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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章三節 それぞれのイマージュ  ギーズと西方の勇者
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第五章3-1 ジョルジュ王国の王子

ギーズ視点になります。


 その日ギーズとマディラは、いつものように学校からソーテルヌ邸に戻り、訓練場へ向かう。


 先日ララが任務から戻って来たばかりで、ラトゥール様が今、魔神族領へ帰郷している。



 ソーテルヌ総隊、近衛隊の誰かが任務に出動や不在の時は、訓練場は少し緊張でピリッとしている。

 総隊としての力は、近衛隊の三人の力が大きいからだ。


 今大事が起これば、大きな戦力を欠いたまま事に当たらなければならない緊張感がある。


 正直、『ディケム一人がいればどうとでもなるのでは……?』とギーズは思ってしまうが口に出してはいけない。

 それを言ってしまうと、軍、総隊としての意味すらなくなってしまう。





 そんな緊張感が伝わってくる訓練場を歩いていると………


 マディラの目の前に一匹のモフモフした真っ白な狐がチョコンと座っている。

 この場に相応しくない、癒し系のモフモフだ。



 ⦅ちょっ! な、なにこのモフモフした生き物―――!!!)

 ⦅モフモフしたい……… あ…… あぁ…… モフモフしたい!!)



 マディラが欲望を抑えきれず玉藻に手を伸ばそうとしたとき―――

 玉藻はピョント飛び、ララの胸に飛び込む……


 ⦅―――――――――!!!⦆



「ちょっとギーズ!! 私もララみたいなモフモフしたの欲しい!!」


「マ、ディラ……… モフモフしたのって言うけど…… あれ九尾だよ! S級を超える神獣だからね!!!」


「し、神獣って言っても…… あんなにモフモフしてたらほしいでしょ!」


「欲しいって言って手に入れられる存在じゃないよ神獣って………」


「いえ、ギーズ! 私とあなたの将来の幸せな家庭生活に、あのカワイイモフモフは必要よ!  探しましょう!!!」


 マディラのワガママとも言える強引なおねだりだったが………

 『将来の家庭生活』と言われてしまうとギーズは弱かった。

 マディラの為ならば、『どんな願いも叶えます!』

 そんなポンコツなギーズだった。





 そんな事を話していると、ギーズの肩に燕が舞い降りる。

 半透明で薄っすら虹色に輝く燕、ディケムの『言霊』だ。


 言霊は、風の属性シルフィードと繋がるギーズにも使えるのだが……

 その人が繋がる精霊の属性分色が混ざるようだ。

 ギーズの言霊は薄い青色一色、だけどディケムの言霊は七柱分、虹色に輝く。


 それまで駄々をこねていたマディラにも緊張が走る。



 『ギーズ、聞いてもらいたい案件がある。 執務室に来てくれないか?』

 『了解です』


「マディラ。 悪い、仕事の話みたいだ、先に―――」

「私も行きます!」


「いや……マディラ。 勝手に一緒に行くとか、軍人として無理だろう?」


「このソーテルヌ総隊の決まりは、まずは本人の希望のバディを選べるはずです! それに…… 私はディケム様の側近! 各部署を円滑に繋ぐ橋渡しです…… ディケム様の名代としての権限もありますし……… それに………」


 最後の方は、しどろもどろのこじつけっぽかったけど……

 マディラが僕の事を心配でついて行きたいと、必死になってくれていることが嬉しかった。


 ⦅ほぼ職権乱用だけど…… まぁいいか⦆


 結局僕はマディラを連れて執務室を訪ねた。





「近衛隊のギーズ・フィジャック、並びに側近のマディラ・ボアル参りました」


「…………。 ギーズ…… 仲が良いのは良い事だが、なぜマディラも居る」


「ソーテルヌ閣下、私は側近であります。 近衛隊のギーズ様が呼ばれる案件は総隊にとって重要です。 さらに今はラトゥール総帥も不在です。 近衛隊の二方がご不在になるかもしれない大事、側近が把握しておかなければならないと愚考いたしました」


「…………。 まぁ筋は通っている。 今回は良しとするが、軍の中では風紀も大事だ。あまり公私混同に見える行動は避けてくれ」


「はっ! 以後気を付けます!!」




「ルーミエ王子、お恥ずかしい所をお見せしました。 お詫びいたします」



 ディケムがそう話しかけた、執務室のソファーを見ると、見覚えのある顔、ジョルジュ王国のルーミエ王子が座っていた。


 見覚えがあると言っても、一方的に見た事が有るという事で、ルーミエ王子は僕の事など知らないだろう。


 魔法学校の入学式、そして二年生の始業式のときも、在校生の代表挨拶を行った二歳年上の超エリート王子だ。

 それ以外では、舞踏会でディケムを囲んで話しているところを見ただけで、僕たちとは住む世界の違う雲の上の人、と言う印象だった。



 思わぬ大物が居た事で、マディラが固まる。

 でも仕方がない…… 来てしまった手前、もう引き返せない。



「ギーズ君。 急に呼び出して申し訳ない」


「はっ! ルーミエ王子に、私の事など知っていただけているとは光栄であります!」


「それは知っているだろう。 あのグラディアトル大会は私も観戦していたし。 あの暗黒竜戦では結界を維持して我々を守ってくれた。 命の恩人の名を知らぬなどあり得ぬよ。 それに…… ソーテルヌ公爵の四門守護者の名は、今や人族で知らぬ者など居ないだろう。 先日も【白の王】ララ殿がマルサネ王国で大活躍していたと聞き及んでいる」


 ⦅や、やばい…… どんどん期待のハードルが上がってる気がする⦆

 ⦅それにしても…… その四門守護者とか白の王とかの二つ名、王族にも浸透しているのか?⦆



「そこでだ、【青の王】ことギーズ君に聞いてほしい事が有って来た」



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