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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第8章 マグリブの地 ドワーフ王朝の落日哀歌
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第八章52 神へと届く力


 あぁあああああああああ――――――!!!

 くっそ―――! 勢いで飛び出してしまった!


 『御使いの天罰』防がないと皆死んでミッション失敗になっちゃうから………

 でもこんな事して俺本当に大丈夫なのか!?


 空には、今にも臨界を超えた恐ろしい質量の光が零れ落ちようとしている。

 そして目の前には圧倒的存在主天使(ドミニオン)ハシュマルが、突然飛び込ん出来た異物の俺を睨んでいる。


 勢いで飛び出したものの………

 俺は今、絶賛後悔中だった。



 あぁあああ―――もぅこうなったら後戻りできない!

 やるしかない!


 でもこれどう考えても詰みじゃね? ……と焦っていると。


『ディケム。 とりあえずその盾使ってみたらどうじゃ?』

 ――とウンディーネが緊張感無く話しかけてくる。


『と、とりあえずって…… ま、まあ無いよりマシか』

 そんな訳で俺は背中に装備していたブルーノの盾を構えてみた。


 でも……

⦅イヤイヤイヤ、あんな攻撃こんな小さな盾で防げる訳無いじゃないか!⦆


 他に何かないか?

 もっとほら……こう……結界のような―――

 俺がそんな事を思い浮かべていると、構えた盾にルーン文字が浮かび上がる。


 ⦅………ん!? こ、これは?⦆


 ためしに俺は盾へマナを『ふんッ!』と大量に注ぎ込んでみる。

 すると―――!


 ヴォオンンンンン―――………


 盾がブレる様に光ると、光の輪郭が盾から広がり、王都を包み込む程の巨大な結界が構築された。


『なっ……これは?』


『ディケムよ。 エルフ族が使っていたルーン文字とは元来、文字を刻まれたモノが”()”より少ないマナを集め蓄積しその力を少しだけ増幅させると言う技術じゃった。 お前がルナの洞窟で装備にマナを溜めているのと同じようなものじゃが、エルフのそれはもっと生活に密着した優しい使い方じゃった』


『あぅっ………』 なぜか後ろめたさを感じる言われ方だ……


『じゃがいつの時代も狂気に満ちた天才が居るものじゃ。 そのルーン文字の技術にさらなる可能性を見出したドワーフ族の狂気的な天才が、ルーン文字をより強力に改変し、そしてさらに戦いに特化したキアス文字を作り上げた。 キアス文字とはルーンによって力を増幅させたモノの力を開放する技術。 今、その盾から構築された結界はその盾が本来持つ力じゃ』 


『ん? ………と言う事は?』


『そう。 アーティファクト武器を持つお前やギーズもそうじゃが、ラトゥールでさえもアーティファクト本来の力を使いこなせていないと言う事じゃ』


『――――ッ!?』


『―――そして! 武器本来の力を引き出したとき、その力は神へと届く。 そうキアス文字を刻まれたアーティファクトとは神を殺すために作られた武器と言う事じゃ!』


『ッ―――なっ! じゃぁこの技術が失われ、人々の記憶からも消えかけていると言う事は………?』


『そうじゃ。 神々も自分達に害が及ぶ可能性のあるアーティファクトを恐れた。 じゃが一度作り出されてしまった技術を無くすことは難しい。 じゃから長い年月をかけ人々の記憶からキアス文字を消していったのじゃろう』


 その技術をブルーノが復活させようとしていた。

 と言う事はこの戦争は―――………


『ウンディーネ。 なぜこんな大事なことを今話す?』


『………だ、だって………ノームの土属性は妾の水属性の天敵じゃ………。 ディケムにとって必要な事は分かっているのじゃが……やっぱり面白くは無いのじゃ! そんなノームが庇護するドワーフ族の技術も………妾にとって面白い物ではない』


 おいおいおい……… 面白くないって!

 まぁ良い。今はそんな事を言っている場合じゃ無かった。



『ならこの盾の力を使えば―――………』

『―――ディケムよ。 一言いっておくがその盾は不完全じゃ。 素材もミスリルとよろしくない。 たぶん力を開放した今、全力で使えるのは一度きりじゃろぅ』

『え―――ッ!』


『焦るでない。 一度耐えられれば十分じゃろ。 天使が無差別で動き出した今、もうこれは鬼神族とドワーフ族の戦いではない。 人族のお前が表立って介入したところで問題無い筈じゃ。 じゃがこの一度はお前が派手にドワーフ族の盾を使う事に意味が有る。 ちと面倒臭くはなりそうじゃが、ドワーフ族がお前を神格化して見てくれた方がこの後の運びは楽となるじゃろう』


 神格化されて見られるって…… 嫌な予感しかしないが………

 今は考えている時間は無い。



 俺がウンディーネと念話で話している間にも、天を覆った『御使いの天罰』が臨界に達した。


 雲一つなかった空に亀裂が入り、臨界を超えた恐ろしい質量の光から光芒が一本また一本と差し込むように漏れ出る。

 光芒が差し込んだ先では、一瞬にして鬼神族の部隊が消滅していくのが見えた。

 俺はチラリと後ろを見ると、俺の後ろでは精霊結界が張られているのが見える。

 ララ達が予備の結界を張ってくれているようだ、不測の事態に備えてくれているのだろう。


 ララ達が俺の意図を汲み取ってくれた事にフッと笑みがこぼれた瞬間―――

 空が砕けた!


 膨大な質量のエネルギーが地に降り注ぐ!

 盾から構築された結界は降り注ぐ光芒を辛うじて防いでいる。

 しかし盾の庇護から外れた鬼神軍の部隊が次々と消滅してゆくのが見える……


『……………。 く、くそ――――――!!!!』


 俺は盾にさらにマナを注ぎ込み、より大きく盾の結界を広げ壊滅状態の鬼神族を覆った。


『ディケムよ…… 気持ちは分かるが、あまり欲張ると全てを失うぞ! もう盾も限界に達しひび割れておるぞ』


『分かってる……… 分かっているけど―――!』


 ………でもあれは見ていられない!

 戦争中に甘事だとは分かっている。

 でもあの死に様は…… 戦での名誉ある死ではなく一方的な虐殺。

 只の無駄死にだ。

 同じ戦士としてあの無駄死にだけは看過できない。


『もう少しだ…… もう少しだけ頑張ってくれ―――!!!』


 俺が盾に願い叫ぶと、今一度盾に刻まれたキアス文字強く光り結界が強く光った。




 地に落ちた光り『御使いの天罰』が収束していく―――

 だが………あと少しと言うところで盾が崩れ落ちる。


 クソッ! そぅ呟いた瞬間―――

 ララ達が俺の背後に構築しドワーフ族を守っていた”精霊結界”を広げ、俺と一緒に鬼神族をもその守りの中へと入れた。


 『キャ―――――――――ッ!!』 ララの悲鳴が聞こえる………


 ララ達が張った”精霊結界”は主天使(ドミニオン)が放った『御使いの天罰』に対抗するには、あまりにも心もとない物ではあったが、収束しつつあったその力を辛うじて防いでいた。


『グッジョブ! ララ』

 ララを見ると『どうよ! 褒めて! 褒めて!』と言いたげなララが俺を見ていた。


 ⦅フフ…… ララ達も無茶をする⦆ 俺はララに笑を返した。


 そして精霊結界が砕け散った時――天から落ちた光も既に収束していた。




 『御使いの天罰』を防がれ、俺の前には鬼の形相の主天使(ドミニオン)ハシュマルがいる。

 そして地上には生き残った多くのドワーフ族と鬼神族が『神様!』と必死に俺へと祈りを捧げている姿が見えた。



 ⦅か、神様って………!?  違うから……俺神様じゃ無いから!!⦆

 ⦅恥ずかしいから! 本当、俺に祈るの止めて欲しい………⦆



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