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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第二章 城塞都市・王都シャンポール
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第二章13 閑話 ララの王都の日常3

閑話 ララ目線になります。


 門をくぐりマディラ、ポート、トウニーの三人と庭を歩く。

 少しドキドキの私とは対照的に、三人は邸内の様子にはしゃいでる。


「本当に噂通りだ 凄い凄い――! 花が咲き乱れてきれい〜。 ほかの屋敷と違い生命力が溢れているわ!」

「あ、あそこ! 飛んでいるのエレメントの精霊様じゃなくて!?」

「ほんとだっ! あっ……あそこにも」

「エレメントの精霊様、ポワポワしてて可愛いよね〜 私大好き」

「ララはこの光景毎日見られるのね、羨ましいわ〜」


「この結界の中はディケムの術式でマナが溢れているの。 だから植物は生命力に溢れ、精霊様が目で見えるくらい活性化しているらしいの」


「ホント……凄いわ。 ねぇララ、花が咲き乱れて精霊様が遊んでいるのは可愛いけど…… ソーテルヌ様が行う事だしそれだけじゃない何か意味があるのでしょ? ……何故なのか聞いても良い?」


 (さすがマディラ…… 可愛いって思うだけじゃなくて、その意味も知りたくなるのね)


「このマナで満たされている一番の理由は、契約している精霊様の力が増すらしいわ。 そしてそれは私達人間も同じ。 もし此処で訓練すれば外よりも格段に成長が速くなるらしいのよ」


「えっ! そんな事できるの? でもそんなのどんな理屈で……」


「う〜ん。 イメージ的には、いっぱい訓練した後沢山お肉食べると筋肉の成長が速くなる……みたいな感じらしいのよ」


「…………」「…………」「…………」


 (三人とも黙っちゃったけど、ちょっと例えが脳筋だったかも……)

 

「だ、だから魔法の練習とかにもここで行えば良いらしいのよ。 ねぇ訓練場があるから一緒にどお?」


「い、いいの? 初めてきたばかりなのに私たちも使わせてもらって?」


「ディケムからOK貰ってるから大丈夫。 さぁいきましょ!」



 私はマディラ、ポート、トウニーの三人を連れて広大な屋敷敷地の西側奥へ向かう。


「ねぇララ。 訓練場って門を入って直ぐ西側に広い場所あったけど…… そこじゃないの?」


「うん、そこも結界内だから普通の訓練場よりは凄いらしんだけど…… これから行くのはディケムの特別訓練場。 ディケムにお願いしたら特別に三人も連れて来ていいって」


「わぁ~ 特別訓練場ってソーテルヌ伯爵様専用って事よね? ねっ!?」


「う~ん…… 伯爵様専用とかって聞くと素敵に聞こえるけれど…… もっとこう…… 実用的な場所よ。 あまり素敵な場所を想像しないでね。 ある意味関係者以外立ち入り禁止だけどね」


「えっ???」


「えとね、説明してから連れて行かないとビックリしちゃうと思うから言うけど、正直私も良く解っていないのよね……」


「なにそれ……?」


「みんな、固有結界って知ってる?」


「本で読んだことはあるわ。 結界内に術者の心象世界を作り出すとか…… 魔術書にはその記述だけは載っているけれど、呪文も何も分からない絵本に載っている絵空事のような魔法……」


「……だと思われていましたけれどアルザス戦役でソーテルヌ伯爵様がデーモンスライムの将軍を倒す為に再現なさったと聞きました。 魔法省が大騒ぎしていたと聞き及んでいます」


「そうそう、アルザス戦役でソーテルヌ伯爵様が使われた数々の魔法は、魔法省の偉い方でもどれも知らない魔法ばかりだったと…… すごいよね!」


「みんな…… なんか私より詳しくない?」


「そりゃそうよ! ララはソーテルヌ伯爵様の近くに居すぎて、その凄さを理解できていませんわ! 普通ならお会いする事すら叶わない方ですよ」


「私なんて今日ソーテルヌ伯爵様の屋敷に行くって言ったら、必ず繋がりを作って来いと家族総出で応援されて見送られたわよ」


「………こ、怖いわね。 あぁ話がそれたわ訓練場の話。 ようはこれから行く訓練場はその固有結界で作られているの」


「ッ――えっ!?」


「なんかディケムの説明ではね、固有結界内はここよりさらにマナ濃度を上げてあって、結界内は心象世界になっているらしいの。 この中で起こることは一つの幻想でしか無いんだけど…… マナ濃度が上がり幻想が現実の(ことわり)を上書きするとか……」


 三人の頭の上に『?』が見える…… 

 そりゃそうだ、自分が理解できていないのに説明されたお友達が理解できるはずもない。


「ようは、この結界内の夢の世界で鍛えるとものすごい速さで上達する! そしてその夢を現実に上書きしてしまい、本当の事にしてしまうんだって」



 説明している自分ですら良く解らないまま、特別訓練場の近くまで来る。


 特別練習場はソーテルヌ伯爵邸の西に位置し、実際の広さはテニスコート程度。

 しかしそこは精霊イフリート様の固有スキル【固有結界】を固定化して作った練習場だ。

 空間がねじ曲がり中に入ると二キロ平方メートルほどの広さになっている。

 外から見ると大きな水槽のように見え、中はゆがんで見えて不思議な感覚だ。


 訓練場から微かに訓練している音が聞こえる。

「多分、この前話した幼なじみが練習しているのだと思う」


 みなで恐る恐る中に入ると…… 中は途方もなく広い。

 みな『うそ!』と目を見張り固まってしまった。



 特別練習場ではディックが火炎球(ファイア・ボール)を連射して、ギーズが青魔法の火炎の吐息(ファイア・ブレス)を使っている。


 ⦅ギーズはこの前までは火炎の吐息(ファイア・ブレス)まだラーニングしてなかったはずなのに…… いつの間に習得したのかしら? 学校始まるまでがんばっているのは私だけじゃない⦆


 そして…… ディケムは寝そべりながら本を読んでいる。


 ⦅ディケムはくつろいで見えるけど、寝ている時ですらマナの訓練をしている。 あの姿に安心してサボっちゃうと、いつの間にか差が開いちゃうのよね⦆


「みんな~。 昨日話したお友達連れてきたよ」



「ソーテルヌ伯爵様。 本日は訪問許可を頂きありがとうございます」

 マディラが代表して貴族らしく挨拶をする。


「うん、いらっしゃい。 僕の事はディケムで良いよ。 学友になるのだし…… それにね、僕はもともと平民の出だからね」


 なぜか三人が『キャ~』とはしゃいでいる……


「で、ではディケム様……」

「様はいらないのに」

「いえ、様だけは付けさせてください。 今日は私たちもこの場所で訓練させていただいて宜しいのですか?」


「もちろんだよ。 この場所はね、みなさんが来ると聞いたので、これからも皆が訓練できるようにイフリート、ウンディーネと考えて作った心象世界を組み込んだ特別な固有結界なんだよ!」


「ここは凄いよ! 普通の場所より三倍は早く成長できるはずだから―――………」


 ディケムが色々説明してくれたけれど、結局私達には『??』が増えただけだった。

 でも『普通の場所より三倍は早く成長できる』これだけ理解できれば十分!

 みな興奮して訓練を始めだす。


 ディケムは説明した後、休憩スペースに皆のお茶やお菓子を持ってきて並べている。

 そしてまた草に寝転んで本を読みだした。


 ⦅隣でクレープ食べているウンディーネ様がカワイイ………⦆



 マディラ達三人は、ここに来るまではディケムと話す事ばかりを考えていたけれど……

 結局今は練習場の凄さにディケムそっちのけで『ああでもない…… こうでもない……』とワイワイ騒ぎながら訓練に没頭していた。


 でも、むしろその方がディケムには好感触だったみたい。



 私たちがミドルヒールに没頭していると、先ほどまでクレープを食べていたウンディーネ様から指示が出る。


 ⦅よかった、ウンディーネ様もマディラ達の事気に入ったみたい⦆


「ヒール練習組、そこに並べ!」

「「「「はいっ!」」」」


「ララ、お前は魔力の出力にバラツキがある、たえず一定の出力を心がけよ」

「はい!」


「ポートとやら、お前は魔力に余計なものが混ざっておるのぉ、集中できていない証拠じゃ」

「はい!」


「マディラとやら、お前は発動が遅いため出力が落ちるのじゃ、早く発動させる事を心がけろ」

「はい!」


「トウニーとやら、お前はまだ魔力量が足りぬ。ここでひたすら魔法を使い続け、わざと魔力を枯渇させ回復と枯渇を繰り返し魔力量を増やすのじゃ」

「はい!」


 自分たちでは何が悪くて上達できなかったのか分からなかったのに、ウンディーネ様から的確に各々の足りない所を指摘され、みな驚いている。

 ここには最高の教師も居るのだ。


「「「「ご指導ありがとうございます――!」」」」


 そして今度はディケムが休息スペースに魔力回復薬を並べてくれている。


 三倍経験値増しの固有結界と精霊様の的確なアドナイス、潤沢な回復薬で今日一日だけでも四人ともかなり上達した。



 時間が経つのは早くいつの間にか夕方になる。

 皆訓練を終え、休息所に用意されている紅茶、コーヒーと甘いものに舌鼓を打つ。


「ディケム様…… あ、あのつい訓練に夢中になってしまい…… 申し訳ありません」


「ん? むしろみんなララと仲良くしてくれて感謝しかないよ。 訓練もみんな真剣で素晴らしかった。 頼んでも人には教えないウンディーネが自分からアドバイスする程だからね」


「フン! ララの友達じゃからな…… 放っておくと見当違いな努力ばかりするものじゃから、つい口を出したまでじゃ」


「ウンディーネも気に入ったようだしまた訓練に来ると良いよ。 僕が居ない時でも君たちなら自由に使ってくれていい。 だけれど僕、ララ、ディック、ギーズこの四人だけにこの固有結界の使用権限を与えているから、使いたいときは必ず誰かと一緒にね」


「「「はいっ! ありがとうございます」」」



 私達四人は入学式まで教会の講習会とこの特別訓練場での訓練を毎日一緒に繰り返し、魔法を熟練させミドルヒールまでは習得し友情も育くんだ。



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