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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章二節 それぞれのイマージュ  ラトゥールの想い
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第五章2-14 魔神どもの遊び場

ラトゥール視点になります。



 ラトゥール、マルゴー、ムートンは雷嵐竜シュガールに乗り、

 霊峰カタトゥンボを離れ、雷神山脈を下る。



 来るときは雷神山脈まで、馬を乗り継ぎ四日、雷神山脈を三日、霊峰カタトゥンボを二日と、計九日間もの日数を費やした。


 それが雷嵐竜シュガールに乗れば一日で帝都ミストラルへたどり着く。


「ホント…… 竜とは理不尽な存在ね」


「あぁ…… ワイバーンや普通の幼竜、成竜ならまだしも、このような古龍エンシェントドラゴンを使役するとは…… しかも雷と破壊の上位精霊バアルまでも……」


「ムートン、マルゴー、この程度で驚いてどうする! ディケム様の所には暗黒竜ファフニール様もいらっしゃるのだぞ!  それにあの方からすれば…… このバアルですら使役する精霊の一柱でしかない。 もうディケム様がこの世界の支配者で良いのではないか?」


 満面の笑顔で無邪気にディケムを崇拝するラトゥールにマルゴーが呆れる。


「ラトゥール…… ディケム様の目的は、憶測の域は出ないがこの世界の支配では無いのだろう?」


「…………。 あぁ…… たぶんな」


「俺は初めてディケム様を見たが…… ラトゥールが言った言葉、『ディケム様の力は、もう既にその総合力で優にラフィット様を超えている』にわかに信じがたいと思っていたが……  あのバアルとの戦いを見れば、納得せざるを得えぬな」


「お前は相変わらず人の話は信じぬのだな!」


「人族が、魔神族の最高峰だったラフィット様を超えるとお前は言ったのだぞ!  ラフィット様の近くに居た者ほど、信じられない…… 信じたくはない言葉だろう?」


「まぁ、お前の気持ちも分からないではないが……」


 ラトゥールは少し考えこみ、マルゴーに話す。


「なぁマルゴー。 我々魔神族は強い種族だ。 だがその強さに慢心し、このところ全ての事が停滞していないか? 次席として軍を管理しているお前ならば思うところはあるのではないのか?」


「………………」


「この世界を支配する。 それが目的ならば今のままで良いのだろう。 だが――もっと高みを目指すのならば…… ラフィット様は、最もか弱き種族『人族』にこの悪趣味な世界を変える力を見たのだろう」




「なぁマルゴー。 カステル皇帝は話してくれないが、あの方とラフィット様は結託していると思わないか?」


「だろうな……」


「我々魔神族は、楽しければそれでいい。 我々はもしかすると全てカステル皇帝とラフィット様のお遊びに巻き込まれているだけなのかもしれないな……」


「…………。 この世界を滅ぼしかねぬお遊びなど御免被りたい」


「ハハ、お前は相変わらず堅物だなぁ」






 ラトゥール達は雷嵐竜シュガールに乗り、帝都ミストラルの上空を飛ぶ。

 もちろん帝都は大騒ぎになるが…… そんな事、ラトゥール達は気にしない。


 帝城のエントランスへ竜で乗りつければ、魔神族の兵士たちが駆け付ける――― 

 だが竜に乗るラトゥール達を見て、警戒から羨望の眼差へ変わる。


 魔神族とは強さが正義の種族。

 強さの象徴たる竜に乗る者は、騒ぎを起こす者では無く、尊敬する者となるのだ。

 人族領では考えられない概念だ。




 ラトゥール、マルゴー、ムートンは、此度の報告の為、謁見の間へと向かう。

 謁見の間には、カステル皇帝と五将のオーブリオンが待っていた。



「カステル陛下、ただいま戻りました!」


「あぁ、よくぞ無事に帰ってきてくれた」


「はっ!」


「それで…… マナを見れば大体は分かるが、どうだったのだ?」


「はっ! ディケム様は『雷と破壊の上位精霊バアル』との契約を見事に果たされました! そして―― 私はディケム様とマナラインを結ぶことが出来ました!」


「ほぉ。 本当に繋がることが出来たか……… そしてバアルとシュガールも手に入れたようだな」


「はっ! さらにはウンディーネ様とも繋がることが出来ました」


「そうか…… これでお前の憂いも、晴れたと言う事だな」


「憂いが無くなったとまでは申せません…… やっとあの三人と同じ土俵に立てた、と言うだけですから……」


「フン。 同じ土俵に立てさえすれば、お前がアイツの為に後れを取る事など無いであろうよ」


「はい」


「せっかく一仕事終えたのだ、ゆっくりして行けばいいと言いたいところだが…… お前の顔が早くディケムの元に帰りたいと言っておるな………」


「はい。 あの方の望みを叶える為、少しの時間も無駄にしたくないのです。 十四年間もの時間を無駄にしてしまったのですから」


「…………。 十四年間が無駄だったとは思わぬが、まぁ良い。 ならば帰る前に二つほど人族領の情報をやろう」


「情報ですか?」


「あぁ。 一つはこの魔神族と人族、そして巨人族領との国境を守る国【ジョルジュ王国】だ」


「ジョルジュ王国………」


「巨人族は『人、魔神、エルフ』の三種族同盟を脅威に思っている。 そして今、どの種族・国でも一番噂される名は人族のディケムの名だ! これ以上手が付けられぬ脅威になる前に叩いておきたいのだろう。 近々ジョルジュ王国への大侵攻が行われるぞ!」


「ッ―――なっ! 正直ジョルジュ王国など、どうでも良いですが…… 巨人どもがディケム様も視野に入れているのでしたら、その侵攻どうにかしなくてはいけませんね」


「いやラトゥール…… ジョルジュ王国はシャンポール王国の同盟国だぞ! どうでも良くはあるまい………」


 ラトゥールはそれがなにか? と言いたげに首をかしげる。


「………。 まぁ良い……… もう一つは、『モンラッシェ共和国』だ」


「モンラッシェ共和国ですか………」


「そうだ、あの国は魔神族、人族、獣人族、鳥族、魔族などの、多くの国の要衝の国。 この全ての種族が覇権をかけ争っているクソな世界で、珍しく他種族が共存している国だ」


「その場所がら『モンラッシェ共和国』はどの種族国家のアキレス腱になりうる地理。 どの国も欲しいが、負ければ致命傷になる事から、一番最弱な人族が治める事を認め、問題を棚上げしてきた場所」


「あぁそうだ。 だがここに来て人族の力が脅威に変わった。 安全の為に人族領と認めていた要衝が各国の懸念、アキレス腱に変わってしまった」


「………………」


「俺の掴んだ情報によれば――― 近々魔族が『モンラッシュ共和国』の国落としを考えているらしい」


「国落とし……? 大侵攻と言う事ですか?」


「いや、あの国は表向きはまだ不可侵条約。 表立った大侵攻は行え無いだろう。 面倒な事に悪魔共を使ってなにか企んでいる様だぞ」


「悪魔ですか…… しかもモンラッシェ共和国はシャンポール王国とは同盟を組んでいません。 軍に所属しているディケム様は、同盟国の手前大々的に動けない……… 面倒ですね」


「だから…… であろうな。 そしてタイミングが良すぎる。 多分だが『巨人族』と『魔族』は繋がっている。 そしてペデスクローがこの魔神族領から姿を消した」


「ぺ…… ペデスクロー! あのお兄様を裏切り死に追いやった大罪人!!!」


「ムートン! ラフィットの死にペデスクローが関わったという証拠はない。 只の憶測にすぎぬ!」




「カステル皇帝! 情報ありがとうございました。 あとは私にお任せください!!!」


「あぁ頼んだぞ! この規模の面倒事は、人族の手に余るであろう。 結局は事の処理はディケムの奴に回ってくる。 お前がディケムの盾になってやれ」


「はっ!」




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