飾っておくのも勿体ないので、ダルシュへのプレゼントにしました。 死に直面したときは躊躇なく使ってほしい」


「エリクサーとは…… あなたいつも芝生でゴロゴロしてるようにしか見えないのに、いつの間にか驚く研究出してくるわよね!」


 皆が一斉に頷いている。 ……ヒドイ 


「芝生でゴロゴロって…… 先生の俺のイメージ酷くないですか?」


「みんなの反応が、私のイメージが間違っていない証拠よ!」


「…………。 まぁ、俺の事は良いとして……ダルシュは剣士だから、ラスさんに教えてもらうと良い」


 『そんな! 兄さん、将軍に教わるなんて、おこがましいよ』ダルシュが謙遜する。


 『バカね、コネは使ってこそよ! 使わないでウジウジいうより、使って立派な剣士になったほうが勝ちよ!』 ルルが捲くし立てる!


 『俺もそう思うよ! ラスさんお願い』俺もお願いする。


「あぁ! その任務任された! 立派なディケムパーティーの前衛を育てよう」


 ラスさんがダルシュの教育を請負ってくれた。

 コネを使ってズルいと言われても構わない、ルルの言う事は正しい。

 今の人族はどんなコネを使ってでも強くなり、その分多くの人の命を助けた方が正義だ。


 実力の伴わない正義感など、この世界ではむしろ傲慢で無責任な独りよがりでしかない。


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