第二章32 2人の精霊使い
王城で辺境伯爵に陞爵、王都守護者に任命されたあと、大勢の貴族に囲まれ挨拶を受けた……… そして今やっと自分の屋敷に帰ってくることが出来た。
『ホッ』っと息を吐き、我が家に入ろうとすると―――
「――ッな!」
すでに屋敷のプレートが【ソーテルヌ辺境伯邸】になっている……… 『はやっ! 怖っ!』
そして、門をくぐると―――
執事のゲベルツを筆頭に、使用人たちが勢揃いで並んで待っている!
「ソーテルヌ辺境伯さま陞爵おめでとうございます!」
俺はドン引きしながら『あ、ありがとう……』とかろうじて答えられた。
庭には、ディック、ギーズ、ララ、それからマディラとトゥニーもいた。
使用人たちは持ち場に戻っていき、友人だけが残る。
『またディケムだけ先に行かれたよ!』とディックがふてくされる。
「いいじゃない、パーティーリーダーが出世したのだから!」
ララとギーズがフォローしてくれる。
「ソーテルヌ辺境伯様、この度はポートの事、本当にありがとうございました!」
マディラとトウニーがポートの事でお礼を言ってきた。
「友達の為に、わざわざお礼を言いに来るなんて…… ポートは良い友人を持ったね」
俺が言うと、二人は恥ずかしそうに笑っていた。
「そうだみんな、まじめな話もしますね!」
俺は友人五人を集める。
「俺は辺境伯という爵位と共に、王都守護者にも任じられた。 だから後日、ラス将軍やラローズ副隊長など主要なメンバーを集めて、今後の王都防衛について話し合いたい。 そこに皆も参加してほしいんだ」
「え? 俺たちも?」
「あぁ、仲間だろ!」
「わ、私達もですか?」
「そう。 会議には精霊使いの人にも参加してもらう予定です。 だからポートは参加確定です。 ポート1人じゃ可哀そうだし…… 優秀な白魔法使いの君たちは、ぜひ確保しておきたい」
みな照れながら参加を承諾してくれた。
翌日は、普通に学校に行く、なにか色々あって久しぶりの登校な気がする。
学校でもソーテルヌ辺境伯、陞爵のお祝いの言葉を沢山の人に言われた。
学校の授業は相変らずみな杖づくりに奔走している。
そして杖づくりに関してはどのクラスも一緒だ、だからクラスの垣根を越えて協力し合っている。
毎年この課題で、他クラスとの友人を作るのが恒例らしい。
そして今、俺の前には神木の枝を大切そうに抱えた面々がズラリといる……
『どうしたみんな?』と俺がたずねると、代表してララが答える。
「凄い枝が手に入ったのは良いのだけれど、これに見合う触媒が無いの」
「え…… まぁ確かに素材を人に例えると、神木は神経、触媒は脳ってくらい触媒は重要だよね。 だけど…… わかっていると思うけど、精霊結晶は力が強すぎる。 言い方悪いけど皆にはまだ早すぎる」
ララが頷く
「うん分かってる、精霊結晶はさすがに分不相応だと分かってるけど…… 他に何かないかな?」
「そこらへんはやっぱり俺より先生の方が詳しいでしょ。 ラローズ先生に聞きに行ってみようよ」
俺たちは、皆でラローズ先生を訪ねる事にした。
『先生!』 俺達が先生を訪ねると、2人の上級生の男女の生徒が居た。
「あら、ちょうどよかった。 貴方達の質問を聞く前にこの2人を紹介させて。 この子が3年生のエミリア・パルマさん、パルマ准男爵の娘さん。 そしてこちらが2年生のマルケ君。 2人とも精霊使いの子達よ、クラスはF組」
二人が挨拶をしてくる。
「ソーテルヌ辺境伯様、お初にお目にかかります。 今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
挨拶が終わると、2人にラローズ先生から話がある。
「今度、ソーテルヌ辺境伯邸にて王都防衛の会議を行います。 2人にもその会議に出てもらいます。 良いですね?」
「はい! 私たちはソーテルヌ卿に紹介して頂く日をずっと待っていました。 今は全く使う事の出来ない、この精霊使いの能力、 その使い方をソーテルヌ卿は入学式の日に我々に示してくれました。 一日でも早く、訓練を指示して頂く日を、心待ちにしておりました」
2人はリグーリアと同じ、全く精霊も使えず、魔法も苦手で行き詰っていたと言う。
『エミリアさん、マルケさん。 先日のルビー男爵の件は聞いていますね』と先生が話し出す。
「はい」
「その時、娘のポートさんは精霊木霊と契約を果たしました。 お兄さんが精霊使いだったこともあり精霊に適性があったようです」
二人が目を見張る。
おれは補足を入れる。
「とてもうれしい事なのですが…… 懸念も多々あります。 ポートは一切精霊使いとしての訓練を受けておりません。 その状態で精霊と契約しました。 今、彼女の精霊使いとしての訓練が急務です」
二人が息をのむ。
「精霊使いを目指すお二人ならば、精霊との契約はリスクが高い事はお判りでしょう。 それほど精霊は強力です。 しっかりした知識が無ければ諸刃の剣となります」
「はい」
「今王都は、私の屋敷のマナを活性化させ、神木を植えたことで、とてもマナに満ちた環境になっています」
「はい、私達精霊使いはマナに敏感な能力だとラローズ先生から聞きました。 ソーテルヌ卿が王都に入られ、結界を張られた時からそれをヒシと感じています」
「マナが活性化していると言う事は、精霊と契約しやすくなっていると言う事でもあります。 ポートの時と同じ、突発での契約が起こらないとは言えませんので、事前に準備を行っていきます。 いま分かっている精霊使いの人を全て集めて訓練を行います。 お二人とも参加をお願いしますね」
『『はい!』』と二人とも、軍人さながらの挨拶をした。
「これで、先生が探し出した精霊使いが全員揃いますね。 ラローズ先生、ラモットさん、エミリアさん、マルケさん、リグーリア。 そして新たにポートで6人」
『訓練がたのしみね。 フフ』 とラローズ先生は少し小悪魔的な笑みを浮かべていた。




