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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章95 閑話 ララとククル4

 

 ―――ララ視点―――


 私は輝く大きな大河の様な何かの上を飛んでいる。


「ここは……何処? 私、死んじゃったのかな?」


「ララ。 お前はディケムの大切なピースじゃ、死なせはしない」

「あ…ウンディーネ様!?」


「安心しろ。 お前の体はお前が嵌めている指輪を通してディケムが守っている。 九尾も心配ない」

「で、でもディケムに手伝ってもらったら…… 月龍には認めてもらえない」


「そうかもしれないが、死んでは元も子もないじゃろ?」

「は…はい……」


「もともと支援系のお前がエンシェントドラゴンなどに一人で勝てるはずが無いのじゃ。 月龍も何を考えているのか…… と思ったが、神の呪いで狂っているだけかもしれんな」


 そこで……

 いつもの表情だったウンディーネ様の表情が変わる。


「ララ、そろそろ頃合いじゃ。 妾もお前に力を貸してやろう」


「………えっ?」


「お前は誰よりも…… ディケムの力になりたい、ディケムの事をもっと知りたい、ディケムと繋がりたい――と思っていたしな」


「ちょっ! ウンディーネ様、今ソレ言いますか!?」


「フフ。 さぁそろそろじゃ、もう妾とお前は繋がった。 行ってこいララ!」

「はい!」


 ウンディーネ様に送り出され、私は現世へと帰る。


 そこで、私はもう一度だけ輝く大河を見下ろした。

『これが…… ディケムが見ている世界』

 そんな事を考えていると―― 突然!

 輝く大河から、なにか魂のような物が私目がけて飛んできた。

 そしてその魂は私の前で少女の姿に変わり、一瞬『フフ』と微笑み私の中に入って来た!


『へ? なっ! ななななな何ですかッ―――!!! 今のは!?』とウンディーネ様を見ても…… もうこの世界から離れていく私にはウンディーネ様の言葉が聞こえなかった。

 ただ、ウンディーネ様が目を見開いている様に私には見えた。


 ⦅な、なによ? もぅ~ 今のは何なのよ―――!?⦆







 ―――ディケム視点―――


 ドッゴォォォォオオオオオオ――――…………!!!!


 ヤ、ヤバかった………

 今のは本当にヤバかった。


 シューティングスターが放った攻撃の質量がとんでもなかったので、俺はとっさにララに結界を掛けた。

 ⦅あとでララに怒られても、甘んじて受け入れよう⦆

 同時にディックとギーズには観客に被害が及ばないよう、壁状の結界を強化させた。

 ファフニール戦の時のように結界内に閉じ込めている訳では無いので、こちらの結界はあの時以上の強度が必要な訳では無い。


 俺達も観客と同じ壁状の結界の後ろに逃げ込んだのだが………

 今、目の前の光景はとんでもない事になっている。


「あ、あぁ…… ララが…… ララがっ―――!!!」


 至る所からララを心配する悲鳴が上がる。

『ディケム様! ララが――!!!』とマディラ達も駆け寄って来た。


『大丈夫だ!』とマディラ達には伝えたが……

 顔が笑っていなかったのだと思う、マディラ達がそれで落ち着いた様子が無い。

 正直俺もララの無事な姿を見るまでは安心できない。

 地形が変わる程の大惨事が目の前で巻き起こっている。

 その大惨事の中にララがいるのだから……


 俺はまさかこの状況下でシューティングスターがこんな攻撃を仕掛けて来るとは思わなかった。

 いや…… 仕掛けてくるはずが無かった。


 しかし俺はこの観客の中に…… 微かにあいつのマナを感じ取った。

 あの時『ブラン』の体で遭遇した人物、『アルキーラ・メンデス』のマナを。

 だから油断していた俺も咄嗟に異変に気付きララに結界を張ることが出来た。

 推測の域を出ないが、あのシューティングスターの突然な凶行はアルキーラ・メンデスが『何かをやった』と考えるのが自然だろう。


 今はもう、奴のマナは感じない。

 いや、正直不甲斐ないが……

 俺はララが心配でアルキーラ・メンデスどころじゃない。


 『絶対に大丈夫!』そう思いながらも……

 アルキーラ・メンデスが他に余計な事をしたのではないか?

 そんな不安が尽きない。



 破壊により巻き上がった爆煙と土煙が収まっていく。

 俺はララの姿を探す。

 もし怪我をしている様なら、直ぐにでも飛び出し戦いを止めさせるつもりだ。

 だが……

 爆煙の中から見えて来たララの姿は、俺の予想とは違った方向で上を行っていた。


「よかった~ ララ無事だよ!」

「うん! 怪我もしてないみたい!」


 最初マディラ達も純粋にララの無事な姿を喜んでいた。

 でも、ララの無事を確認し落ち着きを取り戻した所で、その異変に気付き始める。


「えっ……?」

「なに? どうしたのマディラ?」

「ポート…… あれ見て?」

「ん? なに? あっ……えっ?」

「ちょっ! マディラもポートもどうしたのよ?」

「トウニー、ほら見て! ララがルナ様、オネイロス様…… そしてもう一柱ウンディーネ様を顕現させてる!」


「「「っ―――!!!」」」


 ララは月の精霊ルナと繋がっている。

 そして夢の精霊オネイロスは召喚宝珠を使って顕現させていた。

 そこにさらに三柱目の水の精霊ウンディーネが今ララの側に居る。

 今までのララにはあり得ない事だ。


 ララが三柱目の精霊を顕現させられる方法は、可能性として二つある。

 一つはディックがモンラッシェ共和国で行った、二つの召喚宝珠を使うやりかた。

 だがこれは命に係わる為、俺は絶対に二つの召喚宝珠貸し出しは許可していない。


 そしてもう一つは……

 ラトゥールと同じ二柱目の精霊と繋がったと言う事だ。



 ⦅ウンディーネ、ララと繋がったのか?⦆

 ⦅そろそろ頃合いだと思ってな。 それにおかしな気配も感じたのでな⦆

 ⦅はい⦆

 ⦅ララはお前に無くてならないピースじゃ。 ここで死なす訳には行かない⦆ 

 ⦅有難うございます⦆

 ⦅礼を言う必要は無い。妾の主人はお前じゃ、お前の為に妾は居るのじゃからな⦆



 俺の隣でラトゥールがララを見て、目を見張りながらも口が笑っているのが見える。

 好敵手を見たような表情だ。


 するとディックとギーズも話し出す。

「またララに先に行かれたのかよ、折角追いついたと思ったのに……」

「さすがだねララは。 よっぽどディケムの事が好きなんだろうね」


 ⦅ギーズ、何故そうなる?⦆




 爆煙と土煙が収まっていくと、先ほどシューティングスターが起こした大破壊の一撃によって盆地の地形が変わってしまっている事がわかる。

 その光景に大勢集まっていた観客も言葉を無くしてしまっている。

 青々としていた草原は黒く焼け焦げ、その下の剥き出しとなった土壌は高熱により溶け結晶化し、未だいたる所で赤く燻っている。


 しかし観客はその凄惨な光景の中に、真白の九尾に乗った少女の姿を視認する。

 地獄の様に赤黒く焼けただれた地表と、そこに立つ白いローブを纏った少女

 その対比は劇的だった。

 まるでララが地獄に舞い降りた天使の様に見えたのだろう。

 両手を握り祈っている者さえ居る。


 そしてララへの大歓声が巻き起こる。







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