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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第二章 城塞都市・王都シャンポール
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第二章25 薬師フィノ

 午前中の授業が終わり、昼食のために学食に行く。

 いつもは幼なじみ3人と、ララの友達マディラ達3人組と食堂で待ち合わせて、一緒に食事をしているが、今日はリグーリアとマルケ、プーリアもついてきた。


 出来立ての魔法のスティックを腰に下げていると……

 ララが気になったのか聞いてくる。


「ディケム! もう魔法のスティック作っちゃったの?」

「ああ、さっきの授業で作った」


 するとリグーリアが……

「ララさんちょっと聞いて! ディケム君のスティックの作り方! もうドン引きよ!」

「あ…… 俺も杖作る時みたみた! あれはヤバいよな!」


 リグーリアとディックが意気投合している。


「え~! 私も見たかったです!」

 マディラ達3人とララは見たいらしい。


「ディケム様! そのスティックを1度触らせて頂けませんか?」

 トウニーが言うので、俺はスティックを机に置く。


「わ~ きれい~」


 皆が感嘆の声を上げる。

 そしてトウニーが触ろうとすると―― トウニーの手が軽く弾かれる!


「どうしたトウニー?」

「あ、あの…… 触ろうとすると見えない風で弾かれて、ピリッと電気ショックのような衝撃も……」


 『そんな訳が……』と言って、ディックが手を出すと……

 トウニーよりも強い衝撃で手をはじき返された!


「これは……」

「主以外には触らせない、自分意思を持っている?」

「そ、そうみたいだね……… アハハ」


 神珠のスティックは俺以外には誰にも触らせなかった。


 『いいな~! 私も、自分以外に触れない道具ほしい~~~!』ララがそう言うと、皆が賛同した。


 自分以外には使うことが出来ない、魔法のスティック……

 その場の全員の、独占欲、支配欲、を刺激したようだ。




 神珠の杖の話題で、皆でワイワイしていると……


「あの~ 少しいいかな?」


 F組のクラスメイトのフィノが話しかけてきた。


「どうした? フィノ」


「いや、ずっとディケム君と色々話したかったけど…… ディケム君伯爵様だし大人気だから、中々話しかけるタイミングなくってね」


「そんな気を使わなくていいよ、気軽に話しかけてくれ」

「ありがとう」


「F組以外の人は初めましてだね、僕はフィノ、この王都で薬屋をしている平民の子だよ。 能力は青魔法と白魔法。 将来目指しているのは薬師だ」


 全員があいさつを交わす。


「学校以外では、さすがにソーテルヌ伯爵に話しかけられないから、ほんとこの機会を貰えて感謝している」


「なにか俺に聞きたいことでもあるのか? みんなが思うほど、俺は物知りでもないぞ?」


「ディケム君は、イグドラシル、別名は世界樹を知っているよね?」


「ま~ 名前くらいは…… でも、伝説のたぐいだよな? この世を支える木、イグドラシル」


「そう、イグドラシルは伝説なんだけど…… 王都の北 オーヴェルニュ火山の麓に広がる魔の森に、イグドラシルの幼生があると、昔から言い伝えがあるんだ」


 皆が一斉にこの話に食いついてくる!


「幼生? ……イグドラシルは何本もある物ではないだろ?」


「そこらへんは、正直僕にはわからない、でもその枝が欲しいんだ!」


「枝が欲しいって…… 魔法のスティックを作るためか?」

「うん!」


「仮にそのイグドラシルの幼生があったとして…… 枝折ったらまずいだろ?」


 皆が目を見張り、顔をそむける…… 

 皆見つけたら枝折る気満々だったらしい……


「それに、それだけの素材があったとして…… フィノにその枝使ってスティックを作れるだけの技能はあるのか?」


「う……」

「俺の作ったスティック、触ってみてくれ」


 フィノが触ろうとすると、『バッチ』っと電気が走り弾かれる。


「これは?」

「ある程度の力を持つ道具は、意思を持つ」


「なっ! す、素晴らしい!!」


「ああ、だけど俺以外を主と認めない」


「フィノが、この領域の道具を作りたいなら、自分で作るしかない」


 フィノは少し考え込んでから話し出した。


「ディケム君、確信が無いのだけれど、僕はいくつか確かめたい事があるんだ! 僕にチャンスをくれないか? 僕には君の力が必要なんだ!」


 『あの…… どうしてそこまでの魔法のスティックが欲しいの?』とララが訊ねる。


「ララさん。 僕は薬師を目指してる。 薬草の調合である程度の効力を上げられる研究をしている。 でも…… もっと上の段階に行くには、マナが足りないんだ……」


 おれは、自分の作ったポーションを机に置く。

「見てみてよ」


 俺が置いたポーションをフィノが鑑定する。


「こっ!………これは! これは誰が作ったの? ディケム君!!」


 すごい勢いで手を握られた


「素人の俺が作った」

「なっ! どうやって?!」


「フィノ、協力するかはまだ分からないけど…… 今日これからウチに来ないか? しばらくは杖づくりで授業は自習だろ?」


「僕は良いけど…… 良いのかい? 伯爵邸に僕なんかが行っても?」

「全然かまわないよ」


 そう言って、午後はウチに向かったのだが…… 何故か食堂に集まった、ララ達、マディラ達、リグーリア、マルケ、プーリアまでもついてきた。


「ララ、なんでお前までついてくるんだ?」

「だって…… 杖づくりの素材集め、最初から(つまづ)いているんだもん。 ディケムの傍に居れば良い素材見つかりそうだし」


「なんだそれは…… リグーリアは週末に招待していたから良いとして…… マルケとプーリアはなぜ?」


「いや…… この流れは皆で行く感じだと思って…… それにせっかくだから噂のソーテルヌ伯爵邸も行ってみたいじゃないか?」


「そうだディケム殿、この流れで私達だけ除け者はズルいではないか!」


「………まぁ、しょうがないか」



「それにね、ディケムのスティック見ちゃうと、適当な素材で我慢できなくなるというか……」


「それ分かります! 市販の素材見ても、買う気になれない!」


「そうそう、責任取ってよね!」

 ⦅おっと! 理不尽な要求が来たよ……⦆


「ウンディーネに言われただろ? 身の丈に合った素材を探せって」


「え~~~、 わかんな~~い」

 ⦅………コ、コイツ!⦆



 そんな話を皆としながら、俺は別にウンディーネと念話ではなす。


 ⦅なぁ ウンディーネ⦆

 ⦅何じゃ?⦆


 ⦅イグドラシルなんて本当に有るの?⦆


 ⦅イグドラシルが何なのかわ分からぬが、世界を支える木はあるぞ⦆

 ⦅え…… あるの?⦆


 ⦅例えばお前がよく知っている【神珠杉】もそうじゃ、マナの大河に繋がる木、たぶんそれをイグドラシルと人は呼んでいるのじゃろう⦆


 ⦅なるほど~、それじゃ~ オーヴェルニュ火山の麓に広がる魔の森に神珠杉みたいな木有るの?⦆


 ⦅先ほど聞いて、マナ伝いに少し探してみたが、イグドラシルになる前に、朽ち果てようとしている老木は有るの⦆


 ⦅その木にはそれなりの力は残っているの?⦆


 ⦅あたりまえじゃが、神珠杉程の力はない。 だがまだ妖精ティンカーヴェルも住んでいるし、それなりの力は残っておる。 しかし、急がないともう少しでその命を閉じようとしている⦆


 ⦅そんな木の枝とか折っても大丈夫なの?⦆


 ⦅普通はダメじゃろうな……… 腐っても神木の類じゃ⦆

 ⦅ですよね………⦆



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