表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第五章二節 それぞれのイマージュ  ラトゥールの想い
189/553

第五章2-12 覚醒

ラトゥール視点になります。



 薄れゆく意識の中―――

 ディケム様が叫ぶ姿が見える………


 あなたさえ無事で居てくれればそれで良い。

 あなたの為ならばこの命も捧げます―――






「ラトゥール……… このバカ者が……… 何という無茶なことをする。 この賭けに負ければお前の魂はマナに帰り無に帰すのだぞ!!!」



 聞き覚えのあるその声に、ラトゥールは目を開ける。



 私はマナの大河の上に浮いている。



「ウンディーネ様………」



「お前はそこまでしてディケムと繋がりたいのか?」


「はい」



「どうしてじゃ、お前は十分強い」


「………………。 ですが…… いずれディケム様と繋がる者は私を追い越していくでしょう」


「必ずしも一番でなくても良いであろう? 役に立ちたい気持ちに順位など必要あるまい」


「私はディケム様の一番の協力者で居たい。 あの方が力を必要としている時に、自分が力になれない、自分では無い誰かに頼るようなことは耐えられないのです」


「…………。 だが……、死んでは元も子もない無いじゃろう?」


「ここで終わるようならば、私などそれまで。 中途半端な期待など害悪でしか無い。 ディケム様の力になれない自分など、早々に退場した方が良いのです」


「ラトゥール………。 お前の考えは偏ってはいるが、我が主を思う気持ちは本物じゃ。   お前の覚悟を認めてやろう!  お前とディケムを繋いでやる」



「―――ッ!!!  ウンディーネ様!!!」




「じゃが、妾が出来るのはそこまで!  お前を貫いた傷は致命傷じゃ。 さぁラトゥールよ、妾以外の七柱の精霊誰でも良い、協力を仰ぎ、力を借り受け己の肉体を再生して見せよ!」



 ラトゥールはウンディーネの言葉に頷き―――

 一度目を閉じ、大きく息を吸って、目を見開く!



「雷と破壊の精霊バアルよ!  私に力をよこせ! 私はお前の主人の最強の盾と矛になって見せよう! この命の全てをかけてディケム様をお守りする事を誓う」



 ラトゥールの叫びがマナの大河に響き渡ったあと―――

 突如、マナの大河に何百もの稲妻が落ちる!!!



「つい先ほどまで殺し合ったワシを指名するとか……… 本当にお前は楽しい奴だのう」


「殺し合ったからこそ、お互いの力を信じあえるというものだろう?」


「我が主、ディケム様の最強の盾と矛、そのお前に繋がるのがこのバアル………。 それは楽しそうだのう!  良いだろう! ワシの力使いこなして見せよ!!!」



 ラトゥールがバアルを指名したことを、ウンディーネは面白そうに眺めている。

 そして―――


「ほぉ…… 迷いもせずバアルを指名するか。  まぁ良い、合格じゃラトゥール。  そしてその覚悟と我らの主への忠誠を認めてやる。 その証に今後妾もお前に力を貸してやろう。 バアルと妾二柱を使いこなして見せよ!」







 ラトゥールの意識が、マナの大河から徐々に現実世界へ戻ってくる………

 ラトゥールは今、自分の体を空から見ている。



 そこには―――

 シュガールの牙に貫かれたラトゥールを見て、ムートンとマルゴーは力なくその場に膝から崩れ落ちている。



「そ……… そんな。 ラトゥール姉さま?!」

「ラトゥール―――!!!」



 ムートン………

 マルゴー………



 いつも減らず口を叩くマルゴーがこれ程うろたえるとは―――

 『私は案外、みなに愛されているのだな………』



 この状況を、もう少し見ていたい気もしたが、戦意を失ったこの二人が危ない。

 魔神族五将の二人が居て、強敵シュガールを前に戦いを忘れるなど不甲斐ない。



 だが、我を忘れて暴れていたシュガールも………

 ラトゥールの中の元主人、バアルのマナを感じ取ったのか、動かなくなっている。


 だがとにかく、早くこのシュガールをどうにかしなくては。


 マナとなり漂っていたラトゥールは、自らの体に繋がるマナの線を辿り、自分に戻る。






 マルゴーとムートンは愕然と致命傷を負っているラトゥールの体を凝視する………


 その時――― ラトゥールの体に変化が起きる!

 シュガールの牙に貫かれたラトゥールの体が青白く光り『バチッ』と稲妻を発する!



「ラ、ラトゥール姉様!!!」



 バチッ! バチッバチッ――!!!

 バリッ―! バリバリバリバリバリ――――――!!!



 ラトゥールの体から発する稲妻がどんどん大きくなる!


 そしてその稲妻は次第に膨大になっていく―――

 雷属性のシュガールが、その膨大な電圧に耐えきれずラトゥールを離す。


 マルゴーとムートンは只々目を見開き、呆然と立ち尽くす事しかできない。


 二人とも何が起きているか理解できない………

 だが、もしかしたら今起きているこの現象が―――

 致命傷を負ってしまったラトゥールに奇跡を起こしてくれるのではないか?

 二人はそんな淡い期待を心にいだき、ラトゥールを凝視している。



 その時―――!


 ドオッォォォォォ――――――ン!!!!


 ラトゥールの体に巨大な落雷が落ちる!



「ラトゥール姉様――――――!!!!」


 ムートンが叫ぶ!

 マルゴー、ムートン二人の淡い期待が消し飛ぶ!


 それはまともに食らえば、マルゴー、ムートン二人でも消し炭になる程の落雷!

 それをまともに食らったラトゥールの体は消滅する―――


 ―――ッだが!

 消滅すると思われた ラトゥールが、その強大な落雷の柱、青白く輝く稲妻の中で目を開く!


 そしてゆっくり立ち上がる―――

 立ち上がったラトゥールの体には、もうシュガールに刺し穿たれた傷は無い。



「あっ…… あぁぁぁぁ……… ラトゥール姉さま!!!!」



 カタトゥンボの山脈に数百の落雷が落ちる。

 その落雷が合図の様に…… ラトゥールが完全に覚醒する―――!!!



 圧倒的な破壊の力!

 その破壊の力を行使可能とする、膨大なマナの供給力!


 ディケムと繋がり、バアルとウンディーネの二柱と繋がったラトゥールは―――

 この二つの力を獲得し、まさに破壊の化身そのもの!!!





 ラトゥールの覚醒により―――

 理性を失い暴れまわっていたシュガールが、その圧倒的マナを感じ取り本能で逃げ出す。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ