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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第六章 眠り姫と遠い日の約束
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第六章39 クラン登録

 

 この日は朝早くからレクランのパーティーで集まる事になっている。

 ファイア・ウルフ討伐からたった二日しか経っていないのに、色々あり過ぎて、皆とは久しぶりに会う気がする。


 フュエ王女を連れてギルドの扉を開けると、中からシャルマとフローラの声が聞こえてくる。


「なにミゲル嘘でしょ! いま話題になってる『精霊達が集う(うたげ)』参加できなかったの?」

「あなた中級貴族、男爵位だのと威張ってたくせに! ダッサ!」

「お披露目の儀は貴族の大切な日じゃない! 参加出来なかったって…… あんた本当に貴族?」


 ⦅お……鬼だろこの二人!⦆

 ⦅二人共精霊見たからって…… ヒドイ⦆


「う……うるさい! お、お前らなんて舞踏会に申し込む事すら出来ないくせに!!!」

「ハン! 申し込めたって選ばれなきゃ私達と同じよ!」

「な、なんだと! 平民ごときとこの男爵位の俺様が同じだと―――………」


 いつも偉そうなミゲルを、ここぞとばかりにシャルマとフローラがいじり倒す。

 まぁ…… 仲がいいって事にしておこう。




「なんだなんだお前ら~ ほんと仲が良いな」

「んなっ アマンダ殿! これが仲がいい様に見えるのか? 其方の眼は節穴か!?」


『はいはい』とアマンダがミゲルを適当にあしらっている。



 パーティー内のおふざけは良いのだが……

 アマンダの後ろに、先日のファイア・ウルフ討伐で一緒に戦った『リーラ』と『ギルベルト』が立っている。

 リーラは討伐作戦前に『レクラン』を目の敵にしていたが戦闘中パーティーは崩壊、リーラ本人も致命傷を負い俺が治療をした。

 もうすっかり元気なようでよかったが……



 するとアマンダがレクラン全員揃っている事を確認して話し出す。

「みんな、話があるんだが聞いてほしい」


 アマンダが話があると言う。

 そしてその後ろにはリーラとギルベルトが居る。


 俺達は息を呑みアマンダの次の言葉を待つ……



「みんな…… 申し訳ないんだが。 この二人をレクランに入れてもらえないだろうか?」


「…………」 「…………」 「…………」 「…………」



「ぷは――! なんだよかった! アマンダがウチを抜けたいと言うのかと思って驚いたじゃない!」

「うんうん アマンダが居ないとレクランは立ち行かないからな」

「も~驚かせないでよ アマンダ~」


 みな同じことを思っていたようだ。


「いや…… 私はここを抜ける気など一切ないぞ」


 するとアマンダの後ろに立っていたリーラとギルベルトが前に出てくる。


「あ、あの…… こ、この…前は――…… 喧嘩を吹っ掛けるようなことしてすみませんでした。 ゆるして……ください。 今はアマンダさんがレクランに入った気持ちが分かります。 だから……あの…… 私達もレクランに入れてください!」


「どうだろうみんな?」



 皆が一斉に俺を見るが……

 俺はシャルマを見る。


「私は構わないわよ。 でもパーティーの重要な決定事項は多数決って決まりよ。 ど~お? みんな」


「構わないわ」「問題ない」「私も良いと思います」「賛成です」


「って事でリーラとギルベルトのレクラン受け入れが決定です!」


「ありがとうみんな」

「「よろしくお願いします」」



 なんか突然リーラとギルベルトがレクランに加入する事になった。

 と言う事はパーティーメンバーが八名になった。


 たしかギルド規約によれば、七名以上のパーティーは『クラン(組織)』として登録することが出来るはずだ。



『みんな、これでウチは八名になったから【クラン(組織)】として登録できるけど、どうする?』 アマンダがみなに聞く。


「もちろん登録するでしょ!」

「ウンウン クラン♪ クラン!」


『レクランがクラン―― ウハ、ウハハハ――……  グハッ!』

 下らない事を言うミゲルがシャルマに蹴られている……




 俺達が『クラン』登録をしようと騒いでいると……


「おいアマンダ! レクランを『クラン』にすると聞こえたが本当か!?」

 突然、ギルドの奥から声をかけられる。


 (あ、あれは…… 嘘だろ!?)


「ん? あぁ『プリンセスガーディアン』の『アメリー』か…… なんだ『ジューン』と『エラ』も居るのか!」 


 嘘だろ…… いや嘘と言ってほしい!?

 俺の目の前に『王室護衛騎士』のエメリー、ジェーン、エマが立っている。


「みんな! 彼女たち三人は『プリンセスガーディアン』ってC級冒険者パーティーだ! まえの私が組んでいたパーティーとライバルでね、よく競ってたんだ。 彼女がリーダーのアメリー、そして彼女たちがジューンとエラだ」



 (おぃおぃおぃおぃ! 『プリンセスガーディアン』ってまんまじゃないか!)

 (しかもアメリー、ジューン、エラって名は…… エメリー、ジェーン、エマをもじっただけ!)

 (いろいろ名前の付け方 ザツ!)



 彼女たちの変装はエメリーは眼帯をし、ジェーンは口にマスクをし、エマは目隠しをしている…… ()()だ!

 俺は目を見張り、フュエ王女に振り返り見る!


「っん? はぁえ? なんですかディケム様?」


 (おぃおぃおぃおぃ! 嘘だろ! フュエ王女気づいてないよ!)

 (目の前に居る冒険者! さっきまで一緒に居たあなたの側仕えですよ!)


 雑な名前つけと雑な変装で、まさかフュエ王女の前に出てきた彼女たちも彼女たちだが……

 それに気付かないフュエ王女も存外だ。


 目を見張る俺に『フュエ王女の天然を舐めてもらっては困ります!』とエメリーが俺を見てニヤッとする。


 (クッ…………。 言葉もない)



「それでアメリー。 お尋ねの通りリーラとギルベルトがウチに入ったからパーティーが八人になったんだ。 クラン登録しない方がおかしいだろ?」


「ほぉ。 ならアマンダ! 私達もレクランに入れてくれないか?」


 (はぁぁあああ――???  何考えているんだエメリー!?)


「どうしたんだアメリー、お前たちは誰ともつるまないのが信条だったろ?」


「ハハ、私達がライバルと認めるお前とリーラが頭を下げて入れてもらう所を見たんだ。 そりゃ興味も湧くだろう? こんな面白そうな流れに乗らなきゃ損だと思ってな」


「そ……そんなに面白そうか? 結構このパーティー大変だぞ……」


「それに私達はただでさえ少ないCランク以上の女冒険者だ。 アマンダとリーラとは前から組みたいと思っていた。 だがお互いにパーティー組んでたから難しかったが…… 今がその時だと思わないか?」


 アマンダがシャルマを見る。


「アマンダとリーラのお友達なら私は構わないけど…… みんなはどぉ?」


 結局、全員賛成でアメリー(エメリー)、ジューン(ジェーン)、エラ(エマ)のレクラン入りが決まった。


 これでレクランのメンバーは計十一人。

 クランとしては小さいが二パーティー組める人数は確保できた。

 しかしそんな悠長なことを言っていた俺がバカだった……


 レクランは、非常に珍しい女性主体のクラン。

 そしてCクラス以上の女冒険者はレアだ。 だから冒険者界隈で有名なアマンダ、リーラ、アメリー(エメリー)が組んだ事は大きなニュースとなった。


 そんな事で『レクラン』の名は瞬く間に有名になっていき――

 女性冒険者達の入会申し込みが殺到することになる……


 ⦅な、なぜこうなった……?⦆





 その夜、王宮に戻った俺はエメリー達を呼び出す。


「エメリー なぜ冒険者としてフュエ王女の前に出て来た?」


「いや~ もともと休日に実践訓練もかねて趣味で三人で冒険者してたんですよ~ そしたらフュエ王女が冒険者になってビックリ。 ならどうせ見守るなら一緒に居た方が楽だなと思って~」 


 (な、なんか…… 昨日の雰囲気と比べると物凄く軽くないか?)


「それに…… フュエ王女が城に居ない時は護衛騎士の私達暇なんですよ~ エヘ」


 (『エヘ』じゃない!!!)


 俺の怪訝な顔を見てエメリーが謝る。

「す、すみません…… 冒険者として活動した日はどうしても感情が高ぶってしまって、つい口調に素が出てしまいます」


 (…………)


 『バレたらどうするんだ?』と俺だけドキドキしているようで馬鹿らしくなってしまった。

 どのみち今更、無かった事にも出来ないので……

 俺は『成るようになれと』さじを投げた。




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