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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章77 フローラ再生

 

 フュエ王女を抱えたブランは、この部屋にもう一人居る凍り付いたままのシャルマの前に立つ。

 シャルマのマナを探ると特に呪いに汚染された形跡はない。


「ヒュギエイ――……」

「――シロと呼べ! そして普通に喋るのはここまでだ。 私はフュエの守護者だ、他の者に私の事をあまり知られたくはない」


 『わかった』とブランは念話で返す。


『それでシロ、氷の解除はやってくれるのか?』

『いや、私も多くのマナを使い過ぎた。 これ以上使えばフュエを守るのに支障をきたす』


 ⦅――ちぃ! ヒュギエイアからしたら大したマナでは無いだろうに………⦆


『ん? 何か言ったか!?』

『いえ! 何でもありません………』

 ⦅面倒臭いだけだろ?⦆……という言葉は飲み込んだ。


 だがブランは考える。

 ディケムなら問題無いが、ブランの体ではフェンリルを呼び出すことは出来ない。

 さてどうしたものか……


『それ程悩む事も有るまい。 絶対零度と言ってもフュエの装備に練り込まれた精霊結晶を媒介に事象だけを発動したものだ。 フェンリルと対峙しているわけでも無し今の君でも事象に干渉し術を解くぐらいは出来るだろう?』


 確かにブランは戦闘中、この体でも契約している精霊の影響を感じ取っていた。

 ブランは友人のシャルマで試すのは不本意だったが……

 凍りつくシャルマに手をかざし、絶対零度の氷の解除を試みる事にした。


 『う~ん……』とブランは声を上げ『あぁでも無い……こうでも無い……』と悩みながら試してみる。

 そして『これか!』とブランの顔が晴れた時――

 シャルマを覆う氷が一瞬で蒸発するように消えた。


「………っん…… あ、あれぇ?………」

 シャルマが『なぜ自分は寝ていたんだろう?』と不思議そうな顔で目を覚ます。

 そして『あぁ、そうだっ!』と自分が凍り付いた時のことを思い出したようだ。


「シャルマ。 今この国は絶対零度の氷に閉ざされ時間を止められている状態だ。 呪いの元凶は既に倒したが、もう発動してしまっている呪いはまだ解除出来ていない。 だから今の状態で全ての氷を解除すれば発病している人々の命は助けられない………」


 あまり時間をかけたくないので今の状況をつらつらと述べてしまったが――

『元凶は既に倒した』と聞いた所で少し驚いてはいたが、利発なシャルマはすぐに

 頭を整理し状況を理解してくれた。

 やはりフュエ王女の次に絶対零度の氷を解除したのがシャルマで正解だった。


 シャルマ達は凍り付く直前にかなりの絶望を味わっていたという。

 いま氷から解放されたばかりのシャルマにとって、その出来事はついさっき起きていた出来事なはずだ。

 それでもブランの『これからこの国を救う手助けをしてほしい!』

 ――と言う言葉に、シャルマはすぐに気を引き締め頷いてくれた。




 ブランはフュエ王女を抱えたまま、シャルマを連れてジャスターの待つ部屋へと向かった。


 ジャスターが『ブ…ブラン殿! その美少女二人は?』と驚いていたので、『この子達が、私が旅の途中で知り合ったお人好しの友人達だ』と説明しておいた。

 シャルマも自分達以外に動ける人が居る事に驚き警戒していたので『この強面(こわもて)の冒険者っぽいのが西の勇者だ』と説明しておいた。


 一つ説明すれば十理解し察してくれるシャルマの賢さが、今のブランには非常に有難かった。

 今後氷から解放した人への説明はシャルマに任せようとブランは決めた。




 次にブランはアルバリサとクレアスを絶対零度の氷から解き放った。

 そして今…… ベッドに横たわり凍り付くフローラの横に立つ。


「ブランさん! フローラは奇病に感染し…… クレアスが開発した新薬を飲ませたのですが回復せず意識を失った危険な状態なんです!」


「シャルマ…… クレアスが研究していた薬は完成しているのだな?」


 『『はい!』』とシャルマとクレアス二人が同時に答えた。


「私はクレアスの薬で全回復しました!」


 ブランは凍りつくフローラに手をかざし、マナの状態を探る。

 そして『なるほど……』と呟く。


「フローラは本当にギリギリだったのだろう……奇病は薬のお陰で既に完治している。 だが薬投与のタイミングが臨界直前だった為フローラの防衛本能が働き、毒の進行を阻止しようとマナの循環を止めてしまったようだ。 普通の人間はこんな事は出来ないが……フローラはマナに敏感な子だったな」


『フローラは大丈夫なの!?』

『大丈夫ですよね!』

 ――とシャルマとリサが懇願するようにブランに問いかける。


「正直この状態は心臓を止め仮死状態に入ったようなものだ。 もしこのまま置いておいたら時間の問題で死んでいたが…… 絶対零度の氷で時が止まってくれたおかげで助けられそうだ」


 ブランの言葉を聞き、シャルマとリサの顔が明るくなる。



 ブランが凍り付くフローラに手をかざす――

 フローラを覆う氷が一瞬で蒸発するように消えた。

 そしてブランはフローラの背中、肩井(けんせい)(首の根元と肩先の真中)に指を添えてマナを送りこむ!


 すると――

 フローラの顔色が見る見ると良くなっていく。

 そして『ぐっは……』とフローラが一度せき込むように息を吐きだした。


『フローラ!!!』『フローラ姉様!』『フローラさん!』

 シャルマ、リサ、クレアスがフローラの元に駆け寄りブランの顔を見る。


「もうフローラは大丈夫だ」

 ブランのその言葉を聞き、『よかった~』と三人とも床にへたり込み安堵の表情を見せていた。





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