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第一章20 ラスとラローズ2

ラス・カーズの目線になります。


 一年前、ウンディーネ様の招集に集まり、アルザス渓谷のカヴァ将軍は約二年動かないだろうと告げられた。

 いつ動くか、今日にも来るのではないかとビクビクしていたが、最も欲しかった情報を聞くことが出来た。 ......もちろん確定ではないことは承知だ。


 王都にもこの情報を送り、体制を整えていく。

 二年の猶予、これは逆に言えば二年後には来ると言う事でもある。

 この情報のアドバンテージは大きい。


 二年後を見据えて、俺達騎士団はもっと強くならなければならない。

 その為の厳しい訓練を毎日していると、この土地の凄さを思い知る。


 マナが豊富なこの訓練場は、秘密の場所なのに、ウンディーネ様がワザと俺に教えてくれた場所だ。

 俺はウンディーネ様の温情に応えるべく、王に直接直談判して情報統制を引き、期間限定の使用、訓練が終わったら全て撤収、王国騎士団第一部隊以外にはこの場所を使わない、これらの約束事を王に確約してもらった。


 王もウンディーネ様を怒らせてはいけない事を分かっている。

 あくまでも一時的に場所をお借りするだけだ。

 幸いにもここはマナの濃さが本当に尋常ではないようで、兵士たちもみるみる強くなっていった。 来るべき決戦までにはもっと強くなれるだろう。



 このマナが豊富な土地とウンディーネ様が居なかったら、ラローズはウォーターエレメントと絆を深める事は出来なかっただろう。


 この一年間ラローズは頑張った。

 寝る暇も惜しんで、目的に突き進んだ。

 ………でも俺はどうしたら良い? 勝たなければ、人族には未来はない。


 ――だが! 俺はラローズを失いたくない!


 今まで戦場で散々部下には死んでくれと言ってきた、その俺が………。

 ラローズには死んでほしくない!

 ずっと傍にいてほしい!


 ――俺はなんて我がままで、身勝手で、卑怯な男なのだろうか!



 そう嘆いていたが時間は無情だ。とうとうその日が来てしまった。

 ラローズは契約の儀に臨む。

 ウンディーネ様は、一週間考えて決めろと言ってくれたが………。

 ラローズは、『契約を行うのは決定です! 』 ――と言い放った。


 彼女はなんて強いのだろうか......。 ぶれることのないその眼差しは、とても自分が口を出していいものではなかった。

 それでも俺は、君にすがりつき、死なないでくれと懇願したい。



「ね~ラス、なんて顔しているの?」

「俺は弱い人間だ、そして卑怯だ、沢山の人を死地に送り込んでおいて、君には行ってほしくない」


「フフ、ラスは泣き虫で寂しがり屋さんね~」

「ラローズ! 君は俺の全てなんだ! 君が居ない世界なんて考えられないんだ!」


「ねぇ、私の愛するラス。 笑って『行って来い!』って言ってよ」

「――無理だよ!」


「『きっと君なら大丈夫!』って笑って言ってよ」

「俺にそんな勇気は無いよ! 行かないでくれよラローズ…… たのむよ! 俺を一人にしないでくれよ………」


「私はねラス。 泣き虫で優しいあなたを、必ず私が守るって決めたの。 カヴァ将軍の弱点が精霊魔法と聞いたとき、私は歓喜したわ!」


「今まで泣きながら部下を死地に送ってきたあなたは、もし今度も部下だけを死地に送るとなったら………  あなたは罪悪感で心が壊れてしまうかもしれない」


「でも今回はちがう、あなたは最初に身内を送り出すの。 もし私が死んだら、あなたは悲しみに暮れるかもしれない………。 でもその悲しみが、罪悪感からあなたの心を守ってくれるわ」


「………………………」


「ほら笑って、ラス! 最後になるかもしれないのに、泣き顔でお別れなんて嫌よ」

「………ラ…ラローズ、 き…君なら絶対大丈夫だ………」


「そぅ!ラス。 私は笑顔のあなたが一番大好きよ!」

 ――ずっと愛しています………


 そう言って、ラローズは軽くキスをして、契約を行う森の中に入っていった。


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