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第一章19 ラスとラローズ1


 王国騎士団の人たちとの合同訓練が始まり、一年以上が経った。 


 俺の成長はと言うと……。

 水球を八個作れるようになった。

 前にウンディーネに最低十二個と言われたが……無理すぎる!


 あとはウンディーネとの秘密特訓、皆には隠れて【大いなるマナの本流】とのラインを繋ぐ訓練をしている。

 これは間違えると大きすぎる力に飲まれ、制御できなくなる。

 ウンディーネも細心の注意を払いサポートしてくれている。


 もちろんまだ、ウンディーネがアルザス渓谷の魔族軍を調べたような、離れた場所の敵の状態など感じ取れるはずもない。


 基本的な自力は上がっていると思うが……、 成果が地味すぎて他の皆より成長してない様に見えて焦ってしまう。


 ウンディーネからは、『大丈夫! 焦るな! 自分では分からぬとは思うが、オヌシは一年前より比べ物にならないくらい強くなっている』と励まされている。


 ………ホントかなぁ~?




「みな集合じゃ!」 一年前に集められたメンバーが呼ばれた。


「この一年、子供たちの成長は、まぁまぁと言ったところじゃな」


「っで、次の総評は大人たちじゃが………」

 ――ゴク! 大人達が息をのむ。


「ラモットは、自分でも分かっているな? まだウォーターエレメントと絆を結べていないな。 契約は無理じゃ」

「はい………」


「そしてラローズ、オヌシはウォーターエレメントとかなり親交を深めたな。 もし覚悟が出来ているのなら、契約の儀を行うぞ? どうする」

「――ハイ!」


「一週間考えて決めるのじゃ、もし契約の儀を諦めたとしても、お前を責める権利など誰にもない。 お前自身が自分で決断することじゃ」

「――ハイ!」


「そしてもし契約が成功したとしても、そこがゴールではない。 契約してから戦闘に使えるように訓練をしなければ意味が無い。 一年では足りないくらいじゃ、この一年のディケムを見れば、精霊使いの訓練の地道さを理解できよう」


「――ハイ! ウンディーネ様、契約を行うのは決定です! ですが一週間だけお時間を下さい」


「ウム……。 前にも言ったが心残りの無いように過ごすのじゃぞ」

「ハイ………。 ありがとうございます」


「一週間後、もしラローズが契約に成功したら、子供たちと新しい訓練に移る。 子供たちはどちらにしても新しい訓練メニューに移るのは確定なので心しておくように」


「「「——ハイ!」」」



 とうとうこの時が来た…… 来てしまった。


 ラローズさんは、この日の為に一生懸命訓練を続けてきた。

 しかし、精霊との契約の儀は命を懸けた儀式になる。

 俺達も、ラローズさん達と一緒に訓練を続け、親しくなればなるほど……

 契約の儀など挑まないでほしいと思ってしまう。


 それが、ラローズさんの努力に対しての裏切りだったとしても……

 親しい人には死んでほしくない。

 ラス・カーズさんは、どんな思いで今日のウンディーネの言葉を受け止めたのだろうか......。


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