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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第六章 眠り姫と遠い日の約束
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第六章62 ガーディアン・ゴーレム作成 その一

シャルマ視点になります。

 

 昨日のダンジョンは凄かった!

 まさかSランクのモンスター、ゴールド・ゴーレムを倒すなんて!


 ダメージも有るから今日はみんなお休みとなったけど………

 興奮してジッとなんてしてられない。

 そんな事でフローラと一緒に杖の素材でも街に探しに行こうと言う事になった。

 触媒となる上質のクリスタルは(カッパー)ゴーレムから手に入れた。

 ただ触媒が上質なだけに、それに見合う本体となる杖素材が無い。


 私がフローラと会うため大使館を出ようとした時。

 グラン従姉妹様がお出かけになるのを見かける。


「あらシャルマもお出かけ?」

「はいお姉様。 お友達のフローラと街に出て、魔法の杖作り用の素材を探そうと思います」


 私は小さい頃から姉妹のように育った、従姉妹のグラン様の事をグラン姉様と呼んでいる。


「お姉様もめかしこんでお出かけですか?」


 私が訊ねた時ちょうど大使館に来客が到着したとの報せを受ける。


「グラン様。 ベレール男爵様が迎えにお越しになりました」


 ベレール男爵様って……

 ソーテルヌ総隊近衛隊、四門守護者の赤の王?

 私達にとってモンラッシェ共和国を救ってくれた大恩人!


「グラン姉様! ベレール男爵様って四門守護者のディック様ですよね?」


「うんそう。 今日は私の竜騎士隊の訓練もお休みだから、お茶会にディックが誘ってくれたの。 お茶会と言っても訓練場と同じソーテルヌ邸なんだけどね。 そう言えばシャルマが懇意にしているフュエ王女殿下も見えるとか聞いたけど」


「ちょっ……お姉様! そのお茶会に私とフローラも参加できないか聞いてもらえませんか?!」


「えっ!? で、でも…… 突然聞いても……」

「グラン姉様。 私のお役目はソーテルヌ卿にお近づきになる事ですよ! そこは遠慮していては他国に後れを取る事になります」


「そ、そうね…… ちょっとディックに聞いてみます」


 グラン姉様がベレール男爵様にかけあうと……

 『べつに良いんじゃないか? 正式なお茶会でもないし』と気軽に請け負ってくれる。

 あまりに簡単すぎて頼んだこちらが『ほ、本当に大丈夫なのですか?』と不安になっくる。


 それからフローラも合流し、ベレール男爵様の馬車に乗る。

 ベレール男爵は、顔の左側に炎の入れ墨が入り最初は少し怖かったけど……

 話してみるととても気さくな人だった。


 それにモンラッシェの民はベレール男爵の炎の入れ墨に敬意を払わなければならない。

 彼の『ゲヘナの炎』にモンラッシェ共和国は救われたのだから。


 ソーテルヌ邸に到着しベレール男爵の後について歩く。

 大きな木の下にテラス席が設けてあり、そこがお茶会の会場みたい。

 その木を見たとたん…… フローラが目を見張り立ちつくてる。


「どうしたの? フローラ」

「こ…… この木………」


「ほぅ、お前マナを感じ取れるようだな」


 かけられた声の方を向くと……

 あの舞踏会でお会いした、魔神族五将の一人にしてソーテルヌ卿の右腕ラトゥール将軍が居る。

 私の体が緊張で一瞬にして強張る。

 気軽にお茶会に来てしまったけど、この人の事を忘れていた。


「この御神木はディケム様の眷属にして、いずれ『イグドラシル』へと昇格する神木だ。 このソーテルヌ邸はシャンポール王国領内に有るが、ここだけは精霊の領域として別世界と考える事だ。 人の常識で物事を測れば身を亡ぼすと知れ」


「「は、はいっ!!!」」


 私とフローラは緊張で固まりながらも辛うじて返事を返す。

 ベレール男爵の後を歩きながら、無理矢理ついて来た事を後悔しつつ……

 ソーテルヌ卿が居るテーブルに挨拶に行く。


「ソ、ソーテルヌ公爵様。 本日は突然伺い申し訳ありません。 できれば本日のお茶会の末席にでも加えて頂ければ――………」


 ソーテルヌ卿がキョトンとした顔で私を見る。

 そして呆れた顔で口を開く。


「どうしたシャルマ? らしくないぞ。 今日はただのお茶会なんだ、公の場でもないのだからいつも通りディケムでいいぞ」


「で、でも…… ラトゥール様もいらっしゃるし……」


「はは、気にするな。 それに君たちは予定外だったが本当に今日のお茶会は身内だけなんだ。 せっかくの休み俺も気疲れしたくない。 余計な敬語とかは無用で頼むよ」


 一応『わかった』と返事はしたものの……

 これはアレだ、無礼講と言ってタメ口を叩くとあとで怒られるやつだ!

 と気を抜かないように心がける。



 お茶会に集まったのは。

 ソーテルヌ卿、ラトゥール様、フュエ王女、ララ様、ディック様、グラン姉様、ギーズ様、マディラ様。

 そして私とフローラ……


 こ…これ!! 本当にグループデートみたいなお茶会じゃない!!!

 私がフローラを見ると……

 『これどうするのよ!?』って顔で見てくる。

 『ですよね~』って顔で返しておいた。



 しばらく歓談した後、執事が来客を告げる。

 フローラと私は救いの来客に歓喜する。

 案内されてきたのは、王国騎士団第一部隊のラス・カーズ将軍とラローズ様。


「ソーテルヌ公爵閣下、本日は―――………」

「ラスさん! 今日はオフですから」


「あぁ失礼、ではディケム君。 俺とラローズを呼んだのは?」


「はい、ちょっと面白い物を手に入れたので一緒にどうかと。 それとついでにお茶でもと思いまして。 この頃『ルル』がパンだけじゃなくてケーキも作り出したんですよ。 まだ試食段階なので食堂では出してないんですけど、かなり良い出来なので是非食べてほしくて」


「おぉそれは良い! 俺はそういうの疎くてな、ラローズにいつも文句言われてるんだ。 若者のおすすめならラローズも気に入ってくれるだろう」


 ラローズ様が嬉しそうに席に着く。

 私がディケムさんとラス・カーズ将軍が気軽に話す様子に驚いていると。

 ラローズ様が私達に話しかけてくれる。


「シャルマさんとフローラさん。 『レクラン』の話聞いたわよ! 凄いじゃない」


 するとラス・カーズ将軍も話しに入ってくる。

「あのゴールド・ゴーレムを倒すとか凄いな! 俺もまたチャレンジしたかったんだが…… パーティー全員に反対されて、もうチャレンジさせてくれないんだ」


「あんなお買い損のゴーレムとか、もう二度と戦いたくないわ!」


 やっぱりラス・カーズ将軍達もゴールド・ゴーレムには苦労させられたらしい。

 すると、私達の話を聞いてディケムさんも話に入ってきて全員に話しかける。


「みんな、今日呼んだ面白い物ってのがこれだ!」


 そう言いゴールド・ゴーレムの『(コア)』を取り出す。


「これは…… ゴーレムの『(コア)』ですか?」

「そうだラトゥール。 しかもただのゴーレムじゃない。 【モントリューダンジョン】のガーディアンゴーレム、しかもSクラスのゴールド・ゴーレムの『(コア)』だ!」


 皆が『ほほぉ~』とゴーレムの『(コア)』に興味を示す。


「だけどディケム。 ゴーレムならお前もいくらでも作って街に設置しているじゃないか?」


 は? ゴーレム作って街に設置って……なに?

 もしかして、噂に聞いた街中のきれいなクリスタルの彫像が動きだすって恐怖話し……

 タネはあれがゴーレムって落ちなの?


「そうだディック。 俺は精霊魔法の力を使ったゴーレムを作ることが出来る。 だから必要ないと言えばそうなのだが…… 精霊魔法で作られたゴーレムは精霊使いしか使えないと言うデメリットがある。 いまシャンポール王国の防衛にクリスタルゴーレムを動かしたいときは俺かララが居ないと使えない」


「たしかに…… だが、クリスタルゴーレムを動かさなきゃいけない有事にディケムもララも居なかったら、どのみち防衛は難しいだろ?」


「だから防衛強化の為にも、違うアクセスから作られたゴーレムを研究しない手は無いだろう?」


「たしかに」


 この人達は他国の姫が居る前で何の話をしているのかしら?

 ディケムさんとララさんが居ないと動かないとか、私達聞いちゃって良かったの?

 ロマネ帝国とはまだ同盟を結んでいないと言うのに。


 でも、その情報を鵜呑みにするほど私も純粋じゃない。

 フローラも『騙されませんよ!』って顔をしている。

 モンラッシェ事変のおり、ディックさんとラス・カーズ将軍は離れた距離でも連絡を取り合っていたと聞きます。

 きっと離れていても動かせる方法も有るのでしょう。

 そう考えれば私達の前で、そんな機密事項を気軽に口に出す事も頷けます。

 もし真に受けて攻め込めば、罠にかかったも同然なのでしょう。

 まぁ攻め込まないですけどね。



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