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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章88 閑話 人族五大国同盟会合 1

 

 今回の『人族五大国同盟会合』の参加メンバーは、前回とは少々変わっていた。

 ジョルジュ王国、モンラッシェ共和国の参加者は前回と同様だったが、モンラッシェ共和国には前回同様グラン嬢が参加していた事は個人的には嬉しかった。

 マルサネ王国も今回からは俺の学友コート王子がマルサネ陛下の隣に居る。

 各国が次代を担う若い後継者たちの育成に力を入れている事が(うかが)える。


 そしてもちろんボーヌ王国の参加者は刷新されていた。

 今回の参加者はアルバリサ女王、クレアス王兄殿下、ゴードルフ卿、ボノス卿、そして国家評議会代表のバルコス・マリア卿となっている。

 もともと前回までのボーヌ王国の代表者は『国王が病に伏せっている為』と称して、内政を受け持つ国家評議会の代表者が代理として参加していたはずだった。

 しかし……俺はボーヌ王国で国家評議会メンバーの末路をこの目で見ている。

 と言う事は前回来ていた者達は誰だったのか?

 もしかすると内情を隠す為アルキーラ・メンデスが送り込んだ者だったのかもしれない。

 まぁ正直、前回までのボーヌ王国からは『アルザスの悲劇で失った損失の回復状況』程度の報告しかなかった。

 重要な発表が有った訳では無いので深入りする必要もないだろう。

 肝心な事は隠されていて、その情報は全て今回の事変で俺の知る事となったのだから。



 そして今回のシャンポール王国の参加メンバーは、シャンポール国王が参加して居る。

 前回はミュジニ王子が国王の代理として参加して居たのだが今回は居ない。

 その代わりに国王の隣にはフュエ王女が参加して居る。

 他のメンバーはマール宰相、広報としてマディラ、そして俺が参加している。


 フュエ王女が参加してミュジニ王子が外れた意味合いは非常に大きい。

 表向きの理由は、フュエ王女がボーヌ王国アルバリサ女王の即位に大きく貢献した為、今回の会合では大いに役に立つとの判断でメンバーに選ばれた事になっている。

 しかし裏の事情は、フュエ王女が王の証ヒュプノスクリスに選ばれた事。

 そしてフュエ王女自身にも、ボーヌ王国での経験から次代の王としての覚悟が芽生えた事だ。

 ミュジニ王子派閥の者達はフュエ王女を排除する為、不可能な使命を王女に課したつもりが……

 達成されてしまい、いま王女の人気は国内外共に日の出の勢いとなってしまった。

 しばらくはとても手が出せない状況だろう。

 しかもフュエ王女自身にも次代の王としての自覚を芽生えさせてしまった事は大誤算だっただろう。

 ミュジニ王子の許嫁オリヴィエ嬢の激高する声が聞こえてきそうだ。




 『人族五大国同盟会合』の各国報告は淡々と進められた。


 ジョルジュ王国は――

 巨人族事変で半壊した王都や領内町村の復興を最優先に行っているがまだ三割程しか進んでいない。

 巨人族の再度侵略に備え軍備の強化も並行して行っている。

 出来る事ならば支援して欲しいと各国に訴えている。



 モンラッシェ共和国は――

 魔族事変で半壊した首都の復興中。

 更に軍備の強化に関しては急務、こちらも各国に支援を求めたいと訴えている。


 モンラッシェ共和国は多くの他種族の国と隣接するハブ都市だ。

 その立地から自由貿易都市として栄えたが、それは各種族の牽制の元、弱小人族が管理すると言う名目で成り立っていた中立都市だった。

 それが魔神族・人族・エルフ族の『三種族同盟』が成り、人族は突然強種族となってしまいモンラッシェ共和国の立場は一転、各種族国家の喉元にナイフを突きつけている形となってしまった。

 今は魔族事変の失敗と『三種族同盟』の庇護下の元平穏と言えるが、軍備の強化は確かに急務だろう。



 マルサネ王国は――

 前回と同じ未だに『アルザスの悲劇戦役』で失った損失の回復状況程度の報告しかなかった。


 だがこれには各国から不満の声が上がった。

 近年に大きな戦争も無かったマルサネ王国が、未だに八年も前に起きた戦争損失の回復中と言う後ろ向きな報告しかせず、他国の理となる報告が一切なかったからだ。


 この『人族五大国同盟』の中でマルサネ王国は唯一『アルザスの悲劇戦役』後に大きな戦争に見舞われていない国となった。

 シャンポール王国も今でこそ盤石な状況と言えるのだが、『アルザスの悲劇戦役』後の『アルザスの奇跡戦役』では、各国の援軍も無く単独での戦争を強いられ滅亡寸前まで追い込まれたのだ。

 各国には援軍を送らなかった負い目も有る。

 さらにシャンポール王国は援軍支援を受けられなかった国へも、その後事変が起これば救援を送り大いに貢献している。

 大国同盟はシャンポール王国が盟主となっているが、立場としては各国平等と言うのが基本理念だ。

 その中で各事変に全て救援を送ったシャンポール王国の行動は英断と言えるだろう。


 今回のマルサネ王国の失敗は『どうせいつもと同じ会合だろう……』と思っていた緊張感の欠如。

 まさかこれ程までに各国からの批判に晒されるとは思っても居なかった事だろう。

 あの狼狽えた顔を見れば『つい最近まで皆も同じ報告内容だったはずなのに……』と言うのがマルサネ王国の心情だと思う。

 だが他の大国は各々の事変で大きなダメージを負い、大幅に国力を減らす事態に陥った。

 ならば順調に回復している国が妬ましくもなる。

 マルサネ王国は現状の流れを読むことが出来ず、皆の求める報告が出来なかった。

 せめて小さな事でも良いので疲弊している他国への土産話の一つも有れば、皆の妬みを躱す事も出来ただろう。

 この度はマルサネ王国の失敗だったと言える。


 今回初めて会合に初参加したコート王子が、責めの言葉を投げられ青ざめている姿は悲痛なものがあった。




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