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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章53 国民の怒り

 

 ―――フュエ王女視点―――


 奇病に感染した患者さんの診療とマナの訓練、そしてクレアスの研究の協力。

 そんな忙しい毎日を送っていた私達でしたが………

 それは突然に訪れました。


 王都中央に位置するボーヌ城の周りに輪っか状の雲が出来ていました。

『な…何アレ?』

 誰しもがその得体の知れない見た事もない雲に驚いていました。

『何十年この王都に住んでいるが、あんな雲見たの初めてだ』と……


 しかしその輪っか状の雲を見ていた野次馬の疑問と好奇心の声が、ある出来事で悲鳴と絶叫に変わりました。


 民衆が雲を見ていたところにムクドリの大群とそれを追いかける鷹がいました。

 ムクドリの大群が鷹から逃げる為に輪っか状の雲に接触したとき……

 ムクドリの大群が一瞬にして消えたように見えたのです。

『え……?』民衆は最初何が起きたのか理解が出来ませんでした。

『たぶんムクドリの大群は雲に隠れたのだろう』と。

 しかし危険を察知した鷹が急反転しようとした時、片翼だけその雲に触れてしまったのです。

 すると雲に触れた鷹の片翼は崩れ去り、片翼を失った鷹はきりもみ状態に落下していきました。


『えっ…………!?』

『う…嘘だろ……?』

『や…やばい……あの雲は奇病と同じ腐敗の塊じゃ無いのか?』

『きゃぁあああああ―――!』

『もうこの国はダメだ……逃げろ!』


 王都は恐怖に包まれ阿鼻叫喚の様を呈しました。

 そして王都から逃げ出そうと城壁門には我先にと人々が殺到していったのでした。

 ――しかし。

 逃げ出そうとする人々はさらなる絶望に叩き落とされたのです。

 城門の外にもまた濃い霧が立ち込めていたからです。


『こ…この霧は大丈夫だよな……?』

『わからない…… 朝から城門を出て行く者は居たが…… 今日は入城した者は居ない』

『そ…そんなのおかしくないか?』

『あぁ…… 俺が守衛の任に着いてから初めてだろう』

『それって……?』

『あぁ…… 多分この霧にも触れない方が良いと思う……』


 あのムクドリと鷹の末路を見た人々は、城門の外に立ち込める霧に触れる事など出来る筈がありません。




「それでセシリアどうなの? 城門の外の霧もあの王城の腐食瘴気の塊と同じだと思う?」


「わ、わからない……私達もあんな雲初めて見たもの。 お父様もあんなの今まで見た事が無いと言っているわ。 でも…王城の雲と一緒に発生したと言う事は……」


 海沿いに位置するこのボーヌ王国は、海風から吹く湿った空気により霧が派生する事は多い。

 しかし逆に言えば海風が強い為、王城の周りにずっと停滞している輪っか状の雲や、昼を過ぎても消えない城壁外の霧は非日常的で普通では考えられない出来事だそうです。


 私達が得体のしれない雲の話をしていると、今度は血相を変えたクレアスが走って来ました。


「セシリア大変だ! パニックになった市民が義勇兵団を作り王城に向かおうとしている。 その中にトリーノが……」

「っ――なっ! トリーノが……クレアス本当なの!? そんな事したって私達市民があの堅牢な城の城門を抜けられるはずが……」


「いや……そうでも無いらしいんだ。義勇兵団のデモには一部の騎士団も参加しているらしい。 この国民が病気で疲弊しきった状況下で魔法師団を派遣しないどころか人族同盟からの離脱、宣戦布告とかバカげた政策をする国家評議会に、怒りが爆発したのは国民だけじゃなく騎士団も同じらしい」


 今まで耐えに耐えて来た国民の我慢が、あの『瘴気の塊』に閉じ込められた事で一気に爆発したのでしょう。

 これはもしかすると奇病の解決より先に、市民革命による戦争の終結が起こる可能性も有るのでは?

 でもその場合…… リサが王位につく事は難しくなります。


 義勇兵は街の中央広場に続々と集まっているそうです。

 その数は数千を超える数に膨らんでいるとか……

 その中からトリーノを見つけ出す事は難しいことでしょう。

 私達はとりあえずセシリアに連れられ、義勇兵が集まる中央広場が一望できる高台公園へ向かいました。


 私達の眼下には続々と集まる群衆が見えます。

 その殆どが市民ですが、クレアスの情報通り市民の中に兵士や騎士団の姿も見られます。


「……ちょっ! これ万を超える規模じゃ無いの!?」

「…………」「…………」「…………」「…………」


 これは……

 私達は革命の起きる瞬間、国が亡ぶ歴史の瞬間に立ち会うのかもしれません。

 既に一万を超えるかと言う人々が中央広場を埋め尽くし、さらに広場へと続く道にも人の波が見えます。

 もう一個人がデモを止めようとしても、どうする事も出来ない規模へと膨らんでしまっています。


 ⦅でも……これ程のデモでも、ディケム様ならば精霊様を従えファフニール様に乗り止めてしまわれるのでしょうね?⦆


 言葉を失い唖然とこの事態を見守る皆をよそに……

 私は『ディケム様なら……』と思ってしまいます。

 この国にはディケム様程の英雄が居ません。


 ⦅このデモは国民の意思。もしディケム様が居たとしても『デモを止めたのか?』怪しい事かもしれません⦆


 しかし恐ろしいのはこれからです。

 怒りを持って始まったデモは暴動へと変わる事が多いのです。

 デモに騎士団が参加していると言っても全てではありません。

 暴徒と化した民衆が王城を守る武装した騎士団とぶつかり合えば、多大な犠牲者が出る事は避けられないでしょう。



 私は隣で中央広場に集まる群衆をジッと見つめるリサの横顔を見ていました。

 リサは悔しそうに固く唇を噛みしめ、震える手を固く握っていました。

 『国民を救いたい』『私の役割を成す』そう決意してここへ来ましたのに。

 けれど現実は甘くはありませんでした。

 どうすることも出来ない国民の大きな怒り、動き出す大きな力。

 それを前に自分達の力の無さ、小ささを思い知らされていました。







 ―――ディケム視点―――


「ボノス単刀直入に聞くが――、お前は元ボーヌ王国マランジュ女王の宦官だった。 そうだな?」


 何でも聞けと言っていたボノスが目を見開き俺を見る。

 だがその驚き方は普通じゃない。

 人はそこまで驚く事が出来るのか?と言うほど目を見開き俺を見ている。


「な…なぜそんな事を知って……… いや、私は宦官などでは…… 私はルカ教の………」


「ボノス。ボーヌ王国に何が有った? 女王マランジュ様の死に何か秘密でもあるのか?」


「……マ…マランジュ様……… わ、私は……」


 ボノスは忘れていた記憶を取り戻すかのように『いや違う!』『そんな私は……』とブツブツと呟いている。


 ⦅ボノスも、もしかするとルカ教に洗脳されていただけなのか?⦆


「ボノス。なぜ女王の宦官だったお前が、ルカ教の信徒なんかになっている?」


「あ……あぁああああ―――……私わぁあああああ―――!!!」


 ボノスが頭を抱えて混乱しはじめる。

 ヤバイ、このままではボノスは壊れてしまう!


「ネロ! ボノスは強力な洗脳状態のようだ、コントロールを頼む、発狂させるな!」

「はぃはぁ~~~い」


 混乱をきたし頭を掻きむしり、発狂寸前だったボノスがネロの力によって徐々に落ち着きを取り戻す。

 しかし未だに『違う!わ、私は…』『マ、マランジュ様……』と一点を見つめブツブツと呟いている。

 そしてボノスの記憶のピースが突然ハマった様に、ボノスの雰囲気がガラリと変わる。


「わ…私はボーヌ王国女王マランジュ様の宦官だった。 マランジュ様から頂いた勅命は()()()を守る事…… な…なのに私はアルバリサ王女になんと言う事を………あぁああああ―――!!!」






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