第二章2 王都への旅路
俺達四人はシャンポール王都に向けて旅立つ。
王都までの道のりは馬車で一週間、徒歩だと一カ月ほどかかる。
もちろん馬車はサンソー村に住む一般住人の経済観念からすると贅沢なものだ。
しかし俺達四人は二年前より王国から給料をもらっている。
特に俺は二年前伯爵に叙爵(爵位を授けられる)されてからは、毎月金貨2000枚という法外な給料を貰っている。
両親にすべて渡そうと思ったが…… 『俺達にはお金は必要ない』と断られてしまった。
そんな事で俺たちは今お金には困らない状況なので馬車で王都に向かうのも簡単なのだが………
『俺達四人の冒険が今ここから始まる!』と…… ディックのこの一言で全てが決まった。
王都まで一ヵ月の徒歩の旅だ。
まぁ俺としても一週間も馬車での移動は体がなまってしまうから、徒歩の旅も鍛える意味では有りだ。
それにいつも一緒にいると言っても、四人で昼夜問わずずっと一緒に寝食を共にするのは初めてだ。
王都では四人で一緒に暮らすことになっている、この一ヵ月で慣れておくのもいいだろう。
そうして俺達は、両親含め生まれた時からお世話になった村の住人から盛大に見送られ村を出発した。
サンソー村を出発して二週間、旅は驚くほど順調だった。
シャンポール王都までの街道は整備され、魔物などに遭遇する事はこの二週間殆ど無かった。
『冒険だ!』と意気揚々と出発した俺達四人は物足りなさを感じながらも、アクシデントが起こらない事に安堵し街道を順調に進む。
しかし旅もちょうど半ばに差し掛かったところ、街道近くの丘に建つ古い砦跡をゴブリンが占領したと噂を耳にした。
今日の宿泊のために立ちよった小さな宿場村はその話でもちきりだった。
村に着いてすぐ俺たちは小さな宿屋に四人部屋を確保した。
冒険者を目指す俺達四人パーティーは、ララには申し訳ないが男女別の部屋など贅沢な旅などしない。
冒険者なら女性だけ別の部屋どころか他の人と同じ部屋で寝なければいけない事も多々あるからだ。
冒険者を目指すなら今のうちに慣れておかなければいけない。
部屋を確保して、俺たちは夕食の為と情報収集のために酒場に向かう。
もちろん酒などは飲めないが、小さい村での外食は酒場しか無いのだ。
だが冒険者志望の俺達には酒場に入れる事はとてもありがたかった。
様々な情報を集めるのは酒場が一番効率いいからだ。
「すみません。俺達シャンポール王都へ向かう途中なのですが、近くの丘の砦をゴブリンが占領しているって本当ですか?」
「おう坊主。 そうなんだ、先日行商のキャラバン隊が襲われてな――………」
一通り酒場の情報を聞いてまとめると。
街道横の丘にある旧砦跡をゴブリンが占領したらしい。
先日キャラバン隊が襲われたため街道は一時封鎖、急ぎならば迂回して山を越えなければならない。
領主の軍隊が派遣されたがあえなく全滅。現在王国からの討伐隊の派遣を待っている状態らしい。
その他気になる情報はゴブリンの数は一〇〇匹前後。
そしてゴブリンの中にゴブリンキングがいる模様、さらに魔法を使う個体も確認されている。
非常に統率が取れた危険な軍団になっていると言う。
また村人が数人さらわれて、助けに向かった領主軍の兵隊も数人そのまま捕虜なったらしい。
俺は三人に聞く。
「さて。 非常に危険なゴブリンみたいだけど……どうする?」
「アルザスの奇跡がここに来ているのに、捕虜を見ないふりは無いだろう?」
「確かに国から給料をもらっている身としては放っておけないが…… 実質俺たちはまだ子供で本当なら関わらないほうがいい」
「どうしたのディケム。 乗り気じゃないの?」
「今回のケースは非常に難しい。人質がいるからね。 人質を盾に取られた時、素人の俺たちは判断を誤る可能性がある」
「………………」 「………………」 「………………」
「アルザス戦役では味方は全員軍人だった。 もし俺が味方にも被害を出したとしても責められる事は無かった。 しかし今回は違う」
三人の顔色が変わる。
「さらに俺達もディック、ギーズ、ララ。お前達も大規模の実戦は初めてだ。 そして特にララ…… ゴブリンは若い女性を襲うことが多いい。 ミスれば酷いことになる可能性も視野に入れなければならない」
ララが『ひぃいい』と一気に引き攣り縮こまるのが分かる。
そして四人で『う〜ん……』と暫く悩んでいると……
ギーズが思い出したように話し出す。
「そう言えば…… この村にジョルジュ王国の子爵の御子息『マルケ・アドリア』様が来ているらしい。 俺達と同じ魔法学校入学のためにシャンポール王都に移動中、このゴブリン騒ぎに遭遇したらしい。 取り巻きと一緒にゴブリン討伐に意気込んでいるらしいよ」
「それならマルサネ王国の子爵の御令嬢『プーリア・ネグロ』様も近くに居るらしい」
「へ~、でもこの村ではそんな貴族様見かけた事ないけど?」
「お貴族様はこんな小さな村の宿屋なんか泊まりたくないのだろう。 近くにテントを張って贅沢な野営でもしているのだろ」
「う~ん。 ゴブリンに挑むならそのマルケ様、プーリア様と合流した方が良いと思うけど……、こんな村人丸出しの俺達に取り合ってくれるとは思えないな」
「ディ、ディケム……… お前一応シャンポール王国の名誉伯爵様その人だぞ! 親が貴族の俄か貴族とは違うんだ。 しかも伯爵は子爵より偉いんだぞ!」
「ディック……… そんなこと言われてもだれが俺を見て伯爵だと思うんだよ」
「うっ……… たしかに」
「でもディケムもシャンポール国王様より貴族の証『紋章』を貰ってるんでしょ?」
『あぁ……』と俺は三人に『紋章』を見せる。
俺の紋章は。
中央の盾を四分割にし四大元素精霊を現す『水』・『火』・『風』・『土』が描かれている。
そしてその盾を力の象徴『ドラゴン』が両脇を支え、盾の上には権威を現す『王冠』が描かれている。
精霊使いの俺にピッタリの紋章だと思っている。
「す、凄いわね………」
「あぁ確かにこんな紋章を平民が見せてきたら…… 盗んできたと思うなきっと」
「紋章と人となりとのギャップがひどいですね………」
「お……お前たちが一番ひどいと思うぞ」
「まぁ信じてくれなくても本物なのだから訪ねて、それから考えましょうよ」
「確かにそうだな」
「うん。そうしよう」
俺達は翌日。マルケ様、プーリア様のキャンプを訪ねることで同意し、酒場の料理に舌鼓を打った。




