表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
453/553

第七章90 閑話 人族五大国同盟会合3

 

 結局、今日一番の激論となってしまった天使顕現における対策については、今の我々に結論を出すことは出来ない。

 それほど今の人族にとって天使とは大きすぎる存在だと言う事だ。

 議論する事は悪いと言わないが、結論の出ない事を長々と話し合うのも疲れる。


「この件に関しては我々も対策を考え、皆さんと情報を共有していきたいと思います」

 と話を終わらせる事にした。


 しかし対策は今後の課題だが、注意喚起はしておきたい。


「皆さんに知っておいていただきたい事が有ります。 私がなぜ今後も天使が顕現する可能性が有ると申し上げたのかを」


 その一言で、それまで騒ぎ立てていた各国のお偉方貴族が静かになる。


「皆さん『ルカ教』を御存じですか? もしかすると皆さんの中、もしくは身内にもルカ教に関わる方が居るかもしれません」


「そう言えば…… ソーテルヌ卿はルカ教を調べていましたね」


「はい。 此度のシャンポール王都への天使降臨は、このルカ教に洗脳を受けた幹部が引き起こした人災です」


「なっ――!!!」

「そんな馬鹿な!」

「とても信じられん……」


 会場に大きなどよめきが起こった。

 天使降臨と言う人族ではコントロール不能な災厄が、人の手によって引き起こされたと聞けば、誰しも驚く事だろう。


「ルカ教に関しては、核心となる事は一切掴めていません。 ですがこの教団には天使降臨をなす理念とそれを可能にする(すべ)を持っています」


 ここに集まった人たちは各国の重鎮だ。

 この人達から見ればルカ教など、今まではただの一宗教に過ぎぬと気にも留めなかった存在だろう。

 しかし宗教は恐ろしい。

 我々の知らぬ間に、徐々に根を張り浸食し、気づいた時には国と言う大きな大木をも腐らせ倒してしまう。


「お気を付けください。 我がシャンポール王国でも、いつの間にか多くの貴族が毒されフュエ王女に危害を及ぼす暴挙に出る程、強い洗脳を受けていました。 しかもルカ教は、人族に限らず他種族にも広がっています。 種族間戦争に疲弊した全ての者の心の闇に入り込んでいるようです」


「す…全ての種族に………」


「推測にすぎませんが、ジョルジュ王国事変で確認された神話級巨人も、ルカ教が関わっている可能性が有る……と報告を受けています」


「ッ――!!! そ、そんな馬鹿な………」


「私は、我がソーテルヌ総隊の諜報部に自信を持っています。 しかしその我が隊の諜報部が『ルカ教』の情報を掴めず、今回の事変では後手に回りました。 そして未だにルカ教の核心部に辿り着けていません。 決して一宗教だからと油断なされますな。 出来れば今後ルカ教に関してこの五大国同盟で協力し合って情報の共有をして頂きたい!」



 シャンポール王国からの報告は、『ルカ教』への警戒を各国に伝え、協力を要請する事で締めくくられた。




 そして最後、ボーヌ王国の報告の番になる。


 俺は少し申し訳ない気分になった。

 今日はアルバリサ女王とクレアス殿下のお披露目でもある。

 なのに、その前座の俺が一気に場の雰囲気を悪くしてしまったのは否めない。

 ホント、気が利かないの一言だ……



「あ……あのぅ…… ボーヌ王国の新女王に即位いたしましたアルバリサ・ボーヌと申します。 若輩者ですがどうぞよろしくお願いします」


 ⦅うん。 まったく威厳が無い⦆

 ⦅まるで学校の挨拶のようだ⦆


 だがまぁ、何とかこの五大国重鎮が集まる大舞台で新女王としての挨拶は済ます事が出来た。

 そしてその初々しさのお陰で、逆に各国皆の印象は良い方向に転び、良いイメージを持たせることに成功した。


 これで一先ずアルバリサは大丈夫だろう――

 そう思った矢先、マルサネ王国から声が上がった。


「アルバリサ女王! 私はマルサネ王国王子コートと申します。 王子の身分で女王陛下に意見する事は不敬とは存じますが、この五大国同盟会合での決まり事として『身分の上下無き忌憚なき意見』が許されています。 この場で聞かせてください。あなたには姉のポマール王姉殿下がいらっしゃいます。 ポマール殿下は次期女王として育てられてきました。 それなのに何故あなたが女王として即位なさったのでしょうか?」


 突然始まったコート王子の質問に、姉のシャントレーヴ殿下が口を挟む。


「コート! いくら忌憚なき意見が許されているとはいえ、他国即位への意見は内政干渉に当る。 ここには多くの重鎮が集まっているのだぞ、言葉を選ばなければお前とて致命的になるぞ!」


「っ――し、しかし姉上!」


 アルバリサ女王の姉、ポマール王姉殿下はボーヌ事変において、戦争犯罪国家責任の容疑で一時的にシャンポール王国に身柄を拘束されていた。

 その後、容疑及び身柄拘束の命は解除されたのだが………

 拘束されるとき多くの生徒の前で叫んでしまった『アルバリサがボーヌ王国を陥れた犯罪人よ!』と言う言葉が、アルバリサ女王が即位した今、国家反逆罪に問われボーヌ王国追放と言う憂き目にあっている。

 そして今は、懇意にしていたコート王子に匿われて居ると聞く。


 正直言えば、ポマール王女は失言をしたが被害者と言っても良い。

 彼女はボーヌ事変が無ければ普通の女王として普通に即位していたはずだ。

 現にポマール王女は突出した能力は無いが無能ではない。

 いやむしろ、平均から見ればかなり優秀な王女だったと言っても良い。

 次期女王としての教育もしっかり受けて来たのだから。

 失墜の原因になった失言も、あの状況ならば誰しもがパニックに陥って下手な事を口走っても仕方ないと言える。

 彼女はまだ成人でもなく、ただの学生なのだから。


 だがポマール王女の不運は、新しいボーヌ王国の新派閥『時勢の十貴族』にとって存在自体が邪魔になってしまった事だ。

 どん底まで落ちたボーヌ王国の復興は急務だった!

 そこに新女王が立ち、国が新女王を中心に一致団結する重要な時に、権力を揺るがしかねない存在は邪魔だったのだ。

 だから国を一気に掌握し、立て直しにかかった時勢の十貴族盟主マリア・バルコスはポマール王女を『失言の件』を使い排除したのだ。


 まったく酷い話だ……

 だが国を立て直すと言う事はキレイ事だけでは済まされない。


 そしてそんなポマール王女と懇意にしていたコート王子は、彼女の不遇を想い意見をしたくなったのもおかしい話では無いだろう。



「あ……あのぅ…… ポマール姉様には――……」

「――アルバリサ女王陛下! 無礼をお許しください」

 アルバリサ王女が答えようとしたとき、マリアがそれを遮った!


「コート殿下。 殿下がおっしゃられた様にこの五大国同盟会合では身分の上下無き忌憚なき意見が許されています。 ですから私から答える事をお許し下さい。 私はボーヌ王国国家評議会の一人バルコス・マリアと申します」


 マリアはコート王子の言葉をそのまま借りて、自分が答える権利を得た。


「ここに集まった皆さまもご存じの通り、ボーヌ王国は先代の王が奇病に侵され、先代の国家評議会が国を取り仕切っていました。 そんな中、先代王を蝕んでいた奇病が国全体を襲い、奇病の大流行によりボーヌ王国は滅亡寸前となってしまいました」


 『あのボーヌ王国がそんな事態になっていたとは……』と皆驚きを隠せないようだ。


「国がこんな状況の時に、国政を任されていた先代の国家評議会が奇行に走ったのです。『五大国同盟会合からの離脱』と『三種族同盟への宣戦布告』と言う大罪を犯したのです!」


「なぜそんな…… 奇行に走った理由は有るのでは無いですか?」

 グラン嬢から声が上がる。


「後に分かった事ですが…… 先ほど話しに出た『ルカ教』に汚染されていたのです」


「ッ――!!! ばっ、馬鹿な! 国の中枢たる国家評議会が『ルカ教』に汚染されただと…… ありえん!」


 各国から驚きの声が上がり――

 また『ルカ教』の名がここにも出てきた事に動揺が広がる。


「多くの民が死にました。 多くの同胞が死にました。 多くの家族が死んだのです―― そして…… 我々の国への忠誠も死んだのです」


「「「「ッ――!!!」」」」


「その我々を救ってくれたのがアルバリサ女王とクレアス殿下だったのです。 そしてそのお友達のフュエ王女、シャルマ令嬢、フローラ皇女にも協力して頂き、ボーヌの民は奇病からも戦争からも救われました! ボーヌの民はアルバリサ様に忠誠を誓い、我々を導いてくれる王と仰いだのです!」


「…………」 「…………」 「…………」 「…………」


「コート王子。 ルカ教に汚染された旧ボーヌ王国は滅んだのです。 そして我々は自分の身を投げ打って国に戻り、民をそして国を救て下さった英雄アルバリサ様と言う一人の女性を王と仰ぎ新しいボーヌ王国を立ち上げたのです。 先代ボーヌ王の血族アルバリサ様が王位に着いた事で皆様には勘違いを与えてしまいましたが…… 我々は先代王の血を引くからアルバリサ様を王と仰いでいるのではないのです」


「コート王子。 酷な事を申し上げますが、新しく誕生した国に先代王の血筋ポマール様の血は不要なのです」


「ッ―――!!!」


 マリアから告げられたポマール王女には残酷な内容。

 今のボーヌ王国は英雄アルバリサを掲げて新しく作られた新しい国。

 古いボーヌ王国とは無関係の国なのだ!……と。

 たとえアルバリサ女王が今後王位を降りたとしても、新しい国として生まれ変わったボーヌ王国には、ポマールが王族として居られる場所は無いと言う事だった。



 マリアの話を聞いて、アルバリサはギュッと拳を握っていた。

 アルバリサだけではない、ボーヌ王国の代表として集まった皆が心の中だけでマリアの言葉を否定していた。

 マリア自身も心は皆と同じだ、だがあえて汚れ役を買ったのだろう。

 彼らは先代王と先代女王がどれだけ国を愛し、国を救う為に尽くしたかを知っている。

 だがそれはボーヌの民だけが知っていればいい。

 自分達が家族に代々伝えて行けばいい。

 今は建前と本心を使い分けられなければ、ボーヌ王国と言う大国を復興する事など出来はしない。

 その為には国民の拠り所となるアルバリサ女王の立場が揺らぐ事は全て排除しなければならないのだ。



 新ボーヌ王国の旧ボーヌ王家からの決別宣言と言う形で、今回の『人族五大国同盟会合』は締めくくられた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ