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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第二章 城塞都市・王都シャンポール
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第二章11 閑話 ララの王都の日常1

閑話 ララ視点になります。


 サンソー村を出て、一カ月半ほどの冒険旅を終え。

 今日、ディケム達と王都に到着した。

 私達が入学する魔法が始まるのは二ヵ月後。それまで入学に向けての準備をする。


 私達がこれから王都で住む家はディケムが爵位の恩賞として国王様からもらったお家。

 ディケムが『家広そうだから冒険者パーティーのホームみたいに皆で住もうよ!』と言ってくれたから皆で盛り上がってディケムに甘える事にした。



 ディケムのお家を探してる途中。

 ディケム達があの時のキレイな魔神のお姉さんラトゥールさんの話になった。


「ラトゥールさんね、あの日から毎日電話が掛かってきたから、魔法メールにしてもらうことにした」


 ⦅ちょっと! ま、毎日連絡来るですって? わたし何も聞いてないわよ!⦆


「でも正直、魔神軍のしかもあの五将の一人から情報もらえるのって凄い事だと思う」

「うん。 俺もそう思うから毎日メールは返すようにしている」


 ⦅えっ? えぇええええ――! ディ、ディケムも毎日メール送ってるの!?⦆


  そんな…… ブツブツ言ってたら怖いって言われた…… ヒドイ



 住所の番地を見ながら家を探していくと――

 高い壁に囲われた今までの街とは一線を隔す、特別な雰囲気の貴族街へと続く門に来てしまった。


 ⦅えっ? ディケムが貰ったお家って……この貴族街の中に有るの?⦆

 ⦅うそっやった! お家小さくても良い。 わたし夢だったのよね、こんな所に住むの⦆


 私以外のメンバー皆、場違い感を醸し出して目立たないように貴族街を歩いていく。

 そしてたどり着く、私達の夢のマイホームに!


 ⦅居候だけどね……⦆



 屋敷では盛大にお迎えしてもらい。

 ラスさんラローズさん王国騎士第一部隊の人たちと久しぶりの再会に歓喜した。


 そして始まったディケムの【いにしえの大魔術、二柱精霊結界】……


 うんこれヤバイ、やる前に各所に通達しないとダメなやつでしょ!?

 さすが『いにしえの』とか言うだけある…… 案の定王都全体が大騒ぎな感じになってしまった。


 でも、最高のセキュリティと最高のマナパワースポットになったから、住む私達としては最高な環境が整った。

 大人の事情的な事はディケムと大人たちに任せましょう。



 結界を張ってから、この屋敷の敷地内だけ生命力に溢れ花が咲き乱れ、そして一番の問題はマナ濃度が強すぎて精霊エレメントがそこら中にフヨフヨ浮いているのが見える。

 私とラローズさんは『カワイイ~』と大喜びしたけど………

 軍の人たちは異常事態にどう対応していいか分からなくて困っていた。


 さらにこの屋敷だけ防御が凄いので、ディケムは王様から王城にもこの結界を張ってほしいとお願いされてたみたい。

 だけどウンディーネ様から…… 

 『王城には、良くも悪くもいろいろな思想の持ち主が集まって成り立っている。 敵意をすべて排除してしまうと国の政を行えなくなるじゃろう……。』と諭され諦めたらしい。


 国はすべて善では回っていかない、悪も必要なのだとか。

 大人って難しいなと思った。

 ウンディーネ様が王様に『大事の時はこの屋敷に来ればよい』と言っていたけど。

 王城より安全な屋敷って…… 恐るべし!




 少し町に慣れてきた頃。

 魔法学校が始まるまでは、私達は各自で自分の好きな事をするようにした。

 勉強しても、遊んでも、趣味に時間を使っても何しても良い。


 ディケムは相変わらず本の虫。

 まいにち町の図書館や本屋を歩き回っている。

 でもディケムは地味な格好して町中歩いているけど……

 いくら目立たないようにしていてもウンディーネ様が肩に乗っているだけで目立つのよね。

 最初はごまかせていたけど、やっぱり人形と本物の精霊様じゃ違うから。

 しかも、キラキラ光るきれいな精霊珠が十二個も回りを回っていたら、隠れるほうが難しいと思うよ。

 修行だからしょうがないけどね。


 私は本当はディケムと一緒に居たいのだけど……

 そんな悠長なことを言っていたら、ディケムの傍に居る資格を失ってしまう。

 今のディケムは英雄、伯爵様、精霊使い…… そりゃモテモテでしょ!

 一緒に冒険パーティー組みたい人はいくらでもいる。

 私がメンバーで居られるのは幼なじみだからという事だけ。

 がんばらないと。



 今日は王都の教会で開催している魔法講習会に参加する予定にしている。

 王都に初めて来たときにザクセンとシノニム兄妹から教えてもらった講習会だ。

 いつかディケムの隣に立っても恥ずかしくない大魔術師になる為、今日も勉学に励みます。


 白魔術師としての私が夢見る目標は――

 伝説の部類として話だけ聞く『甦生(リザレクト)』を習得すること。

 嘘か本当か『甦生(リザレクト)』は致命傷の怪我すら直せるとか。

 もちろん今の私には遠い未来の話。

 でもこれから魔法使いとしての一歩を歩みだすなら夢は大きいほうが良いでしょ。


 私の最初の目標はやっぱり回復魔法ヒールを極めたい。

 初級の回復魔法ヒール、中程度の回復魔法ミドルヒール。

 ここまでは覚えたけど…… 正直ミドルヒールはディケムの支援が無いとまだ失敗する。

 範囲回復のエリアヒールはまだ全く成功したこともない。

 戦闘中に『回復魔法を失敗したら……』なんて怖くて考えられない。

 もっと勉強しないと。



 教会の講習会に向かう為、意気込んでソーテルヌ伯爵邸を出たところで……


『こらっ! 使用人はこの門を使ってはダメだろ』と怒鳴られる。


 ⦅門番の人に使用人に間違われ怒られた…… 悲しい⦆


「あ……あのゴメンなさい。 これでも一応わたしソーテルヌ伯爵のパーティーメンバーなんです……」


「えっ! あ……ごめん。 あんまり地味なんで分からなかったよ」

 ⦅………。 謝られてるのにディスられた。 泣きたい……⦆



 走って貴族街を抜ける。

 ソーテルヌ伯爵邸にも何台か馬車は有る。

 ディケムからは有難いことに自由に乗ってくれと言われている。

 最初はみんなでワ~ワ~喜びながら馬車に乗って町中回るのが楽しかったけど。

 でも落ち着いて日常生活に戻ると……

 『歩いて鍛えないとダメかな』と皆自然と歩きに戻っていった。



 今日の講習は東の教会で行われる。

 貴族街から五キロほどの距離になる。

 賑やかな東のマーケットを抜け橋を渡ると教会が見えてくる。

 私はこの橋から見る教会とお城が大好き。


 教会に着くと最初に受付を済ます。

「あの、講習会に申し込んでいるララと言います」


 受付けのシスターが予約表の名まえをチェックする。

 その間、私は横に置いてある募金箱にお金を入れる。

 お金はサンソー村にいるときから、精霊使いのパーティーメンバーとして国から給料を支給されていた。

 そしてディケムがアルザス戦役に勝利したとたん、その金額がググっと上がった。

 実家に仕送りしても裕福な生活が送れるくらいもらえている。

 どこまでもディケムにおんぶにだっこな自分が悲しくなる。


 講習用の席に着くと前回の講習でも一緒になったマディラさん、ポートさん、トウニーさんの三人の姿が見えた。

 前回少しお話しできたから、今日はもっと仲良くなる為に話してみようと思う。

 多分三人とも私と同じ今年魔法学校に入る新入生だと思う。

 今後私が充実した王都ライフを過ごすには、女の子のお友達作りは大切だよね!


 今日、私が申し込んだ講習会はもちろん回復(ヒール)系魔法。

 講習会の前半は回復(ヒール)魔法の原理、使い方、応用を講義で聞き、後半に実技になる。

 講習会は初歩のヒールの練習をする人が多いい。

 私が練習するのはもちろんミドルヒールだ。


 そしてマディラさん、ポートさん、トウニーさん達も同じミドルヒールの練習をしている。

 私はチャンスとばかりに三人に話しかけ、練習をご一緒させてもらった。

 

 三人はまだミドルヒールをほとんど成功できないでいる。

 私もやっぱりディケムの支援がないと成功率五〇%くらい。

 前回の講習会の時と同じ四人で『あぁじゃない!』『こうじゃない……!』と

 キャ―キャ― ワァ―ワァ― 研究しながら訓練しました。


「ねぇみんな、二日後に今度は西の教会で講習が有るみたいよ!」

「やった! 私も参加する~」

「私も~ 学校入学するまでにミドルヒール完璧にしたいのよね」

「うんうん。 学校には人族同盟の五大国からもたくさん習いに来るからもっと頑張らないとね」

「うん。 きっと凄い人たちがいっぱい来るわよね」


 マディラさん達は、この教会講習会では誰よりも優秀だけど。

 魔法学校には小さい頃から家庭教師を付けているエリート貴族の学生がたくさん集まってくる。

 私達も井の中の蛙にならない様頑張らなきゃ。


「そうだ、ねぇララ。 私たちこの後お茶しに行くけど…… あなたも行かない?」


 ⦅おぉ お茶の誘いだ! これは……ただの知り合いからお友達になれるチャンスよね⦆


「行きます! ありがとう」


 ⦅私の王都最初のミッション。 王都にお友達を作るのです!⦆




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