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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第8章 マグリブの地 ドワーフ王朝の落日哀歌
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第八章9 城塞港湾都市ポートブレア

 

 人族領とドワーフ族領、その領土境界線上には海から続く長く連なった、石造りの見事な城壁がある。

 この城壁は一夜にしてドワーフ族が作り上げたと伝承が残っているが、流石にこの規模の城壁を一夜と云うのは信じがたい。

 だがドワーフ族は土魔法を得意としている。

 人族が気付かぬ間に、いつの間にか作り上げていたと言う事だろう。


 そしてその領土境界線上の城壁には、その城壁に囲まれた一つの街が有る。

 海に面し、強固な城壁に囲まれた城塞港湾都市ポートブレア。


 ボーヌ領に伝わる伝説では……

 仲が良かったドワーフ族と人族だったが、神の審判により袂を分かれドワーフ族は強固な城壁を築き人族と別離した。

 しかしドワーフ族の心にはまだ人族との友情が少し残っていた。

 その遺憾の念からポートブレアが作られたという。


 城塞港湾都市ポートブレアはモンラッシェ共和国と同じ自由貿易都市、他種族が共存している街となる。

 だがここは複数の種族領土と隣接しているモンラッシェ共和国とは違い、人族領とドワーフ族領だけが隣接した小都市、しかし海が面している港湾都市のため海洋航路から様々な種族が商いに訪れ栄えているという訳だ。


 その城塞港湾都市ポートブレアの自治は、モンラッシェ共和国の様に独立した国家では無く、ドワーフ王国とボーヌ王国から大使が赴任し共同統治となっている。



 そして鬼神族もこの商業・流通の要衝ポートブレアには手を出してこない。

 自由貿易都市と言う商人の街は力で支配する事が難しいからだろう。

 特にここポートブレアはモンラッシェ共和国の様に多くの種族の領土線と接しているわけでもない。

 長い年月をかけ人族とドワーフ族の商人が築き上げた信頼のもと、他種族の商人が海洋航路を使い来てくれるようになり栄えた町と言える。

 もしこの街を軍事力で占領した場合、壊した建物は直すことは出来るが、壊れてしまった流通や信頼は取り戻す事が難しい。

 商業都市としてのポートブレアが欲しければ、それを管理している国、家主に取って代わった方が効率的だと言う話だ。

 商人たちにとって自由に商いが出来れば、街を管理している大使が誰でどの種族だろうと、あまり変わりは無いのだから。



 そう。だからこそ――

 今回のドワーフ族難民の亡命は、まずはこのポートブレアに難民がたどり着く事が最初の目標となる。

 ポートブレアを抜ければ人族領。人族領に入れば人族と鬼神族が大規模な戦争に突入しない限り時間は稼げる。

 ゆっくりとシャンポール王国、地下世界ウォーレシアへと向かえばいい。

 いくら鬼神族と言えども、その場の突発で人族と種族間戦争に突入する事は無いだろう。



 明日のドワーフ族の使者との会談は、この城塞港湾都市ポートブレアで行われる事になっているそうだ。

 俺達は一通り説明を受け、明朝アルバリサ女王に随行するメンバーを決める。

 まぁ……俺とララ、ディック、ギーズの四人だ。

 俺達は出来ればそのままドワーフ族の使者に付いてドワーフ族領に潜入したいと思っている。




 明日からすぐドワーフ族領に潜入しても良い様に、旅の準備を整えて置く。

 ラトゥールとも、人族領に残る領土線防衛部隊と支援物資の搬入などの打ち合わせをしておく。

 準備途中アルバリサ女王が訪れた際、側近のゴードルフとポートブレア大使とラトゥール率いる領土線防衛部隊との連携についても打ち合わせて置いた。


 余談だが……

 アルバリサ女王から『本当はディケム様達がボーヌ王国へ到着した際に(うたげ)を催したかった』と打ち明けられたのだが、今日はドワーフ族の使者との大切な会談の前日。

 また明日のポートブレアへの出立が夜も明けぬ早朝と言う事で、主要人物の準備が忙しく(うたげ)の時間が取れないと詫びを入れられた。

 まぁ俺達が情報収集の為、使者との会談日ギリギリまで到着日を遅らせたのが悪いので自業自得なのだが、正直俺達も明日からの潜入準備が忙しく(うたげ)どころではなかった。




 そして翌日、城塞港湾都市ポートブレアへは日が昇る前の暗闇の中の出立となった。

 俺達はワイバーンに乗れば一足飛びでたどり着くことも出来たのだが、目立った行動は控えるべきと馬を用意してもらい、アルバリサ女王の護衛騎士と一緒に行動を共にする事となった。

 護衛騎士と言っても、騎士も俺達も目立たぬよう冒険者風の粗野な出で立ち、アルバリサ女王も商人のお嬢様風で見かけは普通の馬車に乗り込む。

 支援物資を商人の商品に見立て、俺達は馬車と積み荷を護衛する、雇われ冒険者を装った。

 恰好を重んじる貴族が多い騎士達は可哀そうだったが、元々平民だった俺達には持ってこいのシチュエーションと言えた。


 ボーヌ王都を出立し馬車で海沿いの街道を五~六時間ほど南へ行けば城塞港湾都市ポートブレアに到着する。

 道中トラブルもなく、俺達は予定通り午前中には街にたどり着くことが出来た。


 ポートブレアの入城にも事前にアルバリサ女王が来る段取りがしっかりされており、『お前は本当に商人か?』などとお決まりの手違いイベントが起きる事も無かった。

 支援物資はポートブレア人族大使館に納入商品として納められ、シャンポール王国から運んできた難民用支援物資は無事保管庫に収められた。


 その後俺達は城塞港湾都市ポートブレア人族領大使テオドル・バハーク卿と挨拶を交わし、この後到着するラトゥール率いるソーテルヌ総隊、その後来るラス・カーズ将軍率いるシャンポール王国騎士団の駐留手筈を打ち合わせた。



 その後俺は午前中。

 少し無理を言ってドワーフ族使者との会談前に予定していた打ち合わせを全て済ませ。

 夕方の会談前に強引に自由時間を作った。


 そしてその自由時間を使い、

 ララ、ディック、ギーズと四人でポートブレアの街散策をする事にした。





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