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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章25 積層型立体魔法陣

 

「上位精霊たるオネイロス様ならもうお気付きでしょう? イグドラシルと貴女様と共鳴し力が増幅されているのはアルバリサ王女だけではない。 その逆も然りっ! イグドラシルとオネイロス様も同じく力を増しているはずです。 そうっ! 私達はソーテルヌ卿が成そうとしている事を手助けして差しあげているのですよ。 どぉでしょう〜? これで少しは私の話を聞いてくれる気になりましたでしょうか?」


「……ふん。 お前の言わんとする事は分かるが…… やはりやり方がゲスいのだ。 『生理的にお前を好きになれない』と言ったこと、やはり変わらぬな」


「ゲ、ゲスい…… 生理的…… そんな事どうでも良いではないですか。 もっと高尚な見知からモノを言っていただきたい。 私達が成そうとしている事は――……」


「あ〜〜〜 もぅどぉ〜でも良い。 気に食わんものは気に食わんのだ。 それよりもお前…… この力御せるのか? このままじゃお前も大切な信徒全員諸共死ぬぞ」


「うはっうはははぁ〜 ご心配は無用でございます。 我々『ルカ教』の幹部はネフリムの力を御す特別な『聖遺物』を授かっているのですよ。 だから私にはあの腐蝕の力は効かないのです。 まぁその聖遺物が何なのかは……加護を下さらない貴女様にはお教えできませんがね」


「それではお前以外の信徒はどうなる?」


「そんなのは〜 後からいくらでも湧いてきますから…… ここにいる信徒達は喜んでその身を捧げる事でしょう」


 だがどう見てもボノスの言葉を聞いた貴族達が殊勝に死を受け入れている様には見えない。

 皆『そんな…… ボノス様それでは話が違うじゃ無いですか』と泣き喚いている。


「ゲスが……」


 だがいくら信者が泣き喚こうがすでに遅い。

 アルバリサ王女から溢れ出る腐食の霧は、瞬く間にシャンポール王国全土の空を覆って行った。

 そして――

 暗雲のように広がり立ち込めた腐食の霧が臨界を超えようとしている。



『フフフ さぁいよいよ審判の時が来ますよ〜』と笑ったボノスから、手に持つ『光る笛』をネロが奪い取り…… 突き飛ばす。


「なっ……せ、聖遺物がっ――!!! な、なぜそれが聖遺物だと!?」


『…………………』

 ネロは『信じられない……』と呆れた目でボノスを見る。


「ちょっ……それが無いと私が死んじゃう! 返して! 返して――!!!」


「お前…… 信徒なら喜んで身を捧げるのでは無かったのか?」


「ダメっ! お願い返して! それが無いと死んじゃう―― 死んじゃう――!!!」  


『ごふっ!ぐはっ……』 再度ネロが騒ぎ立てるボノスを蹴り飛ばす。


「自分だけ生き残ろうなどふざけるのも大概にしろ。 自分がまいた種だろう…… そこで皆と一緒に見ているがいい」


『あぁぁあああ…… あぁああああああ…………』と絶望に打ちひしがれ必死にしがみつくボノスを、ネロは『静かにしてそこで見てろっ!』とまた蹴り飛ばす。



 ネロは今にも落ちてきそうな暗雲立ち込める空を見上げる。

 そしてその時はくる――


 ボォウッ――!

 一瞬空気が弾けた様な気がした。


 そして天が落ちてくるように、臨界点を超えた腐食の雲から真っ黒なスコールが滝の様に落ちてくるのが見える。



『こんなの、誰も助からんだろ』 そうネロが呟いた時……


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ ドンッ――!!!


 シャンポール王都外壁に建てられた監視塔の上に六柱の青色に燃え盛るイフリートが顕現した。

 そしてさらに――


 ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ ドンッ――!!!


 別の監視塔の上にはシルフィードが六柱顕現する。


 そして――

 『原初の炎』で青く燃え盛るイフリートが物凄い速さで王都の上空を一直線に飛び交差する。


 ドォオオオオ――――――ンッ!!!


 そのイフリートの軌跡が『六芒星(ヘキサグラム)』を描き出す。


 六芒星(ヘキサグラム)は力を増幅させる魔法陣、ララが得意とする術式だ。

 よく見ればイフリートが立っていた監視塔の上には精霊ルナの大きなクリスタルが立っている。

 そのクリスタルを起点として使い六芒星(ヘキサグラム)を完成させたのだろう。


 そしてその下に同じ様にシルフィードも一直線に飛び軌跡で六芒星(ヘキサグラム)を完成させる。



 青い『原初の炎』で描かれた六芒星(ヘキサグラム)の下に――

 シルフィードの風で描かれた六芒星(ヘキサグラム)が描かれている。


 王都の人々が見上げる上空に、積層型に組み上がった極大な立体魔法陣が描き出されている。

 その六芒星(ヘキサグラム)の積層型立体に組み上げられた魔法陣から巨大な青い『原初の炎』が立ち昇る。


 ゴォオオオオオオオオオオ――――ッ!! 


 さらにその下の魔法陣からシルフィードの暴風が巻き起こり、風が炎を伴う旋風が巻き起こる。

 それは原初の炎の力を増大させ火炎旋風となる――


 王都上空を青い炎が埋め尽くし、圧倒的な火力と暴風の力で滝のように落ちてくる腐蝕の雨を吹き上げ浄化していく。


「あらあら〜 ほんとあの子達は派手な事が好きねぇ〜 まぁ出来なければシャンポール王国も腐蝕の奇病が蔓延しているボーヌ王国の二の舞になっていたのでしょうけれど…… ねぇボノス?」


 『あぁぁあああ…… あぁああああ、そんな…… 天使の御業が――天罰がぁ――……』


 青い『原初の炎』が黒い雨もろとも天を覆う雲をも、一瞬にして焼き尽くしていく様を見てボノスが呻く。


「ばっばばばば ばかな…… こんな事――あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない――っ! あのネフリムの力を消し去るなんて、あり得るはずがないのです――――!!!」


『グハッ』 騒ぎ出して五月蠅(うるさい)いボノスをネロがまた蹴り飛ばす。


「フンッ よかったでは無いか。 お前もこれで命拾いしただろ?」


 ⦅あり得ない……あり得ない……あり得ない……あり得ない……⦆ ブツブツ


 地に這いつくばりボノスは今起きた出来事を否定するかのように呟いている。

 そして『やはり――』と叫び、オネイロスを見上げる。


「オ、オネイロス様。やはりあなたの力が必要です。 どうか力を――!!!」


「ふん…… だからお前は生理的に――……」

「オネイロス様! せめてその笛をお吹きください。 そうすれば……」


「お前、私を舐めておるのか? それを私が吹けばアルバリサの扉がもっと開いて大変な事になるのであろう?」


『いや……あ、あの――それはその――………』とオネイロスに図星を突かれ狼狽える。


 だがボノスが『あっ!』と何か良策を閃いたように口走る。

『そ、その笛  あ、甘くて美味しいですよ!』……と


『……はあ?』 『…………』 『…………』 『…………』


 流石にその苦し紛れの物言いに、近くで聞いていたシャルマ達も『笛が飴のように甘いはずが無いだろ』と呆れている。


 だがボノスに奇跡が起こる。


「あ……甘いのか?  ほ、ほんとに甘いのか!!?」


 ⦅⦅⦅⦅ええええええっ――――!?⦆⦆⦆⦆


「ちょっとネロ様! そんな苦し紛れの嘘に引っかからないでください!」


「し…しかし……そ奴が甘いって―― お前嘘だったら破滅しかないぞ! ボノス」

「ご、ごめんなさい嘘でした」


 ボノスが嘘を認めて皆が安堵したところで……

 また皆でアルバリサの方に振り返り、まだ黒い霧に包まれ事態は解決していない事を確認する。


 すると後ろから………

 『ピッ――』とネロが笛を吹く音が聞こえてくる。

 吹いても音がしないはずの笛から音が鳴っている。


「へ? 嘘でしょ?」

「なっ! ネ……ネロ様なぜ笛を?」

「ネロ様…… バカなの?」


「だ、だって…… だって本当は裏の裏に返って笛が甘いのではと思ったのだ――!」

 流石のボノスですら口を開けて驚いている。


 笛の音を聞いて「ピクッ」とリサが反応しガクガクと震え出す。


「ほ、ほほほほら ネロ様リサがっ! リサが――!!!」


「おのれボノス、お前だけは絶対に許さん! この様な狡猾な罠に私を嵌めるなど、屈辱じゃ――!!!」


『…………』 『…………』 『…………』 『…………』

 流石に誰も言葉もない。


 アルバリサから吹き出す黒い霧は先程の比ではない。

 とても濃密で濃い霧が、先程までは天に向かい霧散していったが、今度はリサに纏わりつき密度を増し大きくなり、だんだんと人の形を成していく。

 そして大きな人の形を成す黒い霧は最後に片翼の羽を拡げ―― 漆黒の天使の姿を模る!


「ネロ様。 あれ、あれは――!!!」

「て、天使様?」

「あの中にリサが!」


 巨人の大きさとなったその人の形を模したモノが飛び立ち、シャンポール王都上空で留まる。

 王都住人が見上げた先には――

 雲の切れ間から差し込む光芒に照らし出された片翼の漆黒の天使が降臨していた。



 王都中が騒然とする。

「て、天使様が降臨なさった……」

「で……でもあの漆黒の色はなんだ?」

「さっきの空を覆った、漆黒の雲と同じ色じゃないか?」

「あの天使様……どう見てもやばく無いか?」


 住民達も降臨した天使の漆黒の色と片翼、そしてただならぬその雰囲気に『あれはヤバい』と気づき逃げ惑う。



 そしてこの宮廷では――、

 信者達が慈悲を乞うように漆黒の『ネフリム』にひれ伏し……

 ネロは『ネフリム』を見上げて呟く。


「お……おのれボノス。 こんな事を企むとは許さんぞ!」


 オネイロスのその理不尽な物言いに、さすがのボノスも『そんな……』と泣きそうだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんか文章っていうか…キャラの知能レベルがいきなり下がりすぎていませんか?作者さん変わりました??
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