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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第7章 腐りゆく王国と隠されたみどりご
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第七章13 アルバリサ王女の秘密

 

 ――フュエ王女視点――


「ねぇネロ。 『精霊虫』ってなに?」

「さっきのアンバーの中の虫のこと?」

「うん」


 私達はエリゼさんに連れられて、このイグドラシルに作られた迷路のように入り組んだ宮殿内部を歩き最下層を目指す。

 目的地はそのさらに下にあると言う地底湖。


「フュエ。 動物と魔物の違いは分かるか?」

「動物と魔物の違い? う~ん…… この前戦ったファイア・ウルフと普通の狼の違いは火を吹くとかかな? 火を吹いたり氷を吹いたりするのが魔物なの?」


「まぁ表面上の違いはそうね、あとは大きさだったり色だったり」

「うん」


「でもなぜそんな違いが出てしまうのか? 動物がいくら住む環境に適応し進化すると言っても狼が火を吹けるようになるのかな?」


「普通の進化では無理だと思う」


「そう。 大雑把にいうと魔物とはその昔、動物や虫に精霊や悪魔が宿ったモノ。 精霊と契約すると精霊はその契約者のマナに溶け込む。 その精霊が宿った動物が子をなすと、その子は多少なりとも精霊の影響を受けるの。 それが長い年月交じり合って動物も変異し属性が残った個体が簡単に言えば魔物よ」


「えっ? じゃぁ精霊虫って精霊様が虫と契約したと言う事なの?」


「虫が契約など出来るはずが無かろう。 大雑把な説明だと言った筈だ…… 本当に低級の精霊には自我がほとんど無いと言ってもいい、その精霊が勝手に虫に寄生したようなものだ」


「ならアンバーに入っている精霊虫って魔物なの?」

「それを魔物と言ってしまうと、ディケムも魔物になってしまうぞ」

「あぅ……」


「精霊虫とはただの虫に低級精霊が宿ったモノ。 それが琥珀(アンバー)に閉じこめられ属性だけ琥珀(アンバー)に残ったのだろう。 普通は宿り主の死と共に精霊も消滅するのだが、宿り主の体が樹液の中にそのまま保存されてしまう事で属性だけが残っているのだと思う。 原理は全然違うがフュエの持っている属性武器と似ている感じだな。 フュエの武器スプラウトメイスは精霊結晶を使ているから、琥珀(アンバー)とは格を比べるまでもないが…… 普通の属性クリスタルと琥珀(アンバー)を比べれたら、精霊が宿った虫の素体自体が入っている分強力かもしれないな。 まぁそれも閉じこめられた精霊の強さに依存するから何とも言えないが…… だが何よりも見栄えが可愛い」


「うん♪ だけど…… そうなるとアンバーに閉じこめられている虫が精霊虫か普通の虫かをどうやって見分けられるの?」


「マナの訓練をしたら普通に分かる様になると言いたいが、今すぐどうこう出来る問題じゃないからね。 だけど心配する必要はない。 神木の樹液、そのマナに溢れた樹液にたかれる虫など精霊虫しか居ないだろうからね」


「へぇ~ そうすると地底湖にある琥珀(アンバー)に閉じこめられている虫は全て精霊虫って事で良いのね?」


「あぁ。 ほぼ確実だろう」


 ネロの話を聞いて、私達四人の興奮は高まっていく。







 ――ラトゥール視点――


「それでアルコ長老、時の観測者としてのあなたの見立てを聞かせてくれ?」


「ラトゥール殿。 あのアルバリサと言う王女は厳密にいえば人ではありません。 おそらく……【ネフリム】でしょう」


「ほぉ…… それでネフリムとは?」


「はい、ネフリムとは…… その昔『天使』が地上に降臨し人の娘を妻としたと言われています。 そして天使と人との間に生まれた子を『ネフィリム』と呼んだそうです」


「人と天使の子だと! アルバリサ王女がそのネフリムだというのか?」


「はい。 ですがあの娘はネフィリムにしては少しいびつと言うか…… 不完全な感じがいたします」


「不完全? そういえばアルバリサ王女が暴走した時に纏ったマナが片翼の漆黒の翼だったと報告があった」


「片翼、そして漆黒ですか…… 本来あるべき両翼が片翼しか無く、天使のマナが漆黒と言う事は堕天してしまっている可能性があります。 その事から推測してもアルバリサ王女はネフィリムとして不完全体でしょう。 元々天使と人との間に子供が出来る事自体が奇跡なのですから、生まれた子が不完全体だったとしても不思議な事ではございません」


「ならば人族領のどこかに天使が降臨して子をなしたと言う事なのだな?」


「そこが問題です。 私達はハイエルフと言う長寿を持つことから『時の観測者』としてこの世界の情報を収取してきました。 もちろん他種族戦争中と言う事もあり全ての情報を集められる訳では無いのですが…… 人族と同盟を結んでからは人族の情報も多く集めました。 ですが私たちが集められる表に出て来る情報の中には、アルバリサ王女の親となる天使が降臨した記録など一切情報はございません」


「と言う事は?」


「アルバリサ王女がボーヌ王国の王族と言う立場である事。 一切ボーヌ王国の天使降臨の話が他国には伝わっていない事から推測すれば…… 『ボーヌ王国が意図的に天使を降臨させ人為的にネフリムを作ろうとした』と考えるのが自然でしょう。 もし意図的に情報を隠したのではなければ、偶然舞い降りた天使の情報やまして王族と天使の間に子が出来た情報など、伝わらない事などあり得ません」


「なるほど…… アルコ長老助かった礼を言う。これからボーヌ王国を徹底的に調べてみよう」


「ラトゥール様、お気を付け下さいませ。 私はエルフ族の長老として、そして時の観測者として三〇〇〇年もの長い時を生きて来ましたが…… その私でさえ『天使降臨』や『人と天使の受胎の方法』などは知り得ません。 そんな事を人族の一つの王国に過ぎないボーヌ王国が知っているとはとても思えないのです。 何か別の我々の知らない大きな力が動いているのかもしれません」


「あい分かった。 忠告肝に銘じておこう」





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