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第一章23 マナの使い方


 ラローズさんの契約は無事終わった。

 内容はハチャメチャだったけど、結果良ければすべてよし!

 ウンディーネは初めから、ラローズさんの契約をどの様に転んでも、成功させるつもりだったみたいだ。

 口は悪いけど、心優しい精霊様である。


 俺たちが訓練キャンプに戻ると――

 物凄い勢いでラスさんが走ってきて、ラローズさんを抱きしめ、恥ずかしいほど泣きじゃくっていた。

 でも、あそこまで素直に愛情表現できるのは、素敵なことだと思う。



 ラローズさんは、俺がウンディーネをいつも肩に乗っけているように、ウォーターエレメントを顕現(けんげん)させている。

 これはウンディーネからの指示でもあり、常に顕現(けんげん)させておいて、マナのコントロールを、息を吸うように普通に行えるようにするのだ。


 この日はさすがに疲れたので、俺とラローズさんは訓練をお休みにした。

 夕食時には、ディックたちが契約の様子を聞きたがったが、極秘事項を隠して当たり障りなく話した。

 まぁ、ディック達には秘密にする必要性もないのだが、ここは軍事キャンプ、たくさんの耳があると思った方がいい。




「さて、ラローズが契約したので、今日から子供達とラローズは妾と一緒に別メニューで訓練じゃ。ラモットは引き続き今までの課題をこなし、いつの日か契約できるように備えよ」


「「「――ハイ!」」」


「さて、ラローズは一流の魔法使いじゃが、これからは精霊を使った魔法以外は禁止じゃ! ほぼ初心者に逆戻りで屈辱だろうが、ここで学ばなければ、精霊と契約した意味が無いからな」


「――はい、がんばります!」


「子供たちは、四人が繋がっているマナ・コネクトを意識した訓練じゃ。 この一年で、オヌシたちのマナの器は一から百まで上がったと思え。 もし器が一の時にディケムが百のマナを送ったら、魔術師は風船のよう割れていただろう」


 風船のよう割れていたって……… ナニソレコワイ


「しかし今は百の器がある、多分最大で二百くらいまでは行けるはずじゃ。 最初はプラス十ずつマナを送り、マナを送る感覚、受け取る感覚、自分の限界はどれ位なのかを、魔法を使いながら体で覚えていけ」


 【他人にマナを送る感覚】 【他人からマナを受け取る感覚】


 人から人へのマナの受け渡しなど聞いたことがない。 上手くできれば唯一無二の強みになるかもしれないな。


「ちなみに、百の器に百十のマナを送り続けていると、負荷がかかり手っ取り早く器も大きくなるはずじゃ、もちろん無理しすぎるとパンクするぞ」


「なにその魔力量の鍛え方! 反則的です! ズルイデス!! 私にもプリーズデス!!!」


「ラローズ…… 仕方なかろう、マナがラインで繋がるなど普通はあり得んし、狙って出来る事ではない。 だが折角あるのなら使って育てなければ損ではないか」


「ちなみに、このマナ・コネクトの縮小版がお前とウォーターエレメントじゃ、お前も普通の人から見たら、十分ずるい部類じゃ」


 さっきまで拗ねていたラローズさんが、今度はご満悦な様子だ。

 本当に表情がコロコロ変わる楽しい人だ。


「ラローズは、まずディケムと同じ水球を一つ作ることが目標じゃ。あの水球は地味な訓練じゃが、精霊魔術の基礎が全て詰まっていると言ってもよい」


「――ハイ!」


「魔力の大小の繊細なコントロールに関しては、今まで十分鍛えてきたおかげで、マナも少しは見えるようになったじゃろう。 マナから直接魔法は作れなくとも、精霊と契約した今ならば、精霊の力を借り、ディケムと同じ水球を作り出すことは出来るはずじゃ」


「――ハイ!」



 それから二~三日でラローズさんは水球を完成させた。 サスガデス

 今、俺とラローズさんの水球が目の前に並んでいる。


「最初の目標は達成できたようじゃの。ラローズよ、よくやった」


 ラローズさんがとても不満な顔をしている。


「ウンディーネ様……、水球は出来たのですが、ディケム君の水球とは似て非なるもの、全くマナの質量が違うのです」


「うむ、それが分かるだけでも合格じゃ、お前の水球とディケムの水球では作り方が全く違うから当たり前じゃ、だが今はそれでいい」


 そう、俺とラローズさんの水球は、表面上は同じに見えるが、中身は全く違うのだ。


 ラローズさんは、ウォーターエレメントを呼び出し、顕現(けんげん)させ、ウォーターエレメントの力を使い水球に変換している。 すると水精霊の属性が付与されている水球が出来上がる。


 それに対して俺は、マナを集めて圧縮して、マナ操作で水に変換し水球を作り、最後にウンディーネの属性を付与して、水精霊の属性が付与されている水球を作っている。


 俺の作り方の方が、工程が多いのだが……… そのメリットは計り知れない。


 俺の作り方だと、マナの時点でいくらでも圧縮することが出来るので、出来上がる水球の質量が桁違いになる。


 さらに、最後に属性を付与する事のメリットも大きい。

 最後に属性を付与出来るということは……、何にでも属性を付与する事が出来ると言う事だ。

 極端な例を言えば、マナを火炎球(ファイア・ボール)に変換した後に、ウンディーネの属性を付与することもできる。 水精霊の属性を持った火炎球(ファイア・ボール)が出来上がる。


 これ、試しに作って撃ってみたのだが…… 標的に当たった瞬間、水蒸気爆発を起こし、大惨事になった。

 水は熱せられて水蒸気となった場合に体積が約千七百倍にも膨張する、それが瞬間的に起こると大爆発を起こすのだ。 火山の噴火をイメージすると良い、時には山体崩壊を引き起こす程の破壊力になる。


 俺はあまりの威力に呆然となり、この魔法は封印と心に決めたが…… ラローズさんの目が輝いていて怖かった。

 確かにこの魔法なら、精霊の属性も付与されているから、デーモンスライムに非常に有効だろう。


 だが、これもマナの操作ができない今のラローズさんには作れない。

 マナを魔法の力に変換する、それに精霊属性を付与する、この二つの事が出来るだけで、魔法の威力は桁違いに上がっていくのだ。


 とりあえずラローズさんは、マナの操作に慣れる事だ。

 マナを操作して、魔法に変換する事はかなり難しいことなのだ。

 難しいというよりも…… この変換を行えた魔法師は、二千年以上現れていない。

 俺ができるのは古本屋のオーゾンヌからもらった、【隠された知慧の書】の秘術があったからだ。


 ウンディーネと出会う前からマナの変換で水球を作っていた俺は、異常だったとウンディーネは言う。

 だけど…… だからこそ【大いなるマナの本流】に繋がることが出来て、ウンディーネと契約できたともいえる。


 ………ん? これは本当に偶然が重なって、起こった出来事なのか?

 誰かが仕組んだ、必然だったと考えたほうが―――

 何故か俺の思考が、プツッとこれ以上考えることをやめる……



 とにかくラローズさんは通常ルートの修行を繰り返す、ウォーターエレメントから水球を作り、水球を維持してマナに慣れ、操作に慣れる。

 マナの変換は出来なくても、属性の付与が出来れば―― あの水蒸気爆発火炎球(ファイア・ボール)は作ることが出来る。


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