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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章98 閑話 契約の儀1

 

 ララと月龍ククルカンの戦いからしばらくたったある日。


「ねぇディケム。 ちょっといい?」

「どうしたララ?」


「それが…… 先日フュエ王女達と川沿いのカフェテラスでお茶した帰り、街でラローズ先生を見かけたの」

「ほぉ……それで?」

「うん。 それでラローズ先生が病院に入って行く所を見てしまったのよ」


「ラローズ先生が病院に?」

「うん」

「怪我とかなら総隊の医療班に見て貰った方が良いしな」

「うん。 だから…… 何か病気でも抱えてるんじゃないかと思って。 先生この頃体調悪そうだったし、昨日は総隊の訓練もお休みされたでしょ?」

「なるほど……」



 ララとそんな話をした翌日の学校の放課後、俺はラローズ先生に呼び出された。


「ディケム君、呼び出してゴメンなさい。 ちょっと総隊では話し辛い事だったから、まずはディケム君に相談してからと思って」


 ⦅やっぱりラローズ先生、体のどこかが悪いのか?⦆

 ⦅俺が力になれる事なら良いのだけど……⦆


「何でしょう?」


「うん。あの…… ソーテルヌ総隊の精霊部隊、そろそろ他の皆にも精霊様との契約をさせて欲しいの?」


「はい。それは確かに俺も思っていました。 少し切迫した事態から解放された事で、先延ばしになっていたかなと。 どちらにしろ今後の人族の事を考えると、契約しない選択肢は無いですからね」

「うん。 それで…………」

 そこでラローズ先生の会話が止まってしまう。


「…………? それで?」


「ご、ごめんなさい。 それで精霊部隊の隊長をしばらく副隊長のラモットに引き継ぎたいの」


 ⦅っ―――!!! やっぱりララの言ってたこと……⦆


「先生…… やっぱり体どこか悪いんですか?」

「ッ――! やっぱりって…… ディケム君知ってたの?」


「いやララが先日、先生が病院に入る所を見かけたって」


「…………。 そぅ…見られちゃったんだ」

「先生。 俺に出来る事が有るなら――……」

「――なにも無いわ!」


 ⦅それほど悪い病気を患っているのか?⦆

 ⦅ラス・カーズ将軍は何も言っていなかったぞ!⦆

 ⦅軍人だからって俺に遠慮でもしてるのか?⦆


「ラローズ先生! 先生は総隊では部下ですが、俺にとってはサンソー村からお世話になっている恩人なんです。 軍の規律とか道徳的規範とか言ってないで俺に頼ってください。 先生の病気を治せるなら、俺に出来る事何でもしますから!」


「…………。 ディケム君」

 ラローズ先生はしばらく黙ってしまった。


 そして―――

「ディケム君…… 何か勘違いしてない?」


「勘違いって。 ラローズ先生は大病を患っていて――……」

「違うから!」

「えっ? で、でもララが――……」

「私が入った病院って産婦人科よ! もぅララさんもそそっかしいんだから……」


「……へ?」


「こ、子供が出来たのよ…… ほ…ほら私も、もう良い歳でしょ? だから最後のチャンスかなって……」


 ラローズ先生が耳まで真っ赤になって―― そう言った。


「お……おめでとうございます!!!!」

「あ、ありがとう……」


「皆を集めて盛大にお祝いしましょう!」

「ちょっ……ちょっとまって! まだ安定期じゃ無いから……私、いい歳だし……もう大丈夫ってお医者様に言われるまでは、出来るだけ秘密にしておきたいの。 せめて教えるのはあなたの幼馴染くらいまでにして……」


「えっ? ですが安定期って…… たしか四ヵ月位からじゃないですか? 総隊の訓練も有りますし、隠すの難しくないですか? 俺達みたいに勘違いして変な噂が隊員に広がっちゃいますよ?」


「…………。 やっぱりそう思うわよね、ラスにも同じ事言われたわ」


「ちなみにラスさんは、どんな様子だったんですか? 子供の事を聞いて?」


「それはもう~ 泣いて喜んでくれたわ」

「それは良かったです。 喜ばなかったって聞いたら俺、殴りに行こうと思いました」


「フフありがとう。 だから私はこれを機にグリュオ伯爵家からカーズ名誉伯爵家へと正式に嫁ぐことになったわ。 もともとグリュオ伯爵家は弟のカミュゼが継ぐ事になってたからね。 問題は子供が男の子だった時、名誉貴族は襲爵(しゅうしゃく)出来ない事かな、女の子ならいい嫁ぎ先を見つければ良いけどね」


「大丈夫ですよ。 お二人が正式に夫婦になって尽力すれば、カーズ名誉伯爵家はすぐ世襲貴族に陞爵(しょうしゃく)できますよ」

「まったくあなたは…… あなた達サンソー村組はポンポン出世して、直ぐに叙爵(じょしゃく)だの陞爵(しょうしゃく)だのしちゃってるけど、本当は爵位なんてそう簡単に貰えるものじゃ無いのよ。 貴族と言うのは代々受け継いで来た爵位を、命を懸けて次代に継承するもの。その為ならどんな事でもするのよ。 だから貴族の命より重い爵位はたとえ陛下であってもそう易々と叙爵(じょしゃく)陞爵(しょうしゃく)出来る事じゃ無いわ。 まぁラスも元々貴族じゃ無いから、あなた達と同じ爵位に無頓着なんだけどね」



 申し訳なさげな俺の顔を見て『まぁ良いわ』とラローズ先生は笑い。

 『取り敢えず、私の気持ちが落ち着くまであまり話を広めないでくれると助かるわ』と言われその日の話は終わった。


 ラローズ先生が病気では無く、おめでたと言う事で一安心したが、精霊部隊の精霊との契約は急いだほうがよさそうだ。

 天使との戦いでも、やはり精霊部隊の火力が本命と言えた。

 今後さらに天使と戦う事になれば、精霊部隊の強化は最重要事項と言える。








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