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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第8章 マグリブの地 ドワーフ王朝の落日哀歌
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第八章15 人族・ドワーフ族 会談2

 

「鬼神族との大規模な初戦に敗退したドワーフ族は、その後の戦いも連戦連敗でした…… なぜなのでしょう? 我々のゴーレム部隊はそれ程弱いとは思えないのです。ですが鬼神族が強すぎるのです! ……それでも我々は二年間鬼神族と戦い続けました。 ですがもう……これ以上戦う事は難しく我々の軍事崩壊も直ぐそこまで来ています。 ですからこの度、人族の皆さまにドワーフ族の保護をお願いに参ったのです」



「もし我々ドワーフ族を保護して頂けるならば…… 我々ドワーフ族は人族への従属を約束致します。 我々ドワーフ族は種族として鍛冶を生業としています。 その力を存分に人族の為に使う事を誓います。 ですが……奴隷として戦争に使う事はお許し願いたい。我々は元来戦う事を望む種族では御座いません」


 ドワーフ族の鍛冶の力を手に入れる事は、種族として非常に大きい。

 鬼神族の狙いもソレが大きいのでは無いかと俺は思う。

 ドワーフ族を従属下に置いた場合、兵士として使い潰すより、鍛冶師として働いてくれた方が利は大きい筈だ。


「そして…… 人族への従属の証として、わたくしマリアーネ・バーデンは人族領盟主シャンポール陛下の元へ側室として参りましょう」


「ッ―――なっ! マ、マリアーネ王女殿下!」


 マリアーネ王女が口にした言葉にベルハルト将軍が驚いている!

 『従属の証に側室に入る』要は人質としてその身を捧げると言う意味だ。

 潔白に育てられて来た王女には死よりも辛い選択かもしれない。


 しかしこの種族間戦争に明け暮れたこの世では、敗戦種族の王族が敵国に落ちれば禍根を残さぬよう斬首される事が多い。

 もしマリアーネ王女が鬼神族に落ちれば、自分の身は汚され死を待つ他ない。

 マリアーネ王女は無駄な死よりも、屈辱でもドワーフ族の民を守る為に自分の身を捧げたいと申し出のだ。


 このマリアーネ王女の決断は、ドワーフ族国王ザクセン・バーデン陛下の意思でもあるのだろう。

 だからこそマリアーネ王女を使者として送られたのだ。

 そして当の陛下ご自身は、この戦争で命を落とす事を確信しているのだろう。


 これによってドワーフ族の決意は確かめられた。

 我々人族もドワーフ族に誠意をもって当たる事とする。



「マリアーネ王女殿下、私はシャンポール陛下の名代としてここに参りました。 殿下のお覚悟に答え、ドワーフ族民の保護に尽力する事を誓いましょう」


「あぁぁ……ありがとうございます」


「我々が提案できるドワーフ族の移住地は、バーデン陛下もお気づきの……精霊アウラが作った地下迷宮の中にある場所。 他種族が共存して暮らすウォーレシアという地になります」


「あぁぁ……陛下がおっしゃった他種族が仲良く暮らす国が地下に有ると言うのは本当なのですね? 正直……その話を聞いた時はこの世界にその様な場所が有るはず無いと、夢物語だと思っておりました」

 マリアーネ王女は高揚し、ベルハルト将軍は目を見張っている。


「精霊アウラは、王祖バーデン様と王祖シャンポールの友人でした。 その子孫であるあなた方を受け入れる事を快く良く承諾してくれました。 そして現在ウォーレシアの地を治めるリザードマンの王ヴィラドルジャ陛下も、ドワーフ族の街をウォーレシアの地に作る事を承認してくれました。 この地は地下と言う事も有り鉱石が潤沢に採れ、あなた方ドワーフ族にとってとても暮らしやすい場所だと私は思います」


「ありがとうございますソーテルヌ様、感謝の言葉も御座いません。 それでそのウォーレシアと言う場所にはどのようにして我々は行けばよいのでしょうか?」


「マリアーネ王女。 先程も言いましたがウォーレシアは地下迷宮の中に有る都市、そしてこれはウォーレシアの民を守る為にも正確な場所はお伝え出来ません。 さらにウォーレシアへと至る迷宮は今はSSランク以上の難易度の為、普通に目指してもたどり着けないでしょう。 ましてや万を超えるドワーフ族の民を全てとなれば尚更です……」


「で、では……我々はどのようにすれば?」

「転移魔法を使ってウォーレシアへ飛ばします」


「転移魔法ですか? ですがそんな高度な魔法を…… もし使えたとしても万を超える民全てを転移させるなど不可能では御座いませんか?」


「はい。 通常の方法なら無理でしょう。 ですがそれを出来る様に致します」



 俺はこれからの計画をこの場の皆に説明した。


 まずこのポートブレア南東の人族領側、城外の広大な平野に難民キャンプ地を作る。

 そこには難民がしばらく生活できるよう、水の確保、支援物資の貯蔵庫、トイレ、病院施設、警備兵詰所も揃えたい。

 数万以上のドワーフ族難民が押し寄せたら、ポートブレアだけで収まるはずが無い。

 そして地底都市ウォーレシアへ送るなら、鬼神族に邪魔されず、しかも広い場所が確保出来るこの場所から転送を行った方が良い。


 これから暫くソーテルヌ総隊の魔法師には俺が設計した繰り返し使える『設置型の転送魔法陣』を構築してもらう。

 簡易的に地面に描いた使い捨ての魔法陣などではない。

 魔法効率を最適化し、一度に出来るだけ多くの人数を転送させられ、術者の負担を最小に軽減した魔法陣だ。

 今回、数万以上のドワーフ族を全員転移させなければならない。

 それには膨大なマナを必要とし、何度にも分けて数日間かけて行う必要がある。

 魔法陣を描くのもそれなりの魔力と労力が必要となる、術師の負担は計り知れない。

 しかも現状この転移魔法陣を単独で起動できるのは、俺とラトゥール、ララの三人だけだ。

 普通の魔法陣を使っていては不可能と言える。

 それを可能にするのが『設置型の転送魔法陣』という訳だ。



 そして俺は転送魔法陣と難民キャンプの話を終えた後、ドワーフ族ポートブレア太守のブルク・ベルリングに北の城壁を強固に改修する事を依頼した。

 俺は街を歩いて気づいた事がある。

 ポートブレアの城壁は元々ドワーフ族が作った物だ。

 その為人族領に面する南の城壁は堅牢に出来ているが、自領ドワーフ族領に面する北の城壁の方は堅牢さに欠ける。

 だが今回難民を人族領に逃がした後、鬼神族と対峙する最終防衛ラインはこの北の城壁となるだろう。

 この城壁での戦闘が激戦になる事は確定と言える。



 その後も細かい打ち合わせを終わらせ今日の会合は終わった。


 今日ここに――

 人族はドワーフ族の救済を行う事を誓い、ドワーフ族は人族に従属する事でその保護を受ける事を確約した。






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