第二章1 出立
アルザス渓谷の戦いの後、俺は王都に連れて行かれ大変だった。
街中での凱旋パレードなどに参加させられ、謁見の間ではシャンポール王より、
勲章【王国軍英雄勲章】と爵位【名誉伯爵位】が授与された。
一度の功績で伯爵位はどうかと思ったけど……
それほどまでにこの度の戦いは人族存亡の要だったらしい。
その戦いを収めた俺をラス・カーズ将軍の下にすることはできない……
と言う政治的判断だったらしい。
俺はその日、国王より直々に『ソーテルヌ』の貴族名を貰い、シャンポール王国貴族『ディケム・ソーテルヌ名誉伯爵』となった。
ラス・カーズ将軍と同じ名誉伯爵だから、一代限りの子供に相続できない爵位になるらしい。
田舎育ちの子供に爵位とか………
正直、何度も断ったがラス将軍からも説得された。
「これは国民、いや人族全体の士気を上げるために大切なことだ! 君の名前が人々の希望になり盾となり活力になるのだから俺からもお願いする。 アルザスの悲劇で俺の『英雄ラス・カーズの名』は地に落ちた。 しかしアルザスの奇跡が人々の新たな希望となったんだ。 たのむっ! 人族の希望として神輿に担がれてくれ!」
「今…… 神輿って言っちゃいましたよね?」
「あっ……いや…… アハハハハ」
『ホント、ラスは正直でアホですね』とラローズさんもあきれて笑っている。
「でもディケム君。 あのアルザス渓谷での戦いで 私たちはもう駄目という時あなたが現れた。 少なくとも私達にはあなたが本当に希望の光に見えたわ」
「ハハ…… あの時は必死だったので自分でもよく覚えてないんですよね」
「あなたは圧倒的な力を見せつけた。 人々の上に立ち皆を導くのは力ある者の役目だと思うの。 だから私からもお願いします」
俺は鑑定の儀の朝、父に言われたことを思い出す。
『大きな力はより多くの人々を救うために有る。 お前の力をもっと多くの人族全員のために使ってほしい』
二人の言葉が父アランの言葉と重なり…… 俺は断ることが出来なくなった。
最終的に受けることになってしまったのだが、結局は『ま~給料出るから両親に親孝行だと思いなさい』ってのが最後の決め手になった。
それから色々と祭典行事など細かいことが有ったけど、大人たちに言われるままにこなし……
やっと終わって俺はサンソー村に戻っる事が出来た。
住み慣れた質素な自宅で両親と食卓を囲むいつもの日常。
やっぱり俺にはこの生活が一番しっくりくるみたいだ。
あれから二年
俺は十二歳になり、とうとう王都にある軍事学校に行く年齢になった。
この二年間の俺の成長はと言うと……
精霊水球六個、精霊火球六個 右肩にウンディーネ…… そんな感じである。
ウンディーネの修行はとても地味だ……
イフリートを手に入れたからには、ド派手に炎魔法をと少し思わなくもなかったが……
結局毎日マナのコントロール修行で、水球と火球の操作ばかりだった。
ちなみにイフリートはウンディーネと違い目立つことを嫌う。
平常時は実体化せず火球のままが良いそうだ。
精霊玉は水球と火球、二つの属性を同時に出すのが難しく、六個ずつ十二個が今の俺には限界だった。
一応一つの属性だけなら倍の二十四個までは出せるようになった。
二年かけて成長それだけ? と落ち込んでいたが……
ウンディーネからは属性二つ、しかも相反する属性同士を使役しコントロールする事が異常で、むしろ二年でよくやった! と褒められた。
もちろん目に見えない地力自体はそこそこ上がっていると思う。
幼なじみの三人ディック、ギーズ、ララもこの二年でかなり上達している。
学校の専門クラスではトップを狙うと息巻いてい居る。
「オヌシラ三人はこの二年間、ディケムとのマナラインを使った連携を訓練してきた。 しかし学校でも戦場でも四人がいつもパーティーを組めるとは限らない。 これからの学校生活での四年間、個々でのレベルアップを目指すのじゃ!」
「「「はい!」」」
「多分三人とも学校に行けばマナラインを使わない分弱くなったと悩むだろう。 しかし大丈夫じゃ。個々が力をつければ四人パーティーの更なるレベルアップになると熟考せよ!」
「「「はい」」」
そうして俺たち四人は住み慣れたサンソー村を後にして、魔法学校入学のため王都に向かった。
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【シャンポール王国爵位】
平民貴族:騎士爵
下級貴族:準男爵
中級貴族:男爵<子爵
上級貴族:伯爵<辺境伯爵<侯爵<公爵
王族貴族:大公
⭐︎世襲貴族:親から子へ爵位を引き継ぐことが出来る(爵位継承)
⭐︎名誉貴族:一代限りの爵位




