表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第六章 眠り姫と遠い日の約束
316/553

第六章31 叙爵・陞爵式典2

 

 式典会場警備は、ラス・カーズ将軍率いる王国騎士団第一部隊。

 そこに『王都守護者』の権力を使い、無理矢理ソーテルヌ総隊の隊員も参加させている。

 総隊員はいつも国防の為頑張っている、それくらいの融通は許して欲しい。

 謁見の間で行われる式典とボールルームで開かれる舞踏会は、誰でも参加したい国の一大イベントなのだから。



 来賓の貴族たちが謁見の間に入場してくる。

 入場する順番は爵位の低い順だ。

 だがこの謁見の間の来賓として招かれる貴族は、式典のグレードにもよるが、褒賞される本人の関係者以外は、中級貴族(男爵位)以上となる事が多いい。

 特に今回のような外国の国王、大統領、王族が参加するような大きな式典は、誰しも参加したいが、多くの貴族が式典の格に相応しいのか、厳正な審査の上振るい落とされる。

 その為、この式典と舞踏会に参加できた事は、貴族としての栄誉となる。



 謁見の間に最初に通されたのはマディラとマディラの父ボアル准男爵だった。

 下級貴族ながらギーズの関係者として褒賞式に招かれた。

 厳密に言えば、マディラはまだギーズと婚姻前と言う事で、正式には式典への招待枠には入らないのだが、マール宰相が気を利かせてくれたのだろう。

 それにそれを言ってしまうと婚姻前(婚約すらしていない)の俺がフュエ王女の右隣に立つのはおかしい。


 謁見の間に入場してきたマディラが一瞬、目を見開き止まる。

 来賓客を迎えるフュエ王女の右側に俺が立っていたからだろう。


 ⦅マディラ…… 居たたまれないからそっとしておいてほしい⦆


 そして続々と貴族達が入場してくるが……

 みな必ずこちらを見て、一度目を見張り、そして納得したように頷きながら自分の席へと移動していく。


 ⦅なんだこれは? 何かの罰ゲームなのか?⦆


 そして、シャンポール王国の貴族が入場し終わった後。

 シャンポール陛下の入場となる。

 全ての貴族が一斉にかしずき、国王への敬意を表す。




 そして、外国来賓客入場となる。

 シャンポール陛下を筆頭に王族、貴族全員で外国来賓客を歓迎する形式だ。


 外国来賓客も基本は格、爵位の低い順からの入場となるが、国内貴族ほど厳密に格の順位はつけない事が通例だ。

 国の上下など言い出したら、それこそ国同士の問題にまで発展してしまうからだ。


 外国来賓客は国ごとに、シャンポール王と挨拶を交わす事になる。

 最初に謁見の間に通されたのは『マルサネ王国』だ。

 コート王子を先頭に、姉のシャントレーヴ王女、そしてもう一人。

 マール宰相の紹介だと、コート王子の妹となる『アンナータ王女』だそうだ。


「シャンポール陛下。 この度は我がマルサネ王国への『勇者ララ』の派遣、感謝の念に堪えません。 今後とも同盟国として(よしみ)を結んで参りましょう」


 陛下との通例の挨拶が終わり、王子、王女へ軽く会釈を交わし来賓席へと案内されていく。


 シャントレーヴ王女が、俺がフュエ王女の右側に立っている事に怪訝な表情を見せたが、直ぐに納得したように表情を戻す。

 シャントレーヴ王女も妹のアンナータ王女も、同じ目的でここに来させられたのだろう。

 シャンポール王も手を打ってきたのだと納得したのかもしれない。



 次に謁見の間に通されたのは『ジョルジュ王国』だ。

 ルーミエ国王とその妹君、『クルーラ王女』がシャンポール陛下に挨拶をする。


 ⦅ちょっとルーミエ陛下…… 兄のブシエール殿下は知っていますが、妹君って初耳ですよ!?⦆


 これが、フュエ王女が言っていた、今年魔法学校に入学してくる王族だろう。

 見目の良い優秀な血族を養子に迎え、送り込んでくると言う。



 そして次に謁見の間に通されたのは『モンラッシェ共和国』だ。

 ジュリュック大統領を先頭に、グラン嬢が続き……


 ⦅ッ――っな!!! シャルマ!!!⦆


 俺とフュエ王女は目を見張り、グラン嬢の後に続き歩いてきた、レクランのパーティーリーダー『シャルマ』から目が離せない。

 マール宰相からの紹介では『シャルマ・モンラッシェ』がグラン嬢の従姉妹だと言う。

 ジュリュック大統領がシャンポール陛下との挨拶を終え、来賓席へと案内される。

 グランの後ろを歩くシャルマは、こちらをチラッと見て『フフ』と笑った。



 頭が真っ白になった俺とフュエ王女を置き去りにして、来賓客の紹介をマール宰相が続ける。

 そして次に紹介されたのが、本日の式典への特別来賓となるロマネ帝国の『ヴィティス・ロマネ王子』と『フローラ・ロマネ王女』。


 ⦅っん?! フローラ・ロマネ? ……フローラ?⦆


 謁見の間に現れたのは、豪奢なドレスを身にまとった、昨日まで一緒に冒険していたレクランのメンバーフローラだった。


 ⦅『また明日ね』って…… こう言う事か!⦆


 ロマネ帝国の王子と王女は、此度の『叙爵・陞爵式典』には一切関係は無いのだが、親交を深めるために来賓している事から、この貴族が一堂に会す貴重な機会『叙爵・陞爵式典』に是非参加したいと申し入れがあったそうだ。


 ヴィティス王子とフローラ王女もシャンポール陛下との挨拶を済ませ、来賓席へと案内される。

 ヴィティス王子の後ろを歩くフローラは、こちらをチラッと見て『フフ』と笑った。


 ⦅………………⦆


 『シャルマとフローラの二人! グルだったのか?』とシャルマをチラッと見てみると……

 シャルマも目を見張っているのが分かる。


 ⦅シャルマも知らなかったのか……⦆


 あの二人…… どおりで美人過ぎていると思った。

 一般的な美人のアマンダが霞んでしまうほど、フュエ王女を含め、レクランのメンバーは顔が整い過ぎていた。

 モンラッシェ一族のご令嬢…… ロマネ帝国の王女…… そしてフュエ王女。

 あのパーティーはかなりおかしい。


 俺は必ず守らなければならない護衛対象が増えた事に苦い顔をする。




 最後の来賓客が式典会場へと入場してくる。

 すると……

 それまで厳粛な空気の中にも和やかな雰囲気があった式典会場が、一転して緊張した空気に包まれる。

 そしてマール宰相が、魔神国同盟大使としてラトゥールの名を紹介する。

 魔神国は最強種族の一角、人族にとって最も敬意を払わなければいけない同盟国。

 人族大国の国王よりも、後にラトゥールが入場してきたことに、違和感を覚える者は誰も居ない。

 それほど魔神族五将のラトゥールの存在は、人族にとって礼儀を尽くさなければならない存在となる。


 ラトゥールは、いつもの様に一部の隙も無い完璧な立ち振る舞いでシャンポール陛下と挨拶を交わし、俺達の前を通り過ぎる。

 そのとき…… 一瞬視線をフュエ王女に向け眉をひそめる。

 俺の隣に立つフュエ王女がビクッと震えるのが伝わってくる。






――――――――――――――――――

【貴族位】

<平民貴族・下級貴族>

 騎士爵ナイト


<下級貴族>

 準男爵


<中級貴族>

 男爵

 子爵


<上級貴族>

 伯爵

 辺境伯爵

 侯爵

 公爵


<王族>

 大公



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ