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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章24 空を覆う腐蝕の雲

 

「まっっっったく使えない奴らですねぇ。 言われた事も守れないなんて…… フフ」


 ボノスと言う男の言葉にネロが呟く。


「フン! 白々しい…… お前、私がフュエに憑いているの知っていたのでしょ? この状況はなるべくしてなった事、お前が想定していなかったはずが無い」


「これはこれは夢の上位精霊オネイロス様。 お会い出来て光栄です。 こうでもしなければ貴女様は出て来て下さらないですから」


「………………」


「どうでしょうオネイロス様。 この私にも力を貸して頂けないでしょうか? ソーテルヌ卿の元では貴女様は多くの精霊の一柱でしかない。 ですが私は貴女様だけを至上とし一番に信仰致しますよ」


「フンッ! 私だけを信仰と言う言葉は悪くは無いが、お前のような無知なる者に力など貸す訳がなかろう。 精霊と人との契約は血の契約、私はディケムのマナに溶け込んだ様なもの。 ディケムが死ぬまで私とディケムの契約は永遠なのだ」


「はい残念ですが存じ上げております。 ですがオネイロス様は勘違いしていらっしゃる様ですねぇ。 これだけは覚えておいて欲しいのですが、私達はソーテルヌ卿の敵ではありませんよ。 先ほどのような下端の信者はバカなことを言っておりますが、むしろ味方と言っても良い存在なのです。 やり方が違うだけで貴女様の目指すところと私達が目指す所は同じなのですから」


「私の目指す所…… だと?」」


「はい。 オネイロス様がソーテルヌ卿から離れられないことも知っております。 ですが精霊様は個ではなく全でもありますが、全であり個であるとも言える。 今も貴女様の意思でフュエ王女を助けたように、私の事も守護して頂ければ良いのです。 私達は敵対する意味など無いのですから…… 夢の上位精霊オネイロス様の強大な加護を頂ければ、私は貴女様に絶対の信仰を捧げます」


「言いたいことはそれだけか? ならば話はこれで終わりだ。 私はお前など守護するつもりはない」


「な……何故でしょう? 貴女様はフュエ王女を守護している。 そして目指す所の大望は同じ。 むしろ私達の活動は貴女様の主人ソーテルヌ卿の助けになるはず。 ならば無能な王女を守るより私に協力した方がよっぽど有意義とは思いませんか?」


「何故? それは……私の主人が生理的にお前を好きになるとは思えないからだ」


「せ、生理的にって…… そんなもの大望の前ではどうでも良い事では無いでしょうか!?」


「お前は『そんなもの』と思うことを大切にしないから皆に嫌われるのだ」


「わ、わわわわわ……私は嫌われてなどいませんよ!!!」


「その慌てようが滑稽よのぅ フフフ……」


「ま、まったく残念です。 貴女の力があれば、あのアルバリサ王女の力を自由に覚醒出来たものをっ! そうすればあの方の一番役に立てると言うのに」


「お前の狙いはやはりそれか。 私の力を使えればアルバリサを深く眠らせもう一人のアルバリサを完全覚醒させられる。 まったく…… お前はそうやって頭に来るとすぐ核心を話してしまうところが小物だと言うのよ」


「う…うるさい! うるさい! うるさいっ!!! ならば私の力をお見せしましょう。 貴女が顕現している時点ですでに扉は半分開いているのですから。 さぁアルバリサ王女、完全覚醒とはいきませんが、その本当の力の一端を見せて下さい。 そうすればオネイロス様も考えを変えてくれる事でしょう」


 ボノスと言う男、他人の力を自分の力の様に言う。

 今から使おうとしている力もアルバリサ王女の力。

 ボノスはその力を暴走させ、きっかけを作ろうとしているだけなのに。


 ボノスが学校の時と同じ様に、薄っすらと光を帯びた小さな笛を懐から取り出し吹く。


「いや――!!! ダメ私はそんな力なんて使いたくない」


 抵抗を見せたアルバリサだったが…… 今回はいつもと少し違う。


 キィ――ン キィィ――ン キィィィ――――ン!


 アルバリサの中のもう一人とオネイロスが共鳴を始める。


「えっ? この共鳴は――ダメ 私の力じゃ抑えられない」


『これは……』とオネイロスも自分がアルバリサと共鳴している事に驚く。


「そうですオネイロス様。 ネフリムとは天使と人の間に出来た子、神に近い存在です。 ネフリムとイグドラシルは共鳴しあい力を増幅させる。 それは貴女様精霊とイグドラシルの関係に近い。 そしてこのイグドラシルのお膝元で、私のこの笛で閉じ込められたネフリムの扉を開け、夢・願いの力を増幅させるオネイロス様の力があれば――」



 アルバリサの意識が飛ぶ――

「がっ!? あうぁが! おお、あおおお…… あがががあああ――!!」


 意識を失いながらもアルバリサが抵抗をしているのか激しく痙攣を起こす。

 しかし――

 強大なイグドラシルと上位精霊オネイロスとの共鳴に、ただの人が抗えられる筈もない。

 程なくしてアルバリサの意識は完全に消え、体から可視化される程の強くどす黒いマナが溢れ出す。


『リサッ! ダメ リサッ――!!!』シャルマ達の呼び声もリサにはもう届かない。


 アルバリサから、今までの暴走の時とは比べものにならない、どす黒いマナが溢れ出す。

 今までは意識を失いながらも心の扉に鍵がかかっている事で抑制されていた力が、オネイロスとの共鳴で扉が開きかけている。

 そしてイグドラシルとオネイロスとの共鳴で力も増幅されている。


 漏れ溢れ出した膨大な漆黒のマナは、蠢きながら背中へと這いずり天を目指して漆黒の羽を伸ばした。

 これまでの二回の暴走とは比べ物にならない程大きな漆黒の片翼の羽を――


 そして羽から……

 一枚 はらり と濡羽ぬれはが舞い落ちる。

 そのまま ひらりひらり と左右に揺れ、地面へと触れる……その瞬間――

 羽は霧散し膨大な黒い霧となり天を目指し昇っていく。


 アルバリサの体がまるで腐食の地獄と繋がる入り口のように――

 体から膨大な腐食の霧が溢れ出している。

 腐食の霧は天へと昇り、雲のように空に広がり、シャンポール王都を覆っていく。


 宮廷より天へと昇っていくドス黒い霧、そしてそれが見る見る王都を覆っていく異様な光景。

 流石に貴族街の貴族も街の住人もこの異変に気づき、空を見上げ指差し騒ぎ出す。


「はぁ〜はっは―― どぉ〜ですかオネイロス様この膨大な腐食の霧は? この圧倒的な力は? これでもまだ扉は全て開いてはいないのですよ。貴女様が私に力を貸してくれさえすればこれ以上の力を手にいれる事が叶うのです。 そして内側から発生してしまえば、メガメテオすら防いだこのソーテルヌ卿の結界も意味を成さない。 いくらソーテルヌ卿と言えどそう簡単にはこの事態を収集できない。 さぁ〜浄化の時間はもう直ぐですよ〜」


「…………………」




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