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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章三節 それぞれのイマージュ  ギーズと西方の勇者
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第五章3-14 土と炎の巨人

ギーズ視点になります。

 


 巨人族軍五〇〇〇と、ジョルジュ王国軍六〇〇〇〇の戦闘が始まった。



 巨人族軍は(くさび)のような陣形でジョルジュ王国軍に突き刺さる。

 ジョルジュ王国軍は逆にその圧倒的な数の優位で、突き進む巨人族軍を引き込み、包み込むような陣形で全方位からの攻撃に移行する。




「ハッハッハ~! どうだフィジャック卿! これでもう勝ちは揺ぎ無いぞ!」


 背後から突如聞こえる声に振り向くと、ジョルジュ陛下とブシエール殿下、ルーミエ殿下もこの部屋に来ている。



「陛下!」

「パメラと言ったな、そのままで良い! 皆でこの戦の勝利を見届けようではないか!」


 ジョルジュ王国軍は、徐々に巨人族軍を包囲していく。

 包囲が完了すれば、戦場の駆け引きなど無いただの消耗戦に移行する。

 包囲した陣営が圧倒的に有利になり、さらに数の暴力で勝敗は決する。




 ギーズは、ジョルジュ王国の王族も居る事から、

 ソーテルヌ総隊六名とパメラを『言霊』でつなぐ。


 『ギーズ。 心配は杞憂だったみたいね』


 『マディラ…… 巨人族軍のマナを探ってくれ。 途方もないマナを持った巨人が三体いる』


 『え……? ッ―――あっ!!!』


 『ちょッ! 【神話級の巨人】が三体も居ると言う事ですか?』


 『パメラさん、神話級かは分かりませんが…… 土・火・水属性の強大なマナを持つ巨人が三体居る。  このまま何事もなく終わってくれれば良いのですが……』


 『風属性は蒼竜確保で防げたみたいね?』


 『あぁ…… だが問題はあの属性を持つ巨人が、どの程度の神格を持つ神獣を食らったかだな…… 水属性の巨人がとりわけマナが強大だ。 かなりの神格の神獣を食らったのだろう』


 『そんな…………』



 パメラが『何も起きませんように』と神に祈っているとき………

 ジョルジュ王国軍の包囲網が完成する。


「よしっ! これで勝ったぞ!!!」



 ドオォォォォォ――――――!!!



 ジョルジュ陛下の勝利宣言が合図だったかのように、戦場に轟音が鳴り響く!


「な、何の音だ?!  何が起こった!?」



 戦場では、巨人族軍を包囲したジョルジュ王国軍が、巨人族軍を囲むように出来た巨大な地割れに呑み込まれている。


「なっ! 地面を割った?!」


 突如出来た巨大な地割れに、五〇〇〇程の兵が呑み込まれている。

 地割れに呑まれた兵士たちは、必死に這い上がろうとするが………

 そこに炎が吹き荒れる!!!


 この一瞬で王国軍は五〇〇〇もの兵を失った!



「陛下! 先陣を切っていた第二・第五騎士団壊滅致しました!」


「なっ! バ、バカな!!!」


 ジョルジュ王国軍は、平民で構成された戦いに不慣れな一般兵を後ろに下げ、

 騎士団で構成された騎兵隊を前面に出していた。


 開戦直後の戦いは、縦横無尽、臨機応変に陣形を変えて、敵軍より有利な陣形に素早く持ち込むため、戦いなれ機動力に優れた騎兵隊が前に出る。これは必定な事だった。

 だが…… この巨人族の反撃で、五〇〇〇の兵が瞬殺、その内三〇〇〇は騎士団の騎兵隊だった。


 ジョルジュ王国軍は、この一瞬で主力の騎士団の三割を失ったことになる。



 あまりの出来事に王国軍はパニックに陥る。

 さらに、巨人族軍の周囲に堀の様に出来た地割で、攻め込むことも出来ない。

 戦いに不慣れな一般兵は、混乱で押し合い地割れに落ちる兵も多数いる。

 地割れの中は、いまだに炎が吹き荒れている。

 落ちた兵の断末魔の叫びとその末路が、さらに恐怖を助長する。


 そしてこの勝機を巨人族軍は逃さない。

 混乱に陥るジョルジュ王国軍の頭上に、巨大な炎の玉が降り注ぐ!


 さらに、巨人族軍を守るように出来た地割れから、何本もの地割れが伸びていく!

 地割れはジョルジュ王国軍を次々に崖へと落とし、分断し、炎で焼き尽くす。


 それは悪夢の光景………

 たった二体、土と炎の神話級巨人の為に、勝利の天秤は一気に逆に傾いた。



 次の瞬間、巨人族を守るように出来ていた崖が、一瞬で塞がる!

 地割れに落ちていた兵士は、土の飲まれ押しつぶされる。

 そして巨人族軍が混乱した王国軍へ一気に襲い掛かる。


 押し寄せる巨人族軍。

 さらに、次々と出来る地割れが騎士団を呑み込んでいく!

 その混乱に、巨人族軍は狙い撃ちで騎士団だけを狩っていく。



 『これは…… 明らかに騎士団だけを狙い撃ちしている。 神話級巨人が人族軍を混乱させ、その混乱に乗じて人族軍の頭たる騎士団だけを打つ。 六万の兵も、それを動かす一万の騎士団が居ればこそ。 かなり頭のいい指揮官が居るぞ!』



 五〇〇〇の巨人と一〇〇〇〇の騎士では、圧倒的に巨人の方が強い。

 さらに騎士団は初撃の地割れで三〇〇〇もの騎士を失っている。


 騎士団が壊滅すれば、残された一般兵は有象無象……

 まだ数では圧倒的有利なのだが、指揮官が居なく無くなれば、一般兵は機能しなくなる。



 『ギーズ…… 巨人族って知能はそれ程高く無いんじゃなかったの?』


 『わからない…… しかし、この戦いを見る限りでは、知能が低いとは思えない。 しかも兵士の練度も非常に高いし、統率も人族軍より取れている』


 『そんな………』


 『マディラ、まだ水属性の巨人が動いていない。 この戦い…… 難しくなったぞ!!』



 その時、ジョルジュ王都の南城壁が一気に崩れ落ちる。

 神話級の土属性巨人は、地割れも作れるが、城壁を崩すことも造作もない。



「そんな!  バ、バカな―――!!!」


 ジョルジュ陛下の悲鳴にも似た叫びだけが響く。


 巨人族戦は、最悪な一般人を巻き込んだ市街地戦へと突入した。



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