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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章三節 それぞれのイマージュ  ギーズと西方の勇者
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第五章3-20 中級悪魔メリヘム

ジャスティノ視点になります。

 


 ジャスティノとパメラに中級悪魔が微笑む。

「フフフ、わたしはメリヘム。 魔王ラーヴァナ様の忠実なる下僕だ」


 パメラに守られていたルーミエ王が、メリヘムの言葉を聞き問う!

「メリヘムだと…… 『あの役立たずの巨人ども……』と言う事は、此度の巨人族の侵攻はお前が元凶と言う事か?」


「元凶……? さぁ、それはどうだろうねぇ~。 そんな事よりさぁ~、ねぇ~ 私の計画、聞きたぁ~い~~~? 凄く頑張ったんだからさぁ~」


 ⦅この悪魔…… アホなのか? それとも殺す前に自慢でもしたいのか?

 どちらにしても、情報は欲しい⦆


「あぁ、あなたの計画とやらを聞かせてくれ……」


「あはぁ~! いいねぇ、そこの木偶の棒! よし教えてやろう」


 ⦅で、木偶の棒………!⦆


「ラーヴァナ様降臨にあたり、一番の不安要素は【蒼竜】! だから私は蒼竜を排除するため、近くで蒼竜を守るように住んでいた中級精霊のニンフをそそのかし、普通の村人の子供に恋をさせたのさぁ~ 人間の子も勇者とか言って、まんまと勘違いしてニンフを連れて旅立ってくれたわ~」


「…………。 ニンフってフリウリ? 村人の子供ってコーダ?」

「そんな……、適正も無い普通の人の子に中級精霊なんて! そんなの破滅の未来しか無い!」

「な、なんて惨い事を!」


「ムゴイ~? 普通の子供が、一刻でも勇者になれたんだから良いじゃない。 どうせ人族の一生なんてすぐ終わっちゃうんだから。 そして巨人族に蒼竜を食わせれば、最悪の障害が最強の手駒に変わるはずだったのに…… 何百年もかけて蒼竜の生まれ変わるこの機会を待っていたのに………」


 ⦅………………⦆


「お前だ! ルーミエ! お前がヘラヘラしてあのシルフィードに守護された奴さえ連れて来なければ! 計画は完ぺきだったのに!! せめてお前だけでも殺してやるぅぅぅ!!!!」


「それはこっちのセリフだ! コーダの人生をもてあそびやがって!」


 ジャスティノとパメラが剣を構える。


 ジャスティノには試算があった、メリヘムは中級悪魔だが、これ程回りくどい計画を立てたと言う事は、頭を使う事は得意だが戦う事は苦手な悪魔なのだろうと。


 だが………

 メリヘムがどこからかウォーハンマー(戦鎚)を取り出す。

 何処から取り出したのかも異様だったが……

 その華奢な女性の姿からは想像できない武器が、さらに異様さを助長させた。



 メリヘムがウォーハンマーを片手で軽く振り回す!

 その一撃をジャスティノが盾で受け止める!

 だが…… ジャスティノは壁まで吹き飛ばされる。


 『っな!』 パメラは目を見開く!


 壁に吹き飛ばされたジャスティノはよろめきながら立ち上がる……

 『だ、大丈夫だ……』 自分の生存をパメラに伝える。


 ⦅今の一撃は正直ヤバかった……

 だが、シルフィード様の風の加護が、ダメージを大幅に軽減してくれている⦆


 ダメージは有るが問題ない!

 風の加護が有れば十分戦える!



「そこの木偶の棒、あなた私が弱いとか思ったでしょ?」


「っな! そ、そんな事は………」


「本当にわかりやすい坊やだね~」


 ≪――――κανόνας(ルール) του(・オブ・) μυαλού(マインド)(意思の支配)――――≫



 ジャスティノはメリヘムに考えを見透かされ動揺する。

 その動揺の虚をつかれ、メリヘムの魔法に支配される。


「か、体が勝手に………」


 ジャスティノの体は、棒立ちのままゆっくりメリヘムに歩いていく!

 そしてその先には、あのウォーハンマーが待ち構えている。


 ⦅ヤバイ! この悪魔強い! 力も魔法も相手の心の読む力も……)


「アハァ~ 『今この悪魔強い』って思ったでしょ~? もう遅い! 死ねっ!!」


 棒立ちで歩くジャスティノに、先ほどは片手で振り回したウォーハンマーを、今度は両手で力いっぱい振り上げてくる!


「っく! からだ! 動け―――!!!」


 現実とはそれ程人に優しくない。

 気合で魔法が解けるほど、魔法とは脆弱ではないのだ。


 ジャスティノがウォーハンマーの餌食になる――― 寸前! 

 パメラが盾を構えて、二人の間に滑り込む!


 力いっぱい振り回されたウォーハンマーの攻撃で、パメラは壁を突き破り隣の部屋まで吹き飛ばされる。

 そこでパメラの意識は暗転した。

 もし、風の加護が無ければ即死のダメージだっただろう。



 だが、勝ちを確信したメリヘムにも油断が生じていた。

 今の一撃に渾身の力など使う必要は無かったのだ。

 さらにその油断でジャスティノへの『意思の支配』も緩む!


 少しだけ体の自由が戻ったことをジャスティノは見逃さない!

 そして大技の後にはどんな達人でも一瞬体が硬直して隙が生まれる。


 そこにジャスティノは剣を構えてそのまま倒れ込むようにメリヘムにぶつかっていく。

 それは技でもなんでもなく、ただ剣を突き出しての無様な体当たりでしかない。


 普通ならばメリヘムほどのレベルの悪魔にそんな無様な攻撃など当たるはずはない。

 だが、メリヘムの油断が不必要な時に大技という大きなミスを引き起こしてしまった。


 自分の油断が大きなミスを引き起こしたことをメリヘムも気づく、そして硬直した体をどうにか動かそうと必死にもがく。


 ジャスティノの体当たりの突撃により、剣がメリヘムの胸を貫く………

 そして一瞬遅かったがメリヘムのウォーハンマーがジャスティノを薙ぎ払う!


 胸を貫かれたメリヘムは致命傷、薙ぎ払われたジャスティノは重症。

 その結果には大きな差が生まれた。



「な…… なんという事…… 噓でしょ? この私がこんな木偶の棒に………  ならばせめて―――!」



 ≪――――χρόνος(クロノス・)αντιστροφή(アナストロフィ)(時間反転)――――≫



 ジャスティノに致命傷を負わされた中級悪魔メリヘムが、

 自分の魂を使い、禁呪【時間反転】を唱える!




「アハァ~ アハァハハハァ~  ラーヴァナ様~」




 メリヘムは塵の様に砕け散り、四散した。



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