第二章26 妖精ティンカーベルの固有スキル:クリエイト
フィノをソーテルヌ邸に連れてきて、俺の薬草畑と研究所を案内した。
リグーリアは週末にくる予定だったけど…… まあ良いか、早めに来て慣れてもらおう。
その他のメンバーは畑で遊んでいる…… ⦅ヤメテホシイ⦆
「ちょっとディケム! この頃よく畑に居ると思ってたけど、こんな事してたの?」
「あぁララ、ラローズさんとは一緒に話したんだけどね」
「趣味の野菜作ってたんじゃないのか……」
⦅趣味の野菜って…… ま~薬草も野菜みたいなものか⦆
「どうだフィノ? この施設は?」
「凄い! 僕が欲しいと思っていた環境が全てここにある」
俺は結界でマナを集め、マナ濃度を上げていることなどをはなし、研究成果を2人で検証する。
すると、フィノが分厚い資料を取り出す。
「ディケム君! これが僕の研究結果なんだけど、見てくれないか?」
「いいのか? フィノ。 俺の研究は正直今は俺にしかできない。 でも…… フィノの研究は、検証に検証を重ねた地道な努力の研究成果だ。 見せてしまえば、誰にでも真似ができてしまうぞ」
「ディケム君。 僕は薬屋だ! もちろん生きていくにはお金が居るから慈善事業ではない。 でも、根本は皆の病気、ケガを直したい、それだけなんだよ。 僕の研究結果で、1人でも多くの人が助かるのなら、研究資料なんてどんどん使ってほしいんだ!」
俺は少しフィノを誤解していたようだ。
俺はフィノをただの研究バカだと思っていた。
研究の結果で、何かを成し遂げたいのではなく、ただ研究を突き詰めたいマッドサイエンティストではないかと……
しかしその心配は杞憂だったようだ。
「ほらディケム君、君の研究と僕の研究を組み合わせれば、飛躍的に効果を上げられそうだ!」
学校でのフィノからは想像もつかない程の笑顔で、フィノは話す。
よほどこの研究施設が気に入ったようだ。
フィノと色々な話をした後、俺のお気に入りの場所、薬草畑と花壇を一望できるガーデンテラスで皆でお茶にする。
「ここで作ったハーブティーとケーキだ。 薬草を使っているからステータス効果もあるから食べてみてくれ」
女子たちがキャッキャ言いながら食べている。
以外にプーリアとリグーリアが女子力が高そうだ。
「ウンディーネも出てきて食べなよ」
学校ではなかなか出すことが出来ないウンディーネも呼ぶ。
「良いのか? 学校の者の前で、妾が出ても?」
「このメンバーなら良いよ」
『では!』 といってウンディーネがポケットから出てきて、机に座りクレープを食べだす。
「………………!!」
フィノとマルケが声にならない驚きの声を上げ、ウンディーネをみる。
「じょ、上位精霊様が………!」
2人以外は、1度はウンディーネと会った事が有る。
それでも…… 何度見ても感動するらしい。
「学校では見せられないが、俺が契約している、ウンディーネだ」
目立ちたくないイフリートの事は、今回は言わない。
「リグーリアは、これから精霊魔法の訓練するときは、世話になるから」
「はわ、はわ…… よ、よろしくお願いします……!」
リグーリアが緊張でアワアワしている。
「ではフィノあらためて話そうか」
フィノがピント気を張り、話を聞く姿勢になる。
なぜか、ほかの皆も姿勢をだした。
「今日1日お前と行動して、ただの研究狂いでは無く、目指す方向に共感を持てた」
「そうか良かった」
「それで…… ここの施設を見て、まだ作りたい杖は変わらないか?」
「あぁ! もし僕がこの環境で薬の研究が出来たとしても、僕は十分にマナを使いこなせないだろう」
「ほぉ…… よく自分をわかっておるな」
ウンディーネがフィノの考えを肯定する。
「僕はこれから欲しいものが2つあります!」
「ほぉ?」
「1つは、マナをうまく使えるように、最上級の魔法のスティック。 もちろん、ディケム君のスティックとまでは言わないけど」
「あたりまえじゃ小童、お前如きが使いこなせるわけがなかろう!」
⦅フィノが少し泣きそうだ……⦆
「もう1つは…… 僕の能力青魔法で、妖精ティンカーベルの【クリエイト】をラーニングしたいんだ!」
俺は目を見張り、ウンディーネを見た。
「もの作りの妖精ティンカーベルが持つスキル。 色々ある【物作りスキル】の最上級スキルじゃな。 確かにその2つの願いが叶い、この環境を使えば、これ以上ない研究が出来るじゃろうな」
ウンディーネが少し考えてまた話しだす。
「だが、なかなか難しい事じゃぞ。 クリエイトのスキルは、攻撃魔法ではない、ティンカーベルと戦っても手に入らぬ。 ティンカーベル固有のスキルと言ってもいい」
それを聞いても、フィノの気力は萎えない。
「はい、しかし僕の遠いご先祖様がラーニングしたという、文献が有るのです! 何かラーニング出来る方法があるはずなのです」
「なるほどの………」
ウンディーネがまた考え込む。
「無い事もないが……」
「ッ――! ご存じなのですか! ウンディーネ様!」
「簡単な事じゃ、ティンカーベルと一緒に暮らして、モノづくりを一緒にしていれば…… そのうちラーニング出来るじゃろう」
俺たちは絶句する……
「それって……」
「そうじゃ、人間には非常に難しい。 ティンカーベルは精霊ではない、妖精だ。 大きなくくりで言うと魔物に近い。 妖精は精霊には敬いを持つが、人間にはよほど気に入られないと難しい。 ただ、妖精は魔物よりかわ人族を気に入る性質じゃがな。 そなたの先祖がクリエイトをラーニングした話は、あながち嘘では無かろう」
「それならば!」
「ティンカーベルと一緒に暮らすのが難しいのは、環境じゃ! ティンカーベルはマナが豊富な大木の傍でしか生きていけない。 また人族の町のようにマナの少ない場所の木では、ティンカーベルが暮らすのは難しい。 1匹くらいなら、庭の木に連れてきても死なないだろうが…… たぶん直ぐに逃げ出すだろう。 それに1匹と暮らしてもラーニングなど夢のまた夢だろうな。 お前の先祖は、森の奥地でティンカーベルと一緒に暮らしていたのだと思うぞ」
「………………」
さすがにフィノも絶句している、みなも黙り込んでいる。
俺はフィノに聞いてみる。
「どうする? 諦めるか?」
フィノを見ると、目は死んでいない。
「まさか! ご先祖様が出来たことが、僕に出来ないなんてことが有るものか! 今まで、ラーニングの方法すら分からなかったのに、それが分かったんだ! もうやることは決まっているじゃないか! ウンディーネ様、ありがとうございました!」
フィノが深々と ウンディーネに頭を下げた。
皆がなぜか俺の顔を見ている………
⦅皆が、どうにかして上げなさいよと言っている………⦆
「う~ん、出来るかどうか分からないけど、やってみようか!」
俺が言うと、みな、明るく顔を上げた。
「やってみるって、何か考えがあるのか?」
「さっきウンディーネと話したんだけど、オーヴェルニュ火山の麓に広がる魔の森に、イグドラシルになれなかった、朽ちかけの巨木があるんだ」
皆が目を見張る。
「そこにはティンカーベルが住んでいる」
さらに皆驚いている。
「そこに行ってみないと、話は分からないね。 ウンディーネ曰く、やっぱり枯れかけていても神木級の枝は折っちゃダメだって」
「ですよね………」
フィノがうなだれる。
さっそく明日、森に行くことにして、メンバーを決める。
俺、フィノは必須。
リグーリアは、精霊使いの勉強のため、出来るだけ連れまわしたい。
「あと1人くらいか……… 大人数で行くと、ティンカーベル警戒するから、行くのはもう1人が限界だな」
なぜかララが是が非でも行く感じになっている……
「リグーリアが行くのでしょ? 私がいけない道理はないわよね?」
「ほら、リグーリアは精霊使いの勉強として……」
「だからなに?」
「いえ何も……」
全員しょうがないという顔をしている。
メンバー:ララ、フィノ、リグーリア、俺 で決定。




