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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第六章 眠り姫と遠い日の約束
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第六章44 クレリック

 

 『モントリューダンジョン』攻略初日。

 この日は結局二階層まで行き、追加でゴーレム(銅)を二体倒し合計三体のゴーレム(銅)を倒して引き上げとした。

 討伐褒美の宝箱からは属性クリスタル『小』が三個。

 一つを換金して金貨三十枚にして、本日と明日のダンジョンの料金とこの後の反省会の食事代とした。


 ちなみに国が管理するダンジョンの周りには宿屋、武器屋、防具屋、道具屋などダンジョン攻略に必要な店が軒を並べ小さな街状態となっている。

 これらの店々も国に登録が必要となり管理が徹底されている。

 属性クリスタルの換金は、この街の『買取屋』で行うことが出来る。


 この『買取屋』と言う店だけは国の機関となっている。

 冒険者がダンジョンで手に入れたクリスタル、防具、武器などを買い上げて王国軍の戦力として活用しているのだそうだ。

 王国軍は最初、自分達でダンジョン探索も行っていたのだが餅は餅屋と言うやつだ。

 ダンジョンはリスクが大きく騎士団の常識は通用しづらい。

 いろいろ試した結果、冒険者にダンジョンを開放してアイテムを買い上げた方がリスクも少なく、また予備役軍人のほとんどが冒険者と言う事もあり、人材育成の場としてもとても効率が良いと言う話になったのだ。



 ダンジョン探索をメインにしている冒険者達は普段、ダンジョン街で寝泊まりして毎日ダンジョンに潜り、たまに王都に戻る生活をしている。

 だがこの『モントリューダンジョン』に関しては、王都の近くと言う事で王都に戻る冒険者も少なくない。


 もちろん俺達は姫様三人も居るので王都に戻る派だ。




 反省会はいつもの冒険者行きつけのポートの実家【とまり木】で行う。

 ずらりと料理が並ぶ机の上に、今日の戦利品『属性クリスタル(小)』が二つ転がっている。


「こんな小さなクリスタルが金貨三十枚とか驚きよね」

「ダンジョン入るのに一人金貨一枚とか『高っか!』って思ったけど、結構稼げるのね」


「いや……シャルマ、フローラ。 普通は『ガーディアンゴーレム』には手を出さないから、一日にこんなには稼げない。 冒険者はもっと地味なものだ」


 アマンダが二人に説明していると……

 店に『黒の牙』のダーヴィヒが入ってくる。


「おぉレクランじゃないか! 派手にやってるな~お前達」

「ダーヴィヒ。 『派手』って私達何か噂になってるの?」


 さすがにクランリーダーのシャルマが噂を気にしているようだ。


「今日は冒険者界隈じゃお前たちが『ゴーレムチャレンジ』始めたって話で持ち切りだったぞ! それで噂は本当なのか?」


「…………。 半分本当だけど半分は違う」

「意味が分からんぞディケム」


「俺達の狙いはシルバーゴーレムだ。 経験値を稼ぎながら鋼装備を整えたい」


「なるほど…… それはなかなか面白そうな方法だな。 人族が加工できる金属は鉄までだ。 だから店で普通に買える装備は鉄までとなっている。 だが俺達冒険者はやはり鋼以上の装備が欲しい。 しかし鋼以上の素材はダンジョンなどのドロップを狙うしかない。 だがミスリルなどのドロップは非常に難しいから、最も狙いやすい鋼の装備に人気が集中してしまう。 だからダンジョンの鋼装備ドロップの宝箱は奪い合いになっているのが現状だ」


「へ~そうなんだ。 冒険者あるあるなんだね」


「あぁ、だが『モントリューダンジョン』のゴーレムは狙うやつはあまり居ない。 そこに目を付けるのは流石だが…… まぁ倒せる自信があるからなんだろうな。 普通はそんな馬鹿な方法思いつかんぞ」


「バカな方法なんだ……」


「その属性クリスタルが有るって事は、お前達はもうゴーレムと戦ったんだろ? いくら鋼装備のためとは言え、普通あんなのと戦ってたら命いくつあったって足らんぞ」


 皆が一斉に俺を見るが…… 俺は目をそらす。


「今日も一度リーラが危なかったけど、ディケムさんが蹴りでゴーレム吹っ飛ばしてたもんね」

「け、蹴りで!? ゴーレムをか?」

「ウンウン」

「いやそれは流石に無いだろ?」

「今回もディケムさんに助けられました」

「いやみんな、あれはスタンだから」

「またディケムさんは誤魔化そうとする―――………」


 そんな感じで皆でワイワイ食事をして、翌日また南門で集合する事で解散した。




 レクランのメンバーと別れ、王宮に帰る途中でフュエ王女が何か悩んでいる。


「あのディケム様」

「はい」


「今日のダンジョン、私ほとんど何も出来なかったです」

「焦ることはないでしょう、しばらくダンジョン通いになるのですから」


「あの…… そうすると皆さんもっと慣れてきて、『回復(ヒール)』しか使えない私はもっと仕事が無くなるのでは無いでしょうか?」


 確かに……

 今のレクランは、十一人の『組織(クラン)』として非常にダンジョン攻略がしやすい。

 だがそれは逆に言えば、一人一人の役割と経験値は減ると言う事だ。

 特に回復特化のフュエ王女は出番が少ない。

 さらに今回のメインがダンジョン攻略と言うより、ゴーレム討伐をメインとしている事がさらにフュエ王女の出番を少なくしている。

 繰り返し同じ敵を討伐して行けば、パーティーの討伐練度はさらに上がっていくのが普通だ。


 だが…… だからと言って『新しい魔法を覚えた方が良いのか?』と言う話にもなる。

 それはまだ時期尚早な気もする。

 そしてもう一つ、俺は気になっている事が有る。

 フュエ王女の『胆力』だ。

 最初はフュエ王女の度胸の良さは、俺が居る事での安心感なのかと思っていたが……

 それにしても今までの戦闘で、フュエ王女があまり尻込みしている所を見ていない。

 いつもパニック寸前に陥るのはシャルマ、フローラ、ミゲルの三人だけだった……


 ⦅もしかするとフュエ王女は……⦆


 俺はウンディーネを顕現させる。

 フュエ王女は精霊が大好きだ、ウンディーネの顕現を見て『ウンディーネ様!』と大喜びしている。


「なぁウンディーネ。 フュエ王女にはどういう戦い方が合っていると思う?」


「ディケムよ。 お前はその王女を大切に傷つかない様に後方に置いているが、その娘の真価は『クレリック』前衛じゃぞ!」


 フュエ王女が目を見張り驚いている。

 それはそうだろう、『クレリック』とは回復職でありながらメイスと呼ばれる槌鉾(つちほこ)を操り前衛中衛でバリバリ戦う職だ。


「や、やっぱりそうなのか…… でも流石に王女を前衛に出すのは――……」


「ディケム様。 わたしクレリック頑張ります! 今までどうしても自分の立ち位置にしっくりこなかったのですが、今のウンディーネ様の言葉でストンと腑に落ちました。 それにミゲルさんと同じで前衛と言っても私の前にはディケム様が居て下さるのでしょ?」


「まあ、そうですが……」

「それならば何も怖いものなどありません! それに私、こう見えて護身用として『棒術』の訓練ずっと受けていたのです。 これでも体を動かす事は得意なのですよ! フフフ」



 己の目指す道を見つけたように、やる気に満ち溢れたフュエ王女を止めることはもう出来ない。

 俺はせめて装備だけでも整えようと、フュエ王女を総隊の武器庫へとお連れする。





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