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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章79 女王の側近ゴードルフ

 

 ―――シャルマ視点―――


 ブランさんは第二王女のリサをボーヌ王国の『王位』につけると言った……

 奇病を治す事で頭がいっぱいだった私達は、戦争終結までのシナリオを思い描けていなかった。

 でもブランさんはそこまで考えて動いている。

 突然連れて来た『西の勇者』も民衆の支持をリサが得る為には重要な役割を果たすピース……


 もう……話がどんどん進んでしまい、頭がついて行くのに精いっぱいだ。

 でも取り敢えず今は、奇病の薬作りに専念しましょう。




 私が考え事をしていると――

 固まっていたクレアスが『ブランさん……』と動き出す。


 ブランさんが言った『クレアスの戦いは国民を奇病から解放する事』

 その言葉を聞いてから、クレアスの目も決意のような物を感じます。


「ブランさん。 まずはその最低限必要な『雷の属性結晶』一〇〇個は何か当てでもあるのですか?」


 クレアスは少し期待した顔をブランさんに向けている。

 西の勇者と謳われるジャスターさんでさえ三個程度しか用意できないという貴重な『雷の属性結晶』です。

 でもその後のシナリオまで既に思い描いているブランさんなら『何か案が有るのだろう』と期待するのも当然です。


『その事だが……』とブランさんは話しかけ止める。

 クレアスは少し不満そうにしていたけど――

 私はやはりブランさんは何か案が有るのだと確信し少しホッとしました。

『まずは薬を作るクレアスの研究所を見せてほしい。 それから協力を求められる人材をそこへ集めたい』と言うブランさんの提案にクレアスも素直に従ってくれました。



 ブランさんはクレアスの研究所(墓場の掘っ立て小屋)へ向かう前にこのアルカルド中央病院の医院長、セシリアのお父さんを氷から解き放ちました。

 アルカルド院長は既に亡くなったセシリアの手をギュッと握りしめたまま凍り付いていました。

 私達はまた泣き出しそうになる気持ちを抑え、セシリアに『必ずこの国を救って見せるからね!』と誓い病院を後にしました。


 もちろん眠っているフュエとフローラも連れて行きます。

 フュエはブランさんが抱え、フローラをヴァンさんが抱えてクレアスの家へ向かいました。

 ブランさんに抱えられるフュエの顔がなんか幸せそうで……

 ヴァンさんに抱えられているフローラがなんかイラっとしているようで……

 皆で笑ってしまいました。




 クレアスの家に着いたブランさんはまず初めに研究室を念入りに見ていました。

 そしてその後、クレアスのお爺さんを氷から解き放ったのですが――

 そこで問題が起きました!


『こ、これは――!』とクレアスのお爺さんは叫び、老人とは思えない身のこなしで飛び退き、クレアスを背に守る様にして戦闘態勢を取ったのです!


 確かに目覚めた時、知らない人が大勢自分の家の中にいたら誰でも驚くでしょう。

 クレアスのお爺さんは必至に状況を把握しようと努めています。


「お、お爺さん大丈夫です! この人達は僕の研究を手伝ってくれる人たちです」

「っ―――! だがクレアス!」


 クレアスも必死に説得を試みますが、お爺さんはいっこうに警戒を解きません。

 そのお爺さんのいつもとは全く違う雰囲気にクレアスも狼狽えているようです。


「ほ、ほらお爺さん。この前家に遊びに来たフュエさんも…… 中央病院のセシリアのお父さんもいるでしょ!?」

「…………。 だ、だが――そこの魔神はなんだ!?」 


 クレアスのお爺さんは銀色の髪を持つブランさんを異常に警戒している様に見えます。

 するとブランさんがお爺さんに話しかけました。


「お前がマランジュ女王の側近ゴードルフで間違いないか!?」

「っ――なっ!!!」


 突如、ブランさんからただの墓守のお爺さんに投げかけられた『マランジュ女王の側近』と言う言葉。

 お爺さんが驚愕し、クレアスも困惑し、アルカルド院長もその名に聞き覚えが有るらしく驚いていました。

 そして私達も『いったい何が起きているの?』と混乱するばかり。


「な…なぜその名を知っている! 魔神……お前は何故ここに来た――!!! またお前達は我々を陥れようと言うのか!?」


 クレアスのお爺さんがさらに激高しました。

 しかしその怒りが、ブランさんが問うた事を肯定するもの。

 クレアスのお爺さんは温厚な方だとフュエから聞いていましたが……

 でも今私達の前に居る老人はその年齢を感じさせない程の眼光と殺気をブランさんに叩きつけています。


「ゴードルフ。 お前達を縛る呪いの根源は既に滅した。 あとは現下の呪いを解けばこの国は救われる」


『っ―――なっ!!!』ブランさんの言葉に老人が目を見張る。


「ログウッドから話は聞いた。 自分で言うのもなんだが……私はお前たちの待っていた勇者と言う事になる。 不本意だが、マランジュ女王の想いを聞いてしまった以上願いは叶えてやろうと思っている……」


 ログウッド、マランジュ女王――

 この名を聞くとクレアスのお爺さんの目から突如涙がこぼれ落ち……

 床に崩れ落ちました。


「マ…マランジュ様……ログウッド…… おぉ…おぉおおおおおお――……」


 私達はブランさんとクレアスのお爺さんの会話が全く分からず困惑していました。

 クレアスの顔を見ても、アルカルド医院を見ても――分からないと言った表情です。

 ゴードルフ? マランジュ女王? ログウッド?

 いったい何の話をしているのでしょうか?


「あぁ…あなたが……貴女が我々が待ち望んだ勇者様なのですね? 既に陛下も……ボーヌ陛下も開放して下さったのですね?」


『そうだ』と答えるブランさんに…… 

 クレアスのお爺さんが突然跪き頭を床にこすりつけ懇願しました。


「勇者様どうか非礼をお許しください! 私は命を絶って非礼をお詫びします! ですからこの国を――マランジュ様が愛したこの国を……どうかお救い下さい――!!!」


「命など絶つ必要は無い。 それよりもお前にはこれからやってもらわなければならない大きな役目が有る。 自分の役目を果たして貰おうか」


 『ははぁあああ――』とクレアスのお爺さんはブランさんに再度頭を下げました。



 今の話……

 ここに居るほとんどの人が理解できませんでした。

 そしてマランジュ女王と言う名前が聞こえたのに、その娘のリサもお爺さんに育てられたクレアスも…… 今驚いている様子から知っていたとは思えません。


 困惑する私達にブランさんは言います。

「役者が揃ったら皆に詳細を話す。 今は都度説明する時間が惜しい。 ひとまず疑問は皆の内にしまってくれ」


 ブランさんの言葉に取り敢えず皆が頷きました。





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