第二章17 閑話 ソーテルヌ卿の力を見極めろ1
ラローズの弟、カミュゼ・グリュオ視点になります。
父との会食で、ソーテルヌ伯爵の事を話した数日後……
「カミュゼ~ ひま?」
「姉上、会うなり『暇?』とは何ですか! まぁ暇ではありますけれど……」
(あ、姉上ってこんなに明るい性格だったか? もっとこう張りつめた寡黙なクールな人だったはず………⦆
「相変わらず堅苦しい男ね~ そんなんじゃ女の子にもてないわよ~」
「なっ! ほ、ほっといてください! 姉上が貴族ならざる砕け口調なだけです!」
「ま~いいや。 これからソーテルヌ伯爵の家に遊びに行こうかと思うのだけど、一緒にどぉ?」
「っ――はい! ご、ご一緒いたします!!」
「今日はディケム君のアポイントを取っているから~。 この前のお父様との食事会。お父様は回りくどくて分かりにくいけど、要はカミュゼをディケム君に紹介してくれと言いたかっただけよね~。 家族の食事の時くらい、砕けて言えばいいのに…… ほんと貴族って面倒くさい」
「あ、姉上が砕け過ぎなのです…… 伯爵家というものは……… ブツブツ」
『はいはい』と姉に軽くあしらわれた……… ゲセヌ
ソーテルヌ伯爵邸に着き、門兵に予約の確認をとり、召使に連れられ門を通り抜けると………
そこはマナに満ち、生き物が躍動する別世界だった!
精霊使いでもない素人の私にもそれは感じられる。
すると突然、姉が契約しているウォーターエレメントが現れ色濃くなり、嬉しそうに笑い出した。
「エレメント! あなた今喋れるの?」
「うん、ここはマナに満ち溢れている。 凄いね~ココは! 僕ずっとここに居たいな~」
「それは困るから! たまに連れてくるからお願い」
「ま~契約してるからしょうがないね~」
「姉上、そちらの精霊様が姉上が契約したというウォーターエレメント様ですか?!」
「そう、普通は私以外に見えないし、私でも喋れないんだけど…… この結界内が凄いのね」
召使いにつれられ、畑仕事をしているソーテルヌ伯爵の所に案内された。
伯爵が自ら畑仕事って…… ソーテルヌ伯爵の人となりが分からない。
「あ! ラローズさんいらっしゃい。 そちらが?」
「こんにちはディケム君、そうこの子が弟のカミュゼよ、よろしくね」
⦅姉上! 伯爵様に向かって『君』って! ダメでしょ『君』は!⦆
「ソーテルヌ伯爵閣下、お初にお目にかかります。 グリュオ伯爵の嫡男カミュゼと申します!」
「ご丁寧に、ディケム・ソーテルヌです。 ラローズさんもラスさんもディケムと呼んでくれます。 同じ年ですし、ディケムと呼んでください」
今までソーテルヌ伯爵が成した事を聞いて、勝手に厳格なイメージを持っていたが……ソーテルヌ伯爵はとても穏やかな人みたいだ。
「では、私の事もカミュゼとお呼びください」
「では、よろしくカミュゼ」
「カミュゼは戦士の才能なの。 だから学校は一緒にならないのだけれど、仲良くしてやってね」
「はい、こちらこそ」
「それで…… 伯爵様ともあろう方が、畑仕事ってどうなのよ?」
「ダメですか?」
「ダメでしょ! ディケム君は伯爵の子ではなくて、伯爵その人なのよ! 私たちの父と同格、そして厳密にいうと、私たちはあなたより下なの。 次代にその地位を継ぐから、みな伯爵の子は伯爵みたいな感じになってるけど、本当は全然違うの」
「なるほど。 気を付けますと言いたいのですが…… ここで実験しているのですよ」
「実験? そういえば、ここの邸内の中はマナが濃いけれど、この畑はさらに濃そうね! っあ! 畑の四隅にあの大結界の時と同じ水晶が置いてあるのね」
大結界! 水晶? 私は気になり水晶を見に行った…… こ、この水晶は!
「姉上! こ、これは水晶などと生易しいものでは無いですよ! 精霊結晶です! それも特大の!」
「ほぉ~ カミュゼはよく知っていますね」
「なに凄いのそれ?」
⦅あ…… 姉上? バカナノ? 姉上は実はバカナノ?⦆
「せ、精霊使いが知らないなど…… あり得ない!」
「まぁ、良いじゃないですかカミュゼ。 ラローズさんとカミュゼには見せても良いかな」
そう言うと、ソーテルヌ伯爵は精霊結晶に魔力を流し込む。
すると、信じられないことが!
「薬草が育っていく! みるみる育っていく!」
「凄いでしょ!?」
姉と私は目を見開いて、固まってしまった……
「ディ、ディケム君これは?」
「この畑には結界が張ってあり、屋敷の結界内よりさらにマナが濃くなっています。 ですので、1日もすれば薬草が生い茂るのですが…… さらにこの畑の下に魔法陣を置いて、マナを送り込むと、今のようになります」
「ディケム君、貴方信じられないことをするのね」
こ、これは…… 畑仕事をしていて、穏やかな人だとか思った自分は愚か者だった。
この人はヤバい、常識の範疇内から外れている!
「それからラローズさん。 これを見てください」
ソーテルヌ伯爵が回復ポーションを姉上に手渡す。
姉上が鑑定の魔法をポーションに使う。
「こ、これは! ただのヒールポーションなのに、普通のポーションの2倍の効果がある!いえ効果はそれ以上かも!」
「このマナが充満した環境で育てた薬草は、効力が高いんです。 さらに研究を続けて、効果をさらに上げようと思っています」
「ディケム君。 簡単に言うけれど、これは凄い事よ! これを大量に作れたら、軍事面で相当変わる! 勲章物の研究よ!」
「勲章はもう頂いたから良いのですが、軍の人たちは助かるでしょ?!」
「とても助かるわ!」
「畑仕事も必要でしょ?」
「うっ…… こんな研究をしているならしょうがないわね……」
「ラローズさん。 一つ質問良いですか?」
「いいわよ?」
「4年前、ラローズさんは国中の精霊使いを探し、俺以外で、ラローズさん含めて6人居たと言いましたね」
「言ったわね」
「そしてラモットさんを連れてきたけど、ほか4人は連れてこなかった」
「精霊使いは、今までは魔法を極めた人がたどり着く聖域。 数人いたであろう、即戦力の精霊使いは、先の戦争ですでに死んでいたの。 そして見つけた4人中1人は高齢の魔法使い、契約や戦争に耐えられそうになかった……」
「では残りの3人は?」
「あなたと同じ学生よ、1人はあなたと同じ年。 あと2人は現在魔法学校に通う学生、あなたの1つ上と2つ上ね。 今戦える成人はラモットと私だけ。 あなた達にも言ったけど、2年前の戦争に、子供は参加させる気は無かったの」
「……なるほど。 ラローズさんは俺達子供を守ってくれているのですね……」
姉上の話を聞き、ソーテルヌ伯爵は少し考え込み、何かを決心したようだった……。




