表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
382/553

第七章19 戦争準備

 

 ラトゥールの現状報告を終え、会議の内容を対策へと進めようとしたとき、さらにラトゥールから新しい情報が付け加えられる。


「ディケム様。 ボーヌ王国は国王が臥せってから政は宰相を中心に国家評議会が行っていると聞きます。 その宰相の名は『アルキーラ・メンデス』。 この男元はロマネ帝国の貴族だったと報告にあります。 そして帝国から流れ着いた『アルキーラ・メンデス』はボーヌ国王の信頼を勝ち取り、瞬く間に宰相の地位にまで上り詰めた。と言う事です」


「元帝国貴族が今のボーヌ王国の宰相。そして現時点でボーヌ王国の政治を動かしている中心人物がその『アルキーラ・メンデス』という男。 すると此度の事変は帝国が画策したと考えた方が良いと言うことか?」


「私もそう思って調べていたのですが……」

「違ったという事なのか?」


「いえ……まだわかりません。 ですがその……」

「ラトゥールにしては歯切れが悪いな」


「はい。 その『アルキーラ・メンデス』なる貴族、少しおかしいのです。 ()()にロマネ帝国を調べてもその男の名はほとんど出てきませんでした」


「するとその男の名は偽名? もしくは帝国出身ではない…… と言う事か?  ん? しかし『普通に』と言ったが、普通じゃないやり方なら出てきたと言うことか?」


「はい。 最初は偶然発見したのですが、『アルキーラ・メンデス』の名はロマネ帝国の歴史書にたびたび名前が出てくるのです。 数百年、数千年前の文献にも…… 人族の寿命は一〇〇年程、もし同じ人物ならばあり得ない事です」


「それは…… 血族が過去の先祖の名前を使うことは珍しくない。 そう言う事ではないのか?」


「はいその可能性もあります。 ですが何か引っかかるのです。 人は自分が生きた証として名を残そうとするものです。 自分が如何に偉大な事を成したのか、自分がどれだけの権力まで上り詰めたのか……と。 しかしその『アルキーラ・メンデス』は歴史に隠れるように表立って目立たぬように動いている様に思えるのです。 文献に残っている名は他の誰かが歴史を書き留めたときにたまたま名が残ってしまった程度です。 此度のボーヌ王国の件も表明は国王と国家評議会の連名で公布されるようで『アルキーラ・メンデス』の名は巧みに隠されていました」


「…………」 「…………」 「…………」 「…………」


 ラトゥールの話を聞き皆が『アルキーラ・メンデス』に怪しさと得体の知れない不気味さを覚えていた。

 しかし今はそれ以上の情報が無いので、今後『アルキーラ・メンデス』に注視して皆で調べていく事でこの件は棚上げとなった。




「ディケム様。 最後にもう一つ不可解な事があります」


 俺が頷くとラトゥールが説明を始める。


「今現在ボーヌ王国は奇病の蔓延で戦争どころでは無いはずなのです」

「奇病が蔓延?」


「はい。 その奇病に感染すると体が腐っていくというものなのですが…… 原因はまだ分かっていません」


「腐っていくと言うことは…… 腐食魔法を暴走させたアルバリサ王女と何か関係が?」


「まだわかりませんが…… 偶然にしては出来すぎていると思いますので今調べています。 そして……ボーヌ王国は五大国同盟の中でも最も『ルカ教』が盛んだった国です」


「ラトゥールは『アルバリサ王女』『奇病』『ルカ教』に何か繋がりが有ると言いたいのか?」

「はい」


 今はまだ四門守護者以外の誰にもアルバリサ王女が『ネフィリム』だと言う情報は伝えていない。

 ルカ教徒が意図的にアルバリサ王女の力を発動させたことから、無関係である筈がない。




「以上の情報を踏まえ、我々総隊の暫くの基本方針は諜報部隊メリダを中心に情報収取を基軸とし、各部隊ごとに有事に備え準備を整えることとする!」

「「「「はっ!」」」」


「メリダ、諜報部隊はラトゥールと連携して情報収集および、『運び屋』の流通網を使い物資のコントロールをしろ。 ボーヌ王国およびロマネ帝国への流通を止める。 特に武器になり得る物資は全て止めろ。 抜け道となり得る他の小規模『運び屋』はこの機会に全て買収だ」

「はっ!」

「裏の流通はメフィストをつかえ! 少しの漏れも一切許すな」

「はっ!」


「軍装部隊レジーナ」

「はっ!」

「ドワーフ族は土魔法を扱うことで有名だ、軍装部隊は土属性に有利な『風』『木』属性の装備を整えておいてくれ」

「はっ!」

「それから軍装部隊には負担をかけるが…… シューティングスター対策も行わなければならない。 シューティングスターは『月竜』だ、その属性は『聖属性』になる。 俺の従属精霊オネイロスの『夢属性』は聖属性に有効な『眠(死)属性』も含む。その武器も用意して欲しい特にララの武器は必ずだ。 だが『夢』と『聖』属性はお互いに有効属性でどちらが有利となるものでは無い。 『夢』への有効属性も『聖』となるから弱点になり得る防具は揃えなくてもいい」

「はっ!」


「薬師部隊フィノ」

「はっ!」

「薬師部隊はエルフ族と連携しポーションの増産を急ピッチで行ってくれ。 王国騎士団の分も必要になってくる。 そして……ボーヌ王国、ロマネ帝国のポーションも必要となる可能性がある」

「はっ!」

「ラトゥール、ダークエルフ族のエリゼをフィノにつけてやってくれ。 それとエリゼにはアールヴヘイムにて『アルキーラ・メンデス』の情報も調べてもらってくれ。 『時の観測者』達の下ならばもっと面白い情報が出てくるかも知れない」

「はっ!」


「精霊部隊、精鋭部隊、竜騎士部隊は風と木属性の『精霊召喚宝珠』と属性装備での訓練を中心に行なってくれ。 もしこのまま本当に戦争になるようなら、人族国同士の戦争は王国騎士団が前面に出て戦う事になるだろうが、我々総隊は他種族ドワーフ族と戦う事になると予想される。 その準備をしておかなければならない」

「「「「はっ!」」」」



「そして全員にこれだけは言っておく! 我々の最善は戦争回避。 だがもし開戦が避けられなければ早急な戦争の終結だ。 民間人の命を最優先とし敵国他種族だったとしてもそれは適用される」


「「「「はっ!」」」」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ