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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章三節 それぞれのイマージュ  ギーズと西方の勇者
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プロローグ:新たな勇者誕生1


 ジョルジュ王国の田舎にヴージュ湖という美しい湖がある。

 その湖のほとりには、湖の名前を取りヴージュと名付けられた小さな村がある。


 そのあまりにも美しい湖から、ヴージュ村では昔から湖には水の精霊が住むと言い伝えられ、精霊信仰が盛んだった。



 ヴージュ村では、子供が生まれたらまずは、赤子を湖につけて精霊の加護を願う儀式が行われていた。


 そんな精霊信仰のヴージュ村に一人の男の子が生まれる。


 男の子の名は『コーダ』。


 ごく普通の村の夫婦の子。

 だが生まれたてのコーダを儀式通り湖につけたとき………

 ヴージュ湖の水がざわめき立つ!


 多くの村人がその儀式を目撃し、ざわめき立った湖に村は大騒ぎになった。



 『精霊の加護』を授かった奇跡の子として、コーダは注目を浴びて育った。

 だがコーダには、『加護の儀式』以来なんの特別な出来事も起こらなかった。


 奇跡の子として人々から特別視され………

 しかしそれ以来何も奇跡が起きない事からの嘲笑も受けた。


 コーダの思いとは関係なく、村人の勝手な期待と勝手な失望を受けて育ったコーダは、いつしか人と関わることが怖い、人が苦手な子供に育ってしまった。




 その日もコーダは村の子供達とは遊ばず、ヴージュ湖の畔で一人で遊んでいた。


 すると一人の女の子がコーダに声をかける。


「コーダ…… 今日もお友達と遊ばないでここで一人で遊んでいるの?」


「フリウリ! おはよう。 どうしても皆と馴染めないんだ…… でもフリウリは違うよ! フリウリだけは昔から僕を特別な目で見ないで普通に接してくれた。 僕が本当に楽しく過ごせるのはフリウリと居る時だけなんだ」


「もぅ…… しょうがないなぁコーダは」


 そう言い、二人はいつものように遊ぶ。

 小さい時からコーダとフリウリはいつも一緒。

 このヴージュ湖の畔が二人の秘密の遊び場だった。




 そして年月が経ち……

 コーダも青年に育ち、次第に美しく育ったフリウリに恋をする。

 そしてフリウリも逞しく育った青年コーダに恋をした。


 この日もいつものように二人はヴージュ湖の畔で語り合う。




 この年頃の男の子の話は、もっぱら英雄や勇者の話だ。

 とくに過度な期待の目を受けて育ったコーダは、英雄に憧れる傾向が強い。


 そして今人族で最も憧れる英雄は、シャンポール王国のソーテルヌ卿だ。

 人族領のどの子供も彼に憧れる。


 ソーテルヌ卿はコーダと同じ歳にも関わらず、数々の偉業を成し遂げていく。

 そしてその伝説は今も次々と増えていく。

 過去の英雄譚では無く、今同じ時代に生きる、同年代の英雄―――

 憧れない若者など居ないだろう。



「フリウリ! ソーテルヌ卿には彼を守護する『四門守護者』が居るんだ! その筆頭があの魔神族の五将の一人、ラトゥール様なんだ!  すごいだろ!?  なんで魔神族のラトゥール様が人族のソーテルヌ卿の守護者になられたのだろう? そこに色々な物語があると思うとワクワクしないか!?」


 楽しそうに話すコーダの話題にフリウリも楽しそうに微笑む。

 普通のこの年頃の女の子の興味は、勇者や英雄では無く、身近な恋愛話だろう。

 だが、いつもフリウリは嫌な顔一つせず、コーダの話を聞いている。


「あぁ…… 僕も早く戦いに出て、戦功をあげ、ソーテルヌ卿とまで言わずとも、四門守護者のような人たちと肩を並べたいな~」


 その言葉に、いつもはコーダの話を楽しそうに聞くフリウリが、珍しく反論する。


「コーダは戦争に行きたいの? 戦争に行ったら死んじゃうかもしれないんだよ? このまま静かにこの村で暮らせたらいいじゃない!?」


 初めてフリウリに反論され、コーダもビックリする。


「フリウリ! この戦乱の世の中で、戦わないで平和に過ごせるなんてある訳がないじゃないか…… 戦わなくては生きていけない。 強くなければ死んでしまうんだ。 俺はフリウリを守れるくらい強い男になりたいんだよ!」


「………………。 だけど………」


 フリウリは戦う事を忌避するが………

 コーダの言葉を否定することも出来なかった。


 ただフリウリは願う。

 このまま戦争などに巻き込まれず、平和な毎日が続きますように………と。




 だが………

 そんなフリウリの小さな願いすらこの戦乱の世の中では叶わない。




 ある日、巨人族のオーガが国境線を侵しヴージュ村を襲う。


 巨人族のオーガ種は知能が低く残忍だ、風貌はまさに鬼。

 知能が低い事から、度々国境線を超えて暴れまわるが、巨人族からはオーガは種族と言うよりは魔物に近く、管理などできないと言われている。

 人族領で暴れるオーガは、自由に討伐してくれと言われているが………

 それが本当かわ分からない。


 度々侵入してくるオーガは、しっかり武装され、体長も優に三メートルは超える。

 一匹でも侵入してくれば、人族からしてみれば大災害になる。

 意図的に送り込まれているように思われるが、大国の巨人族に人族は反論できないでいた。



 この日、ヴージュ村を襲ったオーガは五匹……

 一匹でも大災害のオーガが五匹、村は全滅を免れない事態だ。



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