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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章三節 それぞれのイマージュ  ギーズと西方の勇者
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第五章3-30 幕間 蒼竜刀の鞘 その五

グラン・モンラッシェ視点になります。

 


 ソーテルヌ公爵へのプレゼンテーションの成功に幸せを噛み締め、

 レジーナは嬉しくてたまらなくなり、つい走って帰路につく。


「父上! 兄者! 凄い凄い凄い! やったよ~!」


「レジーナ、少し落ち着きなさい。 ちゃんと説明してくれないと分からないよ」


 レジーナは兄が用意してくれた水を飲み干し、心を落ち着かせてから、ソーテルヌ公爵邸での出来事を二人に話した。


「ほ、本当なのか?!」


「うん! 本当だよ! 直ぐに公爵邸の軍装研究部に鍛造課を作ってくれるって! 宿舎も有るから直ぐに移って欲しいって言われたよ」


「場所も用意してくれるのか…… しかし鍛造は騒音が酷く、火とキレイな水を必要とする、とても貴族街のど真ん中で出来る仕事では無いのだが」


「フフ~ン、父上! 大丈夫だから一週間ほどで準備が出来ると言われたから、下見に行きましょう! きっと驚くから! それと山の生活がダメだった母上も迎えに行きましょう! 母上にも薬草園か食堂での仕事を頂けるそうです。 また家族四人で暮らせます」



 一週間後、半信半疑の母も連れて、四人でソーテルヌ公爵邸へ向かう。

 皆、貴族街のしかも一等地に立つ公爵邸前で立ちつくす……


「レ、レジーナ…… 本当に大丈夫なの? 捕まって酷い事されたりしない?」


「だ、大丈夫だよ母さん。 公爵様直々に移り住んでくれと頼まれたのだから」


 護衛兵に下見に来たことを話すと、案内役のメイドさんが来てくれて邸内を案内してくれる。


 ソーテルヌ公爵邸は基本軍事施設、研究棟、食堂、訓練場、など各施設を案内され、立ち入っていい場所ダメな場所を説明してくれた。

 特に屋敷とその傍に立つ大きな木の近くは立ち入らない事を重々注意された。


「ここは軍事施設でもありますが、精霊様が住まう楽園。 特にあの大きな御神木は近づいてはなりません。 夕方以降に御神木を見て頂ければその意味が分かって頂けると思います。 あとは、先ほど注意した場所以外は、ご自由に出入りくださいませ」


 みな息を呑み、余計な場所には決して立ち入りませんと約束した。



 軍装研究部・鍛造課の研究棟に案内される。

 まずはこれから住む事になる研究棟の隣に併設されている宿舎から見に行く。


「あ、あの…… 本当にここに住んでも良いのですか? ちょっと平民の我々には素敵すぎて、気後れしてしまうのですが……」


「はい、この公爵邸ではこれ以下のグレードの宿舎は御座いません。 また、もし変更してほしい要望が御座いましたら申し付けてください。 良い仕事は良いプライベート環境からと公爵はお考えになっています」



 次に鍛造(たんぞう)課の研究棟に案内されると、ギーズ様が待っていてくれた。


「皆さんいらっしゃい。 研究棟を案内する前にラトゥール様からお話があります」


 そう言うと、ギーズ様の上官ラトゥール様が研究室に入ってくる。

 先日のお茶会に訪れた時にも遠目でお目にかかったけれど……

 本当に人形ではないのかと思うほどの圧倒的な美貌。

 そして、シャンポール王都に住む民で、この方を知らない人はいない。

 エルフ戦役の折、一〇〇〇〇のエルフ軍に三〇〇〇の魔神軍を引き連れて我々を守ってくれた大恩人だ。


 その圧倒的な存在感に、みな自然に傅く。


「楽にしてくれていい。 メイドからも説明が有ったと思うが、ここは軍事施設だ。 これから皆には総隊の研究部隊員として従事してもらう事になる。 よって鍛造師の三名には徽章を与える」


 ラトゥール様はそう言い、私、兄、父に総隊員の証『徽章』を手渡してくれる。


 鍛造課責任者:レジーナ・シャレル(徽章★二)

 クラウス・シャレル(兄)(徽章★一)

 スベン・シャレル(父)(徽章★一)


 ★二は小隊長身分、★一は分隊長身分だと言う。



「徽章は総隊員である証、身分を示す物となる、仕事の時は必ず身に着ける事。 プライベートでは好きにするがいい、騎士達はいつも付けているが、君たちは研究員だ。 ただ、付けていなければ食堂などの各施設での優遇は受けられない事が有る、注意するように」


「以上だ、何か聞きたい事が有れば聞くが?」


「あ、あの…… 私の徽章が★二なのですが、父か兄の間違いでは無いのでしょうか?」


「閣下の判断だ、細かい事はギーズから聞くと言い」


 そう言い、ラトゥール様は退室された。


「あ、あの…… ギーズ様」


「レジーナ、君がこの鍛造課の責任者だ。 それは君がこの待遇をつかみ取ったのだから誇ると言い」


 父も兄も頷いてくれる。


「それとね、君にはもう一つ特別なミッションが有る。 それを説明する前にこの施設の説明をしよう。 クラウスとスベンが、ここが鍛造工房として機能できるのか不安がっているからね」



 この鍛造工房は、シャレル工房とほぼ同じ造りをしている。

 しかし特筆すべきは、防音と浄水だ

 シルフィードの防音フィールドが空気を浄化して騒音を研究棟から外に出さない。

 ウンディーネの浄化フィールドが水をキレイにする。

 さらに、イフリートも居るので、鍛造用の窯も高火力を出すのは容易い。


「ここは妖精の楽園。 精霊の力を借りれば、山奥の工房以上の環境を作る事が出来ます。 風と水の上位精霊様が居るこの場所は、この世界のどこよりも空気と水がキレイだと断言します」


 ギーズ様の説明を聞き、父も兄も唖然としている。

 しかし鍛造に最適な環境が整えられている事は間違いなかった。


「そしてレジーナ。 君には彼女たちと作業してもらいます」


 そう言いうと、『薬師部』のフィノさんがティンカーベルを連れてくる。


「ちょっ! よ、妖精さん?!」


「初めまして、薬師部隊のフィノと言います。 レジーナさんはお茶会の時に見かけているのだけれど…… まぁ覚えていないよね」


 私がごめんなさいと頭を下げたが、あのお茶会で緊張しない方がおかしいと笑ってくれる。


「そして彼女たちは物作りの妖精ティンカーベル。 レジーナさん、あなたは青魔法のスキルが有ると聞きました。 これから彼女たちと常に一緒に仕事をして、彼女たちから『クリエイト』のスキルをラーニングしてもらいます」


「クリエイト?」


「そう。 貴女は『職人』と『青魔法』二つのスキル持ちな事を恥じていましたが、ここではそれがむしろ強みになる。 物作りの妖精ティンカーベルの固有スキル『クリエイト』さえラーニング出来れば、あなたは鍛冶師の枠を超えた鍛冶師になれるでしょう。 同じスキルを持ち同じ悩みを抱えていた私が保証します」


『あ…… ギーズ様』 ギーズ様は微笑むだけだった。


 ギーズ様は私の大切にしている鍛造技術を救い上げてくれただけでなく、私の欠点を強みに変えてくれる指針まで与えてくれた。





 そして私達がソーテルヌ総隊に所属してからしばらくして………


「出来ました! ギーズ様!  蒼竜刀の鞘!!!」


 私達はギーズ様に渾身の鞘を渡す。


「ギーズ様、この鞘は蒼竜刀の力に耐えられるだけではございません。 金属の精霊アウラ様の属性も付与しているので、鞘にしまっておけば刀の損傷も直してくれます」


「おぉ! 素晴らしい成果です、レジーナ」


 ギーズ様の隣にいらっしゃった、ソーテルヌ閣下もほめてくださいました。


「閣下! この技術を今後の総隊武器に使われる鞘にも応用したいと思っています。 そうすれば、隊員の武器のメンテナンス時間を大幅に改善することが出来ますし、戦場での武器トラブルも減らすることが出来ます」


「レジーナ、あなたが総隊に来てくれて本当に良かった。 今後も頼みますよ!」


「はいっ!」




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