表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第二章 城塞都市・王都シャンポール
64/553

第二章28 薬師フィノと精霊が宿りし神木の枝

 ラローズ先生がツカツカとこちらに歩いて来る。


「いろいろ説明してもらわないといけませんね」


 笑っているが、顔が引きつっている。


 『まぁ、落ち着いて』と神木の横のテラスに皆を座らせ、執事のゲベルツにお茶を頼み、ゆっくりお茶を飲みながら、いままでの話をゆっくりと説明していった。


「では、魔の森の奥の神木なのですね、この木は!?」

「はい! 凄いでしょ! ハハハ」


「ハハハ じゃないでしょ! 水竜で王都上空を飛んだでしょ! もう町中大騒ぎだったんだから!」


「ティンカーベルを安全に移動させたかったんです。 大事でしょ?」

「それはそうだけど………」


 『ラローズ、水竜の事は俺の方で王に話しておくよ』とラスさんがフォローを入れてくれる。

「ラス、そんな簡単に……」


「ラローズ、学校の先生になって考え方が固くなってないか? だって、凄いじゃないか!王都に神木が生えて、ドライアド様が来て下さったのだぞ!」


「たしかに…… ドライアド様が宿る神木は、人が立ち入れない深い森の奥にあると言う、幸運の象徴ですものね」

「しかもティンカーベルまでこんなに沢山だ!」


「ティンカーベルはいたずらするけど、繁栄の象徴ですものね」

 まぁしょうがないかと、先生は諦めてくれる。


「そう言えば、ディケム君。 さっき見ていたけど、学校で作った魔法のスティック問題なく使えていますね! 合格です」


「――はい!」


「あれだけの膨大なマナを扱うには、そのレベルの杖じゃなきゃダメでしょうね」


「ラローズ…… あのスティックを授業で作ったのか?」

「そうよ、凄いでしょ! たぶんアーティファクト級よ!」

「おい! アーティファクトってそんな簡単に……」

「だって、そのスティック意思持ってるもの」

「―――!!」


「ディケム君しか触らせてくれないから、調べられないのよ」

「な!………」


 神珠のスティックの話になったから、皆が居るうちに渡しておこう。


「みんな~! あつまれ~」


 おれは学校の友人たちをみな集めた。


「神木からお礼に、枝貰ったから1本ずつ配るね」


「おぉ~~~マジか! さすがディケム! ララあとで今日の事もっと詳しく教えろよな!」

「うん、もう感動して私泣いちゃったでしょ!」


 ララ達は大切そうに枝を受け取って、向こうで今日の話をしている。


「あ、あの…… ディケム様、私たちも頂いて良いのですか?」


 マディラ達3人、マルケ、プーリアは遠慮しているが……


 『枯れ行く神木も自分の枝を、大切に使ってくれたら嬉しいんじゃないかな!』と言って渡した。


「ほらフィノ、どうしたんだ! お前が1番ほしがっていたじゃないか!」


 奥の方で、枝を取に来ないフィノを呼ぶ。


「今日1日君と一緒に居て、僕にはその枝をもらう資格が無いと思ったんだ…… 僕は何もできなかった…… でも君はあの状況で、最適解を導き出した。 そしてドライアド様とも契約して、ティンカーベルも君に心を許している…… 僕は何もできなかった」


 フィノが、落ち込んでいる………。


「フィノ、お前アホか! 自分で言うのは何だが、あの状況でどうにか出来るほうがおかしい! あれは―― ただ俺がカマをかけて、それが当たっただけだ」


「それでも、君にはその選択肢が出来た………」


「なぁフィノ、俺は先のアルザスの戦いで、多くの経験を積んだ。 お前は、まだ何も経験を積んでいない! だが今日、お前は貴重な経験をした。 その経験の大切さがわかるか? 今日、お前とリグーリアは腰が抜けてへたり込んでいたな?」


「うん」


「だが、ララは俺の横でしっかり立っていた。 ララはアルザスの戦いをその目で見ているからな」


「ララさんが、アルザスの戦いに!?」

 フィノが目を見張る。


「人は経験と共に成長する。 今日お前は経験して成長した。 そして、経験を次に活かすために、与えられたレベルアップの機会を逃がすな! この神木で作ったスティックがあれば、次のチャンスを生かせるかもしれない! たとえ屈辱でも、レベルアップ出来るときにしておけ! 次のチャンスをものにしろ!」


 俺が叱咤すると、フィノは唇を嚙みながらお礼を言い、神木の枝を受け取る。


「僕は君に何を返せる。 何をしたら君に恩返しができる?」


「この神木の下で、この薬草園で、ティンカーヴェルと一緒に研究をしてくれ。 そして、クリエイトをラーニングして、更なる研究を進めてくれ!」


「でもそれは僕の願い! 君の為では………」


「俺とお前で向いている方向は同じだ。 ポーションの研究が俺の願いでもある。 俺にはクリエイトをラーニングして研究することは出来ないからな。 俺が出来ないことをお前がやってくれ! 俺が考えていたポーション研究をお前に任せるよ!」


「ディケム君、いやソーテルヌ伯爵。 私の一生をかけて貴方にポーション研究を捧げると誓います」


「あぁ、頼むよ。 フィノ!」




 感動のフィノの誓いが終わった後……

 ラローズ先生が万遍の笑みで手を出してくる……


「何でしょう? 先生……」


「またまた~ ディケム君ったら~」


「ん? 意味が分からないのですが……?」


 ラローズ先生が万遍の笑みで言う。

「神木も大切に使ってくれたら嬉しいんじゃないかな~ 与えられたレベルアップの機会を逃がすな~」


 先生が…… 俺の言った臭いセリフを繰り返す……

 ⦅ヤメテ………ハズカシイカラ… ヤメテ………⦆


 奥でラスさんが、頭を下げて謝っている。


 先生がまた同じセリフを繰り返す。

「神木も大切に使ってくれたら嬉しいんじゃないかな~ 与えられたレベルアップの機会を逃――――」


「――分かった! わかりました! もう恥ずかしいから言わないでください!!」


「わぁ~~~い」

 先生がはしゃいで神木の枝を持って行く。


 何だろう、すべて台無しにされた気がする………



「ねぇ、ディケム君。 冗談はさておき、まだたくさん神木の枝あるけれど…… どうするの?」

 ⦅冗談で貴重な神木の枝奪っていくのですか――!⦆


「秘密なんですけどね……」

 ⦅もうこの時点で秘密ではない⦆


「館の地下に、マナの結界を張った倉庫があるんです。 そこに僕の杖を作った素材とか、貴重な素材を補完しているんです。 そこには特にマナを充満させていて、劣化防止の魔法陣も設置しているので、時間が経つほど素材にマナが蓄積して良い素材に成熟していくんです。 残りの神木はそこで保管しておきます」


「へ~、そんなお宝倉庫が! 時間が経つほどって、なんかワインの熟成庫みたいね……」


「そこ、ウンディーネが結界張ってますが、今度ドライアドが来たから、さらに補強しようかと。 邪な考えが有るなら、試しにトライしてみてください!」


「引っかかったらどうなっちゃうの?」

「どうなっちゃうか見たくって フフ」


「それダメなやつでしょ! コワ! この子――コワッ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ