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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章17 ボーヌ王国事変勃発 1

 

「ディケム…… なにニヤニヤして見てるのよ」


 隣からララに変な目で見られている。

 俺が見ている訓練場には、いつも仲良し四人組フュエ王女、シャルマ嬢、フローラ皇女、アルバリサ王女が自分たちの作った魔法の杖を使って軍事訓練を受けている。


「いや、あの四大国のお姫様達があぁやってずっと仲良くしていられたら良いのになぁ…… と思って」


「…………うん。 やっぱりラトゥール様の報告書に書かれていた『ネフィリム』って大変な事なのよね?」


「たぶん。 それに現にルカ教が王都に入って事件を起こしてるし、意図的にアルバリサ王女が暴走させられている。 何かを企んでなければ無駄に騒ぎを起こしリスクを犯す意味がない。 そしてボーヌ王国……」


「ボーヌ王国が何かあったの?」


「ボーヌ王国は女王がアルバリサ王女を産んで亡くなったと聞く。 そのあと国王も伏せってしまい長い間国政は宰相が中心に国家評議会が執り行ってきた。 だから今まで『人族五大国同盟会合』とかでも強い主張も無く、可もなく不可もない当たり障りのない国政を行なってきた……」


「……うん」

「だから気付かなかった盲点だったのかもしれない」

「えっ!?」


「今ラトゥールが調べてくれてるけど、ボーヌ王国はかなりヤバイ事になっているかもしれない。 そうしたらあの四人も……あんな風に一緒にいられなくなるかも知れない」


「えっ! でもその時はディケムが守ってあげれば……」


「ララ。 ジョルジュ王国やモンラッシェ共和国の事変で俺たちも思い知った筈だ。 俺たちは政治には口を出せない。 出せるようにする事はできるかも知れないけど、でもそれは軍国主義の始まりでしかない。 この国……いやこの長年培われてきた人族のシステムを俺たちの好きなように変えてしまう勇気は俺には無いよ」


「でも…… エルフの国のシステムは変えちゃったじゃない?」


「それは…… そこに戦争と言う避けられない悲劇があったから。 だから俺たちは戦争と言う悲劇が起こった後にしか事を成せない。 戦争が起こる前に事を成せば俺たちが戦争の火種に成ってしまう」


「いろいろ大変ね、ディケムも。 子供の頃のように正義のヒーローって悪人をバッタバッタ倒す事は出来ないのね」


「政治が絡むと善悪なんて白黒付かないからな、戦争する両国にはそれなりの主張があるし正義もある……」

「面倒臭いわね」

「あぁ……」



「でも新しい情報が入るまでは、今は難しい事考えても仕方ないんでしょ?」

「うん…… まぁ」

「ならディケム! 私あのフュエ王女様達の蝶の羽を纏う杖欲しいな〜」

「ララは『神木の枝』で作った特別な杖持ってるだろ?」

「だってあれ…… 可愛いんだもん」

「その気持ちは少しわかる。 だけどあの『琥珀(アンバー)』と『埋もれ木』は自分の分だけしか採ってはいけないと決められているらしいぞ」

「なら今度連れて行ってよ〜」

「今度な〜」




 そんな話をしていた数日後、人族を激震させる大事件が起こる。



「ディケム様。ボーヌ王国が『人族五大国同盟』からの離脱を表明するかもしれない。と報告が有ります」

「なっ! ………………」


「さらにロマネ帝国、ドワーフ族国との同盟を締結し……」

「締結……し?」

「『人族、魔神族、エルフ族』の三種族同盟への宣戦布告をするつもりのようです」


「宣戦布告……だと? なぜだ…… 人族同盟を離脱して他国と同盟までは理解できなくもない。 だがあえて宣戦布告する意味がわからない!」


「はい。 正直正気の沙汰では御座いません」

「しかし…… これによって人族軍が一気に弱体する事は言うまでもない」


「はい。先の戦いでジョルジュ王国もモンラッシェ共和国も壊滅的な被害を受けています。 ですから『アルザスの悲劇』戦役以降国力を回復しつつあった残りの四大国の戦力が二つに分かれてしまう事になります」


「ラトゥール これからすぐに軍事会議を行う。 至急ソーテルヌ総隊の各部隊長と副隊長の招集をかけてくれ。ラス・カーズ将軍も呼んでくれ。  また明日までに王国騎士団長の招集も行う。 ワイバーンなら一日でなんとか飛んで来られるだろう」

「はっ!」


「それと……フローラ皇女とアルバリサ王女を屋敷から出すな。 一時的な強制拘束とし部屋に隔離とする。 もちろん丁重にだ。罪人扱いは許さない」

「はっ!」




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