第一章7 ララの心の拠り所2
ララのの目線になります
今日は妹のルルが五歳を迎えたので、幼馴染み達と一緒に五人で古い行事に行くことにしていた。
この『お披露目の儀』という古い行事は今では廃れて誰もやる人はいない。もちろん私たちも五歳の時にはやらなかった。
というか、この儀式自体しらなかった。
でも、もうすぐ五歳という妹にうちのお爺さんがこんな言葉を言った事からはじまった。
『なら、お披露目の儀をやらんとな~』
興味を持った私とルルはお爺さんから昔の儀式について聞いた。
そしてそれを幼馴染に話すと、真っ先にディックがみんなで行こうと計画した。
本当は、私は村の結界の外に出ることが怖かった………。
だけど、この頃なかなか遊んでくれないディケムも『もちろん、お祝い事だから一緒に行くよ!』と久々に言ってくれた。
(絶対、私も行かなきゃ!!)
当日、森の中ではピクニック気分で心配もあるけれど、お父さんもお母さんも行った儀式だし、久しぶりにディケムも一緒だし楽しんだ方がいい。
ルルはディケムの肩に浮いている水球を見て大はしゃぎ!
隙あらば触ってやろうと狙っているのがわかる。
あの水球、何度見ても不思議なのよね!
水が宙を浮いているなんてとても神秘的できれいだ。
つい出来心でルルと一緒に――
『そぉー』っと近づき、触ってみようと手を伸ばすと………
「お前ら…… さっき俺、まだ制御しきれてないからダメだと言ったよな?」
「ッ――アウッ!」
怒られてしまった。 失敗しっぱい失敗しっぱい。
そんな和気あいあいとした雰囲気で結界の境界線まで歩いて来た。
儀式を行う順番を決めるときディケムが一番に行くと言い出した。
腕力と魔力で、何か事故が起こった時はこの中で一番対処できると。
(ホント頼もしい!!!)
ディケムが結界の外に一歩だけ踏み出す。
なにかに驚くように止まった………。
(えっ!?)
私にも何かディケムの回りで光が弾けるような物が見えた気がして驚いた!
でも他の皆には何も見えなかったみたい……。
『なんで止まるんだよ!』とヤジられている。
気のせいだったのかもしれない……。
ディケムが自分の体を確かめる仕草をした後、勢いよく走り出す!
全員が緊張して見守った。
神珠杉まで一〇メートルをディケムは軽やかに走った。
そしてディケムが身軽に『ヒョイ!』っと神珠杉の近くでジャンプした……
――そのとき!
その現象は起こった。
ッ――――バンッ!!
ディケムの肩にある小さな水球が突然膨張しはじけ飛んだ!
「なっ! ディケム!!!」
私が叫んだ直後、黄金の粒子が竜巻になってディケムを飲み込む!
黄金の粒子はさっきチラッと見えたやつだ! 今はさっきとは比べ物にならない密度で渦を巻く!
「ディケム! すぐに助けに行く! がんばれ!」
「ッ―――来るな! 俺は大丈夫だから絶対に来るなよ!」
ディックが救援に向かうと言うとディケムは絶対に来るなと言う!
『来るなって!』 行っちゃいけない程の事が起きているってこと!?
私たちがパニックに陥る中どんどん勢いを増す黄金の竜巻の中で、ディケムが地面に崩れ落ちていく影が見える。
「ッ――ディケム! 嫌だよ! ディケム! ディケム!!」
私はディケムの名を呼び続け助けに飛び出そうとしたけど、ディック達に抑えつけられて行かせてくれない。
「ディック! 離してよ!! 嫌だよ! ディケムを助けに行こうよ! 皆で行けば助けられるよ!」
私は泣きながら叫び続ける。
いくら私が泣き叫んでも、黄金の竜巻は人の力ではどうする事の出来ない超常の力。圧倒的な力の前ではすべての生き物は無力だと思い知らされる。
ただただ、竜巻の中に消えていくディケムを私たちは見送ることしかできない。
「私のせいだ! 私が儀式の話なんてしなければ! こんな事にならなかったのに! お願いディケムの所に行かせてよ!」
「落ち着けララ! ディケムはさっき大丈夫だと言ったんだ。 ディケムを信じよう。」
取り乱す私を皆が押さえつけ、飛び出さないようにする。
私がディケムに手を伸ばす先で……ディケムは黄金の竜巻に消えていく。
「嫌ぁぁぁぁ―――!!!」
神様――! お願いディケムを助けて!
すがりつくように懸命に伸ばす腕の先で、ディケムが一瞬光ったように見えた!
「えっ………!?」
今まで拒むようにディケムに叩きつけられていた黄金の竜巻の性質が変わっていく!
「――うそ! 何が起こっているの?」
黄金の粒子は今までの拒絶とは逆に、今度はディケムを受け入れ守っているように見える。
そして竜巻が収束していき粒子はすべてディケムに吸い込まれるように無くなっていく……。
すべてが収まったとき、その場所にはディケムが立っていた。
ディケムはエネルギーに溢れ、錯覚かもしれないけど少し輪郭が輝いて見える。
「ディ、ディケム!? ディケムだよね。」
「あぁララ、 心配かけたね」
いつものディケムがこちらを見て優しく笑いかけてくれた。
「もう大丈夫だ」
ディケムのその一言で私はその場に崩れ落ち、大声で泣きじゃくった。
私の大泣きで皆オロオロしていたけど、ディケムは自信に満ちた笑顔で私に向かって歩いてくる。
そしてディケムは私を安心させるために私の頭を軽くポンポンとなでてくれた。
それだけで、私はホッと安心して泣き止んだ。
脱力でまだ立てない私は、ディケムを見上げると――!
ディケムの肩には、とても神秘的な水で出来た半透明の精霊様が座って笑っていた。
面白ければブックマークや、評価を付けて頂けると励みになります。