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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第三章 アールヴヘイムの六賢者
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第三章1 魔法学校 二年生


 魔法学校の一年生は学校以外の行事が色々あり、あっという間に過ぎてしまった。

 王都防衛工事や、ドライアド、ルナなどのイベントも続き、あまり学校に来る事も出来なかった。

 一応、俺にとっては、一年生での実技の授業はそれ程目新しい事は無かった。

 座学の講義も現代魔法を知るために必要性を感じているが、一年生での授業は基礎が多く、あまり新しく知る事は無かった。


 学校側も、国防軍の軍事学校だけあり、授業よりも王都防衛工事などを実技として、そちらを優先してほしいとの事だった。




 そして魔法学校の二年が始まる。

 俺達は二年生として新入生を迎える立場になった。

 とても新鮮だ。


 去年体験入学しに来ていた、ロマネ帝国のヴォーヌ皇子とモンラッシュ共和国のグラン嬢は今年も来ているそうだ。

 去年の体験入学を意味のあるものだと判断してくれたようだ。


 残念ながら、俺とは一切接点が無かった。


 今年の入学式の挨拶は。

 一年生徒代表の【ボーヌ王国ポマール王女】だ。

 そして、在校生の代表挨拶は、去年と同じ四年生になった【ジョルジュ王国のルーミエ王子】。



 滞りなく終わった入学式、そしてはじまる恒例の【力試し大会】今年は校舎から見る立場だ。

 去年、マルサネ王国のコート王子が行った役を、今年はボーヌ王国ポマール王女がやっている。

 うまく皆を指揮し手足のように使っている、とても勝気な姫様のようだ。


 去年は当事者だった俺は、今年は高みの見物で楽しんでいた。



 そして、それは起こった―――!


「二年のソーテルヌ辺境伯に勝負を挑みます!」


 『———はぁ?!』 俺が唖然と驚いていると……。


 ラローズ先生が『ほら行ってきなさいよ!』と言う………。


「いや…… これ一年生のイベントですよね?」


「学生のガス抜きにやっているって言ったでしょ? 去年は、あのあと貴方にチャレンジする人が居なかっただけ。 一年の決着がついたら、後は上級性も含めてのバトルロワイアルよ!」


 『フフフ~ン♪』と楽しそうにラローズ先生は言う。


 『う、嘘だろ…… そんな……』ウンザリした俺のつぶやきを余所に、ポマール王女は白熱していく。


「二年のソーテルヌ辺境伯! 去年のマルサネ王国コート様のリベンジ! 私が果たします!」


 ⦅ん? ポマール姫はコート王子が好きなの?⦆


 『クソ…… ま~行くしか無いのだろうな………』俺はブツブツ言いながら神珠のスティックを確認して、校庭に出る。


 『ソーテルヌ辺境伯、スティックではなく杖を持ってきなさい!』とポマール姫が言う。


 この姫様は正々堂々で理不尽な姫では無いみたい。

 だが俺は『これで十分!』と神珠のスティックを見せて構える。


「それで負けても言い訳は聞きませんわよ! 皆!行きなさい!」



 去年のコート王子は、一列で一斉射撃だったが、

 ポマール姫は二列にして一列ずつ交代し、絶え間なく魔法を撃ってきた。

 この絶え間ない攻撃には、去年のように一回ずつの魔法の相殺では忙しい。


 ⦅この子本当に王女か? なんか戦いなれているような……⦆


 俺は、精霊珠を八個自分の回りに展開し四角柱の防御結界で自分を囲み防御した。

 絶え間なく、魔法が降り注ぐが…… この結界は破れない。

 王都の結界を張ったのは俺だ、そんな簡単に破られたら、信頼をなくしてしまう。


 今年の一年も入学当初から火炎球(ファイア・ボール)を撃てる学生がこれ程いるのか……

 去年に引き続き、貴族の子は結構優秀だな。

 俺は結界の中から、術者を観察する……


 ⦅ん? あれ…… 火炎球(ファイア・ボール)撃ってる術者、ほとんど上級生じゃない?⦆


 もしかして…… 去年もそうだったのか?

 そう言えば、ラローズ先生さっき『去年はあの後貴方にチャレンジする人が居なかっただけ』と言っただけで、上級生は挑んでいないとは言っていない………


 ⦅おいおい…… 嘘だろ?⦆


 相手が一年生だけではないと分かれば……

 攻撃も止みそうもないので、俺はクリスタルドラゴンを五体校庭に作る。


 校庭に突然五体も現れた巨大なドラゴンを見て、学生たちは目を見張り、火炎球(ファイア・ボール)を撃つ手も止まる。


 『う、嘘だろ? ドラゴンとか勝てるわけ無い―――』学生の絶望のつぶやきを合図に、クリスタルドラゴンが動き出す!


「さぁ! クリスタルドラゴン! ケガしない程度に蹴散らしてこい―――!」


 たとえ相手が上級生だったとしても所詮は学生、一体のクリスタルドラゴンで十分なのだが、こういう時は演出も大事だ!


 『圧倒的に勝たないと、後々面倒くさいからね――!』俺はラローズ先生に聞こえる様につぶやき、ドラゴンに指示を出す。



 荒れ狂い襲ってくる五体の巨大なドラゴンに学生たちの隊列は呆気なく瓦解し、みな脇目も振らずに飛散していった………。


 校庭で一人たたずむ俺に、挑みかかって来る者はもう居なかった。


 『あなた、さらに人間離れしてきたわね』ラローズ先生が横に来て言う。


「ひどい言われ様ですね先生、先生がいけって言うからやっているのに……… しかも先生! 相手の魔法師、ほとんど上級生じゃないですか!」


 先生が舌を出して『バレた!』って顔をしている。


「たとえ上級生だったとしても、この校庭で吠えまくっているドラゴン五匹見て、誰が挑もうと思うのよ…… 先生だって逃げ出すわよ」


「………………」


「ストレス発散より、恐怖支配になっている気がするわ………」


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