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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章26 総隊出撃命令

 

 ――少し時間はさかのぼる――


 上空に積層型の立体魔法陣が展開している。

 ディック、ギーズ、ララが上手くやってくれている。


 そして俺の隣にはオネイロスが顕現している。

「それでディケム。 アルバリサ王女をもとに戻すのはどうすればいいの?」


「正直まだネフリムの事はよく分かっていない。 でもネロの話を聞く限りだと、そこに居るルカ教のボノスって奴はリサを眠らせる事でネフリムの力を引き出そうとしていた。 だとしたら逆も同じ、ネフリムの力を眠らせれば元には戻ると思う。 学校でも力尽きたリサは元に戻ったから」


「じゃ〜眠らせちゃって良い?」


「なぁネロ。 今のリサの腐蝕の力は人から人へと伝染していくものではない。 と言うことは現在ボーヌ王国を蝕んでいる腐蝕はリサとはまた別の原因だと考えた方が良いと思わないか?」


「まぁそう考えた方が自然ね」


「ネロ。 もう少し『ネフリム』の情報が欲しい」

「良いけど…… どうなっても知らないわよ?」

「ネロはネフリムにとって鍵なのだろ? いつでも力を解放させ、力を閉じ込めることもできる」

「正直、閉じ込める方は自信が無いわ。 完全に天使の力が覚醒したら、私の今の『格』では足りないかもしれない」


「『足りないかもしれない』とはネロにしてはあやふやな答えだな」


「しょうがないじゃない。 ディケムも気づいたでしょ? アルバリサ王女の力が半分解放された時、神木と共鳴して私たちの『格』も少し上がった。 もしネフリムが完全に覚醒したときネフリムの力がどれ程のものか、私達の『格』がどれほど上がるのか予想がつかないのよ」


「それでも、その様子だとやり用はあるのだろ?」

「まぁね〜 このオネイロス様に不可能など無いわよ」

「なら頼む」

「了解」

 ・

 ・

 ・

 ・


 俺が見上げるその先に――

 光芒に照らし出された片翼の漆黒の天使が降臨している。


 そのマナの質量はヤバイ…… 正直これ程とは思わなかった。


 ⦅中に居るリサを傷つけずに、アレと戦えるのか?⦆



 今までの史実の歴史書を読むと、天使が降臨した記録は数度ある。

 だがそれは――

 彼の国は天使降臨により滅んだとか、彼の領土は焦土と化した。

 など、どの様に戦ったと言う物ではなく、降臨により消滅したと言う史実のみ。


 天使、神という存在はこの世界において一方的に『神罰』を落とし『神助』を与えるもの。

 人々の願いを聞いて、叶えてくれる様な優しい存在ではない。

 その圧倒的な存在の前では、例えそれが理不尽な審判だったとしても人は受け入れなければならない。


 だとしても――

 人々にだってその審判に抗う権利はあるはずだ。




『各隊員、これから片翼の堕天使との戦闘に入る』


 俺は『言霊』を使いソーテルヌ総隊各員、ラス・カーズ将軍、フュエ王女と繋がり『片翼の堕天使』との戦闘に入ることを宣言する。


『あの堕天使はアルバリサ王女を媒体として顕現している。消滅させることは許さない』

『『『『はっ!』』』』


『四門守護者は神獣を使うな、ラトゥールは補佐にまわってくれ。 できるだけあの天使の力が見たいディック、ギーズ、ララは一気に畳み掛けないで最初は他の隊員の補佐に回り様子を見ながら戦ってくれ』

『『『『はっ!』』』』


『フュエ王女殿下は宮廷で待機してそこに居る貴族達を守ってください、アルバリサ王女を守る為に。 彼らが死んでしまってはこの事件の落とし所が無くなってしまいます』

『は、はいっ!』


『ラス将軍の王国騎士団。 ラローズの精霊部隊。 コルヴァス、カミュゼの精鋭部隊。 イゴールの竜騎士部隊は全力で戦ってみてくれ。 だが無理は絶対にしないでくれ、消滅させることが目的ではない』

『『『『はっ!』』』』


『メリダの諜報部隊は出来るだけ情報を集めてくれ』

『はっ!』


『あとの部隊は王都住人の避難誘導を頼む』

『『『『はっ!』』』』



『各隊員。 天使との戦闘は今後も起こり得ると推測される。 少なくともボーヌ王国には目の前の堕天使よりも強力な天使が居る可能性がある。 申し訳ないが今後の戦いの為に今回は情報収集を第一とさせて欲しい』


 各隊員が息を呑むのが伝わってくる。

 天使の降臨など伝説の中でしか聞いた事が無い出来事。

 しかも降臨すれば間違いなく国が滅びる、ディザスタークラスだ。

 そんな天使が今目の前に顕現し……さらにまだ他にも居る可能性があるという。


 特に長年王都を守り続けてきた王国騎士団ラス・カーズ将軍のショックは大きい。

『ソーテルヌ閣下! 天使が降臨してしまった今…… 「消滅させない」などと言っている余裕は無いのではないでしょうか!? 神獣様にも力を貸して頂きソーテルヌ閣下も全力を出して頂き総力で事に当たらなければ――……』

『ラス・カーズ将軍! 貴様ぁ…… ディケム様の指示に異論は認めぬ。 それでも異論を唱えたいのならお前達だけでやってみるが良い。 アレを自分達だけで対処出来ると思うのならな』


『も……申し訳ありませんラトゥール様。 閣下、差し出口でしたお許しください』


 相変わらずラトゥールの俺第一主義がヒドイ……

 だがラスさんには申し訳ないけど、俺は今回の指令方針を変えるつもりはない。


『ラスさん申し訳ないけど…… 今回は我慢してください。 ですがラスさんも覚悟して置いて欲しいのです。 今後の敵は他種族だけでなく……天使とも戦う可能性がある事を』


『今後も天使と戦う可能性があると言うのですか……?』

 俺の言葉を繰り返し呟いたラスさんと一緒に、隊員が息を呑むのが伝わって来る。


『ソーテルヌ総隊の皆も心してくれ。 多分今回の事変は序章に過ぎない。 今後更なる厄災となる天使と対峙する事になるだろう。 それを我々が先頭に立ち人族を守っていかなければならない。 目の前にいる天使との戦いは我々の力が天使に通用するのか、今後の判断基準となる。 自分の力がどの程度なのか…… 皆もこの戦いで学んでほしい』


『『『『はっ!』』』』 総隊各隊の動きは淀み無い。


 天使との戦いがこれで終わりなら…… それはそれで良い。

 しかし世の中とは大抵悪い方へと流れていくものだ。

 それに今回の事変には成るべくして成った下地があった。

 天使降臨など大事は成ってから対処しても遅い。

 その大厄災の芽があるのなら今から準備しておかなければならない。






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