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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章80 ボーヌ王国の貴族達

 

 ―――シャルマ視点―――


 ブランさんはクレアスに薬の生産が出来る体制を整えておくようにと言いました。

 そして他の人達にはクレアスの指示の元動く様にと言い、西の勇者ジャスターさんを連れてどこかに行ってしまいました。


 それから数時間後、ジャスターさんは数人の冒険者仲間を連れて帰ってきました。

 その手には三個の『雷の属性結晶』が握られていました。


「ジャスターさん、ブランさんは?」

「あぁ、ブラン殿は先に戻ってくれと言いどこかに行ってしまわれた」

「そうですか……」


 私達は知っています。

 きっとブランさんは『雷の属性結晶』を探し回ってくれているのだと。


 その日ブランさんは帰ってきませんでした。

 でも次の日――

 一騎の馬車が突然墓地に入ってきました。

 その馬車は豪奢でとてもこの墓地には似つかわしくないものでした。

 きっと上級貴族のものでしょう。


 馬車が止まり中からとても綺麗な女性が出て来ました。

 そして辺りを見渡した後、リサの前に進み傅きました。


「突然の来訪失礼いたします。 わたくしはバルコス家当主のマリアと申します。 恐れ入りますがアルバリサ王女殿下とお見受けいたしますが宜しいでしょうか?」


 バルコス家の名を聞き、ゴードルフさんもアルカルド医院長も驚いています。

 私の記憶が正しければ、バルコス家と言えばボーヌ王国きっての大貴族。

 しかも世代交代した当世の若い領主は才気あふれる方だと聞きました。

 その方がこのマリアとい言う方なのでしょう。

 その自信に満ちた顔は美しくも野心溢れる風貌をしています。


「は…はい! 私が第二王女アルバリサ・ボーヌで間違いありません」


「お初にお目にかかりますアルバリサ王女殿下。 この度は我が(しゅ)ブラン様の命に従い参上いたしました。 どうぞこれをお受け取り下さい」


 そう言いバルコス卿は袋をリサに渡しました。

 その袋の中には『雷の属性結晶』が一〇個……いえ十五個は入っていました。


「「「っ――なっ!!!」」」


「申し訳ありません。 掻き集められるだけ集めて来たのですが…… 何分突然の事でしたので手元にあるこれだけしか持参する事が出来ませんでした。 バルコス家としたことが面目御座いません」


「い、いえ! 十五個も……こんなに沢山有難うございます。 本当に助かりました!」


 リサのお礼の言葉にバルコス卿は満足げに、片膝を付きお辞儀をしました。

 そしてリサはその袋をすぐにクレアスに渡して、薬の生産に取り掛かりました。


 それにしてもあのバルコス卿……

 さっきブランさんを『我が(しゅ)ブラン様』と言っていました。

 貴族は二君になど仕える事は許されない。

 だけどバルコス卿は『(あるじ)』ではなく『(しゅ)』と言う言葉を使ったのは、ブランさんはバルコス卿にとって『神』と言いたいのでしょう。

 たとえ王族と言えど貴族個人の信仰に口を出す事は出来ませんから……


 ⦅それにしてもブランさん……⦆

 ⦅ボーヌ王国きっての大貴族に『神』と崇められるってどうなのよ?……⦆



 私達がボーヌ王国の大貴族バルコス卿の来訪に驚いていると……

 驚く事はそれだけでは収まりませんでした。

 普段は人があまり訪れないこの墓地に、次から次へと場違いな馬車が到着しました。

 彼らも皆バルコス家と肩を並べる大貴族達!

 私の記憶ではボーヌ王国有力の大貴族は派閥に別れ争い合っていると聞いていました。

 しかしここを訪れた貴族達はバルコス卿を中心に固い結束を持っている様に見えます。

 そして必ず皆同じ言葉を使いました『我が(しゅ)ブラン様』……と。


 ⦅ブランさん…… あなたはいったい裏で何をやっていたの?⦆


 続々と集まった貴族達は皆ブランさんの(みこと)でと言い『雷の属性結晶』を持ってきました。

 そして現在までに集まった『雷の属性結晶』は既に二〇〇個を超えていました。


 私達はひとまず安堵しました。

 これでこの国は救われる。



「凄い! これでひと先ず重病人を全て救えるわね!」

「うん! このあとディケムさんに頼めば――……」


「あ………」「…………」「…………」「…………」


「わ、私達ソーテルヌ邸から抜け出したんだっけ?……」

「ディケムさん絶対怒ってるわよね?」

「だ、大丈夫です! ディケム様は必ず手伝って……くれますぅ……」


「……フュエ。 声が上ずってますわよ」







 ―――ディケム視点―――


「ねぇディケム。 ディケムがバルコス親子や有力貴族を治した方法とクレアスの治した方法。 違うわよね」


「あぁララ。 正直クレアスの治療方法には驚かされたよ。 今回の腐食の奇病は天使アザゼルの蝕堕(しょくだ)(堕天)による呪いと言っていい。 天使の持つ属性が蝕堕(しょくだ)により負のマナと変わり人々を侵食していったんだ。 だから治し方は俺が行ったマナの浄化と調整が正解なはずだ」


「うん」


「だけど『マナの浄化と調整』なんて普通の人は出来ない。 それをこの病気に対して限定ではあるけれどクレアスは誰でも作れる薬と言う方法で解決して見せた。 正直俺の方法では国民全てを救う事は難しいがクレアスの方法なら皆を救うことが出来る。 だから今回の奇病の治療法の正解はクレアスの治療法だったと俺は素直に脱帽したんだよ」


「珍しいわね。ディケムが素直に負けを認めるなんて……」


「そんな事無いだろ、俺だって負けくらい認めるさ。 人一人が考え付く事なんて限られている。 人それぞれに答えが有る様に、問題へのアプローチも人それぞれだ、得意な能力によって変わってくる。 それを否定するのではなく肯定してそこから学んだ方が有意義だろ?」


「うん」





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