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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章70 アルキーラ・メンデス


 ブランとジャスターは国家評議会の長老たちが居る部屋を後にした。


「ブラン殿……これからどうするのだ? 先ずはその呪いの鍵となる双子の王子と王女を探しに行くのか?」


「いや。 中位天使のアザゼルでも敵わぬというアルキーラ・メンデスと言う者。 この者にクレアスの存在を知られるのは止めた方が良い。 マランジュ女王が命を懸けて隠し通したのだ…… 我々が台無しにしてしまっては浮かばれぬ」


「では?」


「まずはアザゼルの所に行き、アザゼルに回復魔法をかけている術師を排除。 そしてアルキーラ・メンデスを排除する。 その後アザゼルの状態にもよるが、鍵となる双子を連れて来るのが無難な道筋だろうな……」


「ブラン殿…… 先程『中位天使のアザゼルでも敵わぬ者』と言わなかったか?」


「あぁ、相手が悪すぎる。 長老ログウッドもなぜ我々にあの話を伝えたのか…… まったく厄介な」


「だがブラン殿は行くのだろ?」

「…………現状を見定めに行くだけだ、ジャスター殿は止めた方が良い。 死ぬぞ!」


「もしブラン殿が敵わぬ相手だった場合…… 次代に伝える役目が必要だろ? 長老達はもしかすると、もう自分達に時間が無い事を知ってブラン殿に伝えたのかもしれない」


「本当に知らぬぞ! ジャスター殿を庇えるほど易しい相手じゃない」

「俺が死んでも気にする必要は無い。 自分で選んだ道なのだから」

「ッ…………」




 ブランは迷う事無く目的地に向かい廊下を走って行く。

 ジャスターもその後を疑いなくついて来る。


 ブランは木霊に聞いた場所と、自分のマナ探知の情報を擦り合わせる事で目的の場所を的確に特定している。

 だからブランは既にこれから相見える相手を補足していた。



 誰も居ない真っ暗な謁見の間を通り過ぎ、玉座の後ろの豪奢な幕を通り過ぎると、もう一つの隠し謁見の間が現れる。

 隠された謁見の間は、表の謁見の間よりも落ち着いた雰囲気で華々しさは無いにしてもその質感は重厚で、こちらの部屋の方が細部まで細かく手間をかけ作られ格式が高い事が感じられた。


『ここは……』とジャスターが呟くが、今はそれどころではない。


 裏の謁見の間、その玉座にはボーヌ王らしき人物が座り光りの鎖で縛りつけられていた。

 そしてその四方を三メール程の巨人四体が囲み、巨人は大きな魔法の杖を床に突き立て、杖の触媒からボーヌ王へと魔法を注いでいた。


 巨人達は黒いフードを目深に被っていた。だが、玉座を囲む四体のうち後方に配置された二体の顔はフードの影になりながらもこちらから見ることが出来た。

 そのフード下の顔には大きな目が一つ、サイクロプス種なのだろう。

 サイクロプスにしては小さい三メートルほどの体格だ。

 しかし…… 改造されたように禍々しい顔がフードの下から覗く。

 後方の二体はそれぞれ違う奇形の顔をしている事から、失敗作なのだろうか?

 だがこの四体が天使アザゼルの呪いを凌駕している事は確かだ。

 アザゼルが弱り切っていると仮定しても……

 決して容易い相手では無いだろう。



 そしてブランがジッと見つめるその先、玉座に座るボーヌ王とサイクロプス達の前、玉座に登る雛壇(三層の壇)にサイクロプスと同じ黒いフードを被った一人の男が床に片膝を立て直に座っている。

 玉座の間ではあるまじき無作法……

 だがその体から漏れ出すマナに、マナを感じられないジャスターすら気圧されている。




 その男はしばらく笑みを浮かべブランをジッと品定めしてから口を開く。

「フフ、やっと来てくれたか~待っていたよ。 あれからもう十五年以上たったのか…… 本当の君自身に会えないのは少し残念だけどね、まぁそれでも良い」


「…………それは……どう言う意味だ?」


「僕がネフリムを作りたい事は知っているよね? だけどそれは僕が思い描く設計のほんの一部に過ぎないって事。 そのプランには君も入っているからだよ」


「なっ!…………」


「そんな訳だから正直言っちゃえば僕は君を殺せない。 だからそんなに警戒しなくても大丈夫だよ アハハ」


「私に何かさせたいと言うことか?」


「久し振りに会ったというのにつれないね…… まぁ今の君はまだ僕の事を知らないか」

「………………」


「君の質問に答えると――まぁそうなんだけど……。 でもまだ今の君の力じゃ教えられないよ。 だって君はまだ四大元素の精霊すら集められていないのだから。 オーゾンヌの爺さんにも言われたでしょ? 僕の事を知るのはその後だ」


「ッ―――なっ!!!」

 ⦅この男サンソー村のオーゾンヌの事まで知っている!⦆


「まぁ良いや。僕は今日君の顔を見に来ただけだからもう用件は済んだ。 それで君はそこの天使を解放しに来たのだろ? ――と言う事は双子の片割れも生きているって事だね…… 全くあの女王はか弱い人間のくせによくやるよ。 だけど僕は賢い人は好きだ、だからこれ以上は詮索するのは辞めておこう。 君に心底恨まれるのはゴメンだからね」


「では……このまま引いてくれるのか?」


「……う〜ん。 そうしたいけど取り敢えずそこのサイクロプス四体くらいは倒してもらわないとダメだよ。 君にはもっと強くなって貰わないとダメだからね」


「もし私がここで死んだらお前の計画は失敗するのではないのか?」


「ハハ笑わせないでよ、その体でどうやって死ねるって言うのさ。 ……だけど頑張らないと君の連れは死にアザゼルは解放されない。 この国の呪いも解けず君の友人は凍ったままという訳さ」


「ッ――クッ!」


「その体は……ブランだっけ? 僕をガッカリさせないでよね♪」



 その男が指をパチンッと鳴らすと、ボーヌ王を四方から囲っていたサイクロプスが床に突き刺した杖から手を離し動き出す。

 杖は床に刺さったまま、蓄積された魔力でアザゼルへの魔法は掛けられたままだ。



 『じゃ頑張ってね~♪』

 サイクロプスに視線をずらしたブランが、その声に気づき視線を戻したときには既に男の姿はそこに無かった。




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