第六章55 ゴールド・ゴーレム戦
「ちょっ! フュエ! こ、これどうするのよ!」
「し……死んだ。 これ俺絶対死んだわ……」
「ご、ごめんなさい。 イフトさんがヒドイ事になるの、見ていられなくて……」
「まだっ! 隔離結界は張られていな―――…………」
フローラが叫んだその瞬間…… ゴーレムと俺達を囲う隔離結界が構築され淡い希望も消えさった。
「あっ……」 「…………」 「…………」 「…………」
逃げ出そうとゴーレムに背を向けていたメンバーが恐る恐る振り返ると……
容赦なくゴールド・ゴーレムが拳を振り上げ襲いかかってくる姿が見える。
「ちょっ! 待った、ムリムリムリ!!!」
「キャアアア――――――!!!」
「死ぬ! 俺はここで死ぬ! 絶対死ぬ―――!」
パニックに陥る皆の前に俺は躍り出る。
そして――
ドッゴオォォォォォ――――――ン!!!
⦅ぐっ!⦆
ゴーレムの拳を俺の盾が受け止める。
「だっ! 大丈夫なの………? ディケムさん?」
「アマンダ! 俺の心配よりもすぐに皆の体制を立て直せ! こうなってしまったらもう やるしかない」
「は、はい!」
アマンダが直ぐに俺の指示に従いレクランの皆を落ち着かせようとするが、この状況でソレはなかなか難しい。
それでも俺がゴールド・ゴーレムの攻撃を何度も受け止めている姿を見て、徐々に皆も落ち着きだし戦闘態勢を整えて行く。
パニックで崩壊寸前だったパーティーをアマンダは何とかまとめ上げて行く。
アマンダは優秀な指揮系統の才能がありそうだ。
ゴーレムの攻撃を防ぎながら俺は密かに思っていた。
もしかするとこのゴーレム。
『【降参】としっかり言えば戦闘は終われるかもしれない』と……
だがしかし、会いたくても滅多に会うことが出来ないゴールド・ゴーレムが目の前に居るのだ。
こんなチャンスを逃していい筈はない。
これは『レクラン』のレベルアップに最高の訓練相手になるはずだ!
俺は後ろで戦闘準備が出来た皆に指示を出す!
「フュエ! いつもの様にはすぐに前に出るな! 俺がしばらく攻撃を防ぐから、後ろでアイツの攻撃パターンを覚えろ。 勝てるかどうかはフュエがアイツのパターンを読み切れるかどうかにかかっている」
「はい!!!」
「タンクのジェーンとギルベルトもしばらく後ろで見ていろ! 俺が合図したらスイッチだ。 それまでしっかりアイツのパターンを覚えておけ!!!」
「「えっ…… あ、はい!!!」」
「白魔法チームは後ろでひたすらバフとデバフと回復だ!」
「「「はい!!!」」」
「他のアタッカーもしばらく攻撃せず俺の後ろで攻撃パターンを覚えろ! フュエとタンクの二人がゴーレムの動きを覚えたら反撃開始する!」
「「「「は、はい!!!」」」」
皆に指示をだした後、しばらく俺一人でゴールド・ゴーレムの攻撃を受け続ける。
ドガッ―――ン!!!
ガゴオォォォ―――ン!!!
⦅ぐっ!⦆
精霊も無し、強力な魔法も無し、装備も無し……
この状況でたった一人でSクラスの攻撃を受け続けるのは流石に厳しい。
だがBクラスのイフトですら瞬殺された相手だ。
Cクラス以下のレクランメンバーが、もし準備も無しに下手に挑めば死人が出るかもしれない。
そして…… 俺が揺らげばこのパーティーは崩壊する。
⦅クソッ! 止むえん!!!⦆
俺は一気にマナをミスリルシールドに流し込む!
――すると。
ブゥオォォォ―――ッ!!!
俺のミスリルの盾を中心に風が巻き起こる!
そして盾が風を纏う。
『えっ! なに? 魔法? アイテム?』
突然風を纏った俺の盾を見て皆驚きを見せている。
だがフュエ王女だけは何かを吸収しようとしっかり俺を見ている。
風を纏った盾は受けた攻撃の衝撃を大幅に吸収してくれる。
さらに土地属性ゴーレムの弱点は木・風属性になる。
風の防御と属性有利の相乗効果でゴールド・ゴーレムの攻撃威力は格段に軽減される。
属性有利を取ると言う事は、そう言う事だ。
守りに余裕が出て来た俺はゴールド・ゴーレムをじっくり観察する。
すると……
やはり他のゴーレムには有った『核』が頭の上には見当たらない。
⦅『核』が無いという事はゴーレムにはあり得ない⦆
⦅見えないところに隠してあると言う事だろう⦆
俺はゴールド・ゴーレムのマナを探る。
すると胸の中に凝縮されたマナの固まりが有るのが分かる。
⦅『核』はあそこだな⦆
皆がゴーレムの攻撃パターンに慣れて来たところで、俺はゴーレムの攻撃を防ぎながら攻略のアドバイスをする。
ガゴッオォォォ―――ン!
「みんな! ゴーレムは作られたものだ。 生き物ではないから恐怖心もない。 防御はするが死を恐れない。 フェイントも効き辛い」
「「「は、はい!!」」」
ドガッ―――ン!!!
「だが見ていてわかっただろう? 作られたものだからこそ動きにパターンが有る。 製作者が側にいない限りそれ程複雑な動きはできないはずだ!」
「「「「はい!!!」」」」
ガゴッオォォォ―――ン!
「注意点はダメージ量によって攻撃パターンが少し変わるはずだ。 Sクラスだと普通三段階くらいは変わってくる!」
「…………」 「…………」 「…………」 「そんな……」
ドガッ―――ン!!!
「だが心配するな。 基本となる動きは変わらない筈だ。 少しだけ変わった動きにすぐ適応するだけで良い」
『『『『は、はい……』』』』 みな少し不安そうだが、気にしない。
ガゴッオォォォ―――ン!
「アマンダ! これを皆に」
俺はアマンダに『属性結晶』とアイテムが入っている袋を投げる。
「タンクは『風の属性結晶』を盾に使え!」
「「はい」」
「アタッカーは『木の属性結晶』を剣に!」
「「「はい」」」
「ヒーラーは杖に『聖の属性結晶』と魔力の回復ポーション」
「「「はい」」」
ガゴッオォォォ―――ン!
ドガッ―――ン!!!
「それじゃ〜みんな! ゴールド・ゴーレムの『核』は胸の中にある。 どう倒すか考えろ! そろそろスイッチするぞ!!!」
「え? え? え――――――ッ!!!」